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境界の娘 ~人ならざるものと生きていくのも楽じゃないけど、それなりに楽しくやっています~  作者: 狐のボタン


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トンカン…と何かを叩く音で目が覚めた。


昨夜は子狐丸と向き合う一歩を踏み出せたんじゃないかなって思える大切な話をして、そのままとりとめのない話をしてたらいつの間にか眠ってたみたい。

隣の布団に目をやるともう子狐丸の姿はなく、もぬけの殻。


私も布団からでて、シンクで顔を洗い、しっかりと目を覚ます。

こっちには水回りがここにしかないのも不便だな。でもあるだけ良い。

布団を片付けて、普段着に着替えて朝食の仕度。

今朝も多機能家電に活躍してもらいましょう。


焼き鮭や温泉卵。お味噌汁もオーブンレンジの機能を使って具を追加した。

水抜きした豆腐とかお味噌汁に入れても大丈夫よね。干しわかめや昆布、しいたけ等の戻しも出来るから出汁が簡単に作れるのはありがたい限り。


それにしても、ずっとトンカンと音がしてるのは何だろう?

子狐丸もいないのに、外に顔を出すのが怖くて、確認もできない。

だってこっちの常識さえ知らない私は何をやらかすかわかったものじゃないし。

理不尽な両親のおかげか、こういった警戒心がまず働くのは今回に限って言えば正解だと思う。


朝ごはんできたのに…本当に子狐丸はどこに行ったのだろう。

食事用のちゃぶ台を用意しながら考えてても行き先に検討がつくはずもなく…。


お茶用にお湯を沸かしてたらようやく帰ってきた。

「朝からどこに行ってたの? 起きたらいないし…」 

って、私は何を面倒くさい女みたいな事を言ってるの!?起きたら隣にいなかったから拗ねてるみたいになってるじゃない! 私ってこんなだった?


「庭にいたよ。出てこないからまだ寝てるのかと思って…。そろそろ起こそうかと思ったんだ」

「そうだったんだ。こっちの事情とか知らないから、勝手に外へ出ていいのかもわからなくて。なんかずっと変な音してるし…」

「一人で遠くに行ったりしなければ大丈夫。ましてや家の周りなら問題なんてないよ。 音に関してはさっそく工事に来てくれてるから、それだよ」

「工事って言うと…あ、トイレ?」

「そうそう。こっちの家とも廊下で繋いでもらうから、外に出る手間もなくなるよ」

それは本当に有り難い。街灯もないこちらは夜の明かりなんて月明かりくらいだし。



子狐丸と朝食を食べてから、一緒に外へ出てみた。

そこには筋骨隆々で、子狐丸よりずっと背の高いおじさんが作業の真っ最中。

「奈子の旦那で巨人の源さんだよ」

「そ、そうなんだ…」

夫婦のサイズ差…。年の差婚とかそんなレベルじゃない!


挨拶したら小さく“おう”って一言。寡黙な職人?

でも子狐丸とは普通に会話してるんだよね…。私嫌われるようなことした?初対面なんだけどな。


「瑠璃、お風呂とトイレは何処に繋ぎたい?」

「え? そうね…」

元々外にあるお風呂は、位置的に小上がりの右隣くらいになるから…。

「扉もつけてもらえるのなら、ここっていう場所はあるけど…」

「大丈夫だよ。そこに案内して」

通路をつないでほしい場所に子狐丸を案内。小上がりに上がり、右側の壁のちょうどタンスのある隣。

「この辺なら便利かなって思うんだけど…」

「いいね、わかったよ」

子狐丸は私に少し離れているように言うと、指定した壁に向かって刀を何度か振った。

キキキンッと小気味いい音がしたと思ったら、壁が横1メートル縦2メートルくらいの長方形に切れて倒れていき、外が丸見えに。

覗くと少し離れた所にお風呂の建物があるからぴったりだったみたいね。

それにしても…めちゃくちゃするわね、この子。いくら木造とはいえあんなに切れるもの?


 

家の中も工事するから、外に出てしばらく作業を見ていたのだけど、凄まじい速さで家とお風呂とを繋ぐ廊下が作られた。

廊下の途中にもう一つ扉が設けられ、その先はトイレになるそう。

「瑠璃、源さんの倉庫にあったトイレから良さそうなのを選んできたから、普通に使えると思うよ」

「本当に助かる!」

ただの穴とか、落下式みたいなのは流石にね…。


どうやらこのお風呂やトイレって、ホームセンターのリフォームコーナーに境界が開いたときに持ち出したものみたいで、まだいくつかあるのだそう。

「今回の工事の報酬は、現世から持ち込まれたものの使い方を教えるってことで話がついてるから、瑠璃も頑張ってね」

「う、うん!」

私が始めたいって言ったんだし、大丈夫。相手は大きくてちょっと怖いけど…。

「あ、説明する相手は奈子だから」

「そうなの?」

じゃあ安心…。とはいえ、やっぱり私は源さんに嫌われてるのかしら…。

「瑠璃が何を考えてるか当てようか?」

「え?」

「源さんに嫌われてないか心配してるでしょ?」

「うっ…なんでわかるの!?」

「長い付き合いだからね。 源さんは単純に女の人が苦手というか、上手く話せないだけだよ。例外が奈子」

「ああ…」

ってそれはそれで幼女専門みたいでやばくないか!?

「奈子はああいう性格だから、源さんの都合なんて関係なくグイグイ行ったものだから、源さんも慣れちゃったんだよ」

よかった…。そういう理由なら納得。確かに奈子さんって明るくて社交性が高い感じだったものね。


「おーい、迎えに来たでー」

噂をすれば、だね。元気な声が聞こえる。










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