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境界の娘 ~人ならざるものと生きていくのも楽じゃないけど、それなりに楽しくやっています~  作者: 狐のボタン


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便利なオーブンレンジを色々と見てみた結果、お菓子類は勿論、天ぷらとか唐揚げみたいな揚げ物まで専用の温め機能を使えば出来てしまう。

ただ、こちらは完成前に開けてしまうと消えてなくなってしまい、リセットされる。炊飯器との違いはそこ。

さらに! 下ごしらえ段階の物も作れるってわかったのは発見だった。

例えば水抜きした豆腐。他にも硬い野菜類を柔らかくしたり…。ゆで卵や温泉卵までできるのには脱帽もの。もちろん素材要らず…。

あとは普通に完成したものを温めるとかも出来るから、普段の使い方も可能、と。

料理に関してはなんとかなりそうな気がしてきた!


「ただいま、瑠璃。ちょっと肉を奈子に届けてくるね。そのままトイレも依頼してくるから」

「あ、うん…ありがと…」

また出かけちゃった…。

これが寂しく家で待つ新妻の気持ち? なんて…浮かれてる場合じゃないのに。

でも子狐丸と向き合うと決めたのならこれで合ってる?あれ?なんかもうわかんなくなってきた…。


ううん…。やっぱり、ちゃんと九城のことを知った上でじゃなきゃ、子狐丸に向き合えないよね…。

自分が何者なのかもわからずに、誰かを好きになって幸せにできるとは思えないもの。

今まで傷つけてきたのだから、もう中途半端になんてしたくない。

文字通り身を切る思いで決めたことなんだから、やり遂げなきゃ。


となると…先ずはこちらでの生活に慣れる事、それから九城の力についてしっかりと学ぶ。

その上で、自分のすべき事とやらなければならない事を明確にして…。

最後に、私自身がどうしたいか…だね。


ワガママを言うなら今までのように学校に行きながらバイトして、子狐丸やオーナー達と普通の生活を送りながら、少しの超常現象くらいなら日々のスパイスとして割り切る。そんな生活をしていたい。

でもそんなのを許してくれないのが両親の存在。

話して通じるとか以前に、私の言葉に耳を傾けてくれるなんて到底思えない。

優しい兄様だけが希望だけど…今は遠い土地にいるし。

九城の方に至っては面識のある人なんて居ないのにどうすればいいの?


「瑠璃、戻ったよ」

「おかえり」

「難しい顔して、なにか悩んでる?」

「うん…。勢いでここまで来たけど、私に何ができるんだろう?と思って…」

「それを見つけるためにここへ来たんじゃないの?」

「そうなんだけどね…。私自身が九城についてほとんど何も知らないから」

情報を整理するための情報がない状態なんだもの。

「結構話したと思うけどね。 ここで生活しながらゆっくり学んでいけばいいよ」

「わかったよ」

子狐丸がいてくれるなら大丈夫って思えるから。


ここで生活しながら学ぶかぁ…。疑問はたくさんあるけど、一番はコレだよね。

「じゃあまず一つ。この家に関して聞きたかったんだけど、いい?」

「うん?何か不便なところでもあった?」

「ううん。むしろ便利すぎるくらい。 ただ、なんであちらの家電とかが沢山あるのかな?と…最新のから結構古いのまであるし、使い方がわからないって言うわりに的確な場所にちゃんと置いてあったりもするから」

「ああ。現世の物が色々ある理由に関しては、百鬼夜行の時に捨てられてあるものを拾ってくるやつがいるってのが一つ」

なんでわざわざ捨てられてるものを…。こっちの世界からしたら目新しいとか?

戦国時代な世界観からしたら当然か。


「もう一つは稀に境界が突然開いて、現世の世界のものが入り込んでくる時があるんだ」

「ちょっと言ってる意味がわかんない…」

「例えば…現世の瑠璃の部屋、あの座標を“甲”として、こちらでは時代が違っても世界をコピーした妖魔界にも同じ“甲”に相当する場所があるのはわかるよね?」

「うん。そこに境界が開くの?勝手に?」

「そう。理由はわからないのだけど、短時間だったりニ、三日開いたままの時もあった。その境界が開いているときって、さっきの例え話で言うなら、瑠璃の部屋がそのままこっちにコピーされた状態になるんだよ」

「部屋に私がいたら?」

「あくまでもコピーだから普通の人はこちらに入れないけど、もしそこに瑠璃がいたら来てしまうかもしれないね」

だよね…。実際、こうやってこちらに来ているわけだし。


「で、そうやってコピーされた場所から色々と持ち出すんだよ。どれくらい開いているかもわからない不安定な場所に入って色々と持ち出す物好きな奴らがいるんだ」

「現世側で取られたものが無くなったりしないの?」

「しないよ、あくまでもコピーされたものだからね。ただ、開いていた境界が閉じた時、その場にいた者がどうなるかは誰にもわからない…。巻き込まれて帰ってきたやつは今のところいないから」

怖っ。よくそんな場所に入り込むなぁ。危ない心霊スポットに面白半分で入っていくようなものね…。

世界が違っても同じような事をする人はいるって訳だね。


「そんな感じで持ち出された物の中に雑誌や漫画もあってね。文字は読めなくても、写真や絵でどこに置いて使うものかは予想できるものもあるってわけ」

「なるほどね。だったらもっと使いこなせててもいいと思うんだけど…」

「一応、ハッキリしてるものはあるよ。この明かりとかね」

子狐丸が指差すのは天井からぶら下がる照明器具。確かに紐を引くだけだもんな。


「本みたいなものは欲しがる人が少ないから、物々交換であまり価値がなくて…」

「持ち出してもこないし、あっても見ない人が多いのね。 じゃあ価値があるのは明かりや大型家電?」

「うん。見た目にもインパクトがあるからね。飾りとしてでも一定の需要がある。 奈子の旦那は家を建てたりとかしてるんだけど、その対価としてよく貰うらしいんだ。ただ、使い方のわからないものが増えるばかりで困ってるそうだよ」

押入れにザツに放り込まれてた家電の数々は使い方もわからず持て余してた物ってことね。


「子狐丸や雪乃さんが教えてあげたりしないの?」

「情報にも対価が必要になるから、家電一つの情報に対して家電一つを渡す、みたいな状態になるから、なかなかね。しかも現世で暮らせる僕らはこちらに基本は長居しないから、そんな時間がないっても大きな要因かな」

物々交換も一筋縄ではいかないのね…。


「こちらで私が家電の使い方を教える、みたいな仕事が出来そうとか思ったんだけど…無理かな」

「…いや、良いかもしれないよそれ。 いろいろな妖怪に接するというのは瑠璃にとって大切な経験になるし、対価を払ってでも使い方を知りたい人は沢山いると思うからね」

経験を積むにもたくさん接したほうがいいって言ってたものね…。怖い見た目の人がいないといいけど…。そこだけは本当、切実にお願いしたいところ。









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