018
雪乃さんと子狐丸に連れられ、カフェを出発。
向かうのは前回子狐丸と行った、狸さんのいた山。
その狸さん、今は本当に普通のたぬき姿で雪乃さんに首根っこを掴まれ、走る腕の振りに合わせて振り回されてる。
「あの…もう少し可哀相じゃない持ち方できませんか?」
「ん? ああ…オレは獣が苦手でな」
私が抱えて行くと言ったのだけど、それをすると歩みが遅くなるからって断られた。
せめて自分で走れればマシだったろうに…今は幼女スタイルになれないらしい。
「結局、何が起きてるんです?」
「説明してなかったな。 前回、空亡騒動で散り散りになった妖怪共が、ほとぼりが冷めてから境界でもあるコイツの根城に集まってきたんだが、そのまま境界の向こうへ帰らず、コイツを祀っている本体を盾に土地を乗っ取りやがったらしい」
「立てこもり事件ですか?」
「似たようなもんだ。山にいる妖怪共は見つけ次第、渡したエモノで撃ってやれ」
「人質がいるのにいいんですか?」
狸さんの祀られてる本体って人質みたいなものでしょ?
「撃ったところでビクともしねぇよ。それに半端な奴らじゃコイツの本体にどうこうするなんてのも不可能だ。 問題なのは定位置から動かされたせいでコイツが力を失ったってだけだ」
つまり、流れ弾があたっても平気だし、狸さんの本体はめちゃくちゃ強いと。
なら心配いらないね。
「狸さんの本体って何なんです?」
「それは見てのお楽しみってやつだ。こんな事でもなければ拝めないからな」
絶対に公開されない御神体みたいだ…。それはかなり見てみたい!
「瑠璃、あまり期待するとガッカリするよ」
「えー。やる気無くなること言わないでよ、子狐丸」
微妙にテンションは下がったけど、それでも雪乃さんについて行き、山を登る。
山道の途中から、ちっこい鬼をやたらと見かけて、嬉々とした雪乃さんがタタタタッと連射した特殊な弾に撃たれて消えていく。
「瑠璃もやってみろ! ほらそっちだ!」
雪乃さんに言われた方に向けてパシュっと…。弾のあたった鬼はきれいさっぱりと消えていく。
別にキラキラとかの演出もしないし、本当に当たると同時にパッ消えていくのはもうゲームみたい。
私の持っているショットガンは30発くらい撃てるそうで、弾切れになると追加するのがちょっとめんどくさい。
だから無駄撃ちしないようにしないと…。
数えて丁度20発撃った所で境界になる朽ちた鳥居に到着。
今のうちに使った分を補充するよう言われて、プラのボトルケースに入った弾をザラザラっと自分のショットガンに流し込む。
撃つときに弾が出るほうじゃない下の筒の中に詰まってるとか言ってたっけ。
この弾、自然由来の物で作られているらしく、それを特殊な水に塩を混ぜた液体に浸して作られているそう。山とかに落としてもきちんと分解されるとか、エコですねぇ…。
「瑠璃、行けるか?」
「はい、いつでも!」
「よしっ、狐は瑠璃から離れるなよ」
「言われなくても」
大きくなった子狐丸は刀を構えて傍にいてくれる。なんて頼もしい…。
鳥居からはゆっくりと固まって進み、チラホラと出てくる鬼は雪乃さんに撃たれるか、子狐丸に斬り伏せられていく。私の出番がないんですが? って、私は普通のJKなんだから別にそれでいいんだった。
「ったく…雑魚が群れて調子くれてんじゃねぇぞ! 出てきやがれ!」
崩れた建物に向かって叫ぶ雪乃さん。
ズーンズーン…っと地響きと共に奥の森から現れたのは2メートルはゆうに超えてそうな青い鬼。
サイズにはびっくりするけど、虎柄のパンツスタイルのせいであまり恐怖心も感じない。
「なんでスキニーパンツなのよ! そこは半ズボンでしょうが! もしくは腰布!」
初めて見たわ虎柄のスキニーパンツとか。しかもそんなの履くなら上もなにか着なさいよ。バランス悪い!
「おれ達の最新ファッションなのに…」
「うるせぇ! だっせぇっつてんだろうが!!」
雪乃さんは撃ち尽くすんじゃってくらいに連射。あっさりスキニーパンツ鬼は消えていった。
弱っ…。なんだったのよ…
「狐、周囲の雑魚を片付けてこい」
「命令するな」
「いいから行け。瑠璃はオレが見てる」
「…はぁ」
子狐丸はわざとらしくため息をつくと、すごい速さで駆けていった。
「さてと…」
雪乃さんはさっき大きな鬼が立っていた辺りにしゃがみ込むと、拾い上げたのはクマさんプリントのパンツ…?よく見たらクマじゃなくて狸かあれ!
「ほれ、これだろ?」
雪乃さんはソレを狸さんに差し出すと、ひったくるように咥えて走り去った。
「あの…もしかして本体って」
「たぬきパンツだな」
もう、本当に何を言ってるのか全然わかんない。御神体がパンツって…。
「昔からあのカタチなんですか? 鳥居とかの朽ち具合からかなり古いですよね?ここ。 でもあのパンツって割と最近の…」
「黙れ乳女! 時代に合わせてカタチも“あっぷぐれーど”しとるだけじゃ!」
だったらパンツじゃないものにアップグレードしなさいよって言いたいけど、この幼女狸さんにはプリントパンツがぴったりに思えて。でもそれを言ったら怒らせそう…。
「おい、瑠璃にも助けてもらっといてなんだぁ?その態度は!」
「ひっ…。じゃって、巨乳は敵じゃもん…」
「それはなにか?オレは巨乳じゃねぇと言ってるんだな? ああ!? よし、死ね!」
「いやじゃーーー!!」
雪乃さんは銃を狸幼女に向けると連射。泣きながら逃げ回る幼女とか見てられない…。
「瑠璃、あれは何をしてるの?」
「おかえり子狐丸。えっとね、男の子にはわからない節実な問題かな」
「ふーん…。 山の安全は確保したから帰ろうか」
「そうだね」
あの揉め事に私が口を挟んだら絶対にとばっちりを受ける。それだけは間違いない…。
私まで雪乃さんに撃たれるのはゴメンだ。何故私まで撃たれるのかって?そこは察して。
笑いながら幼女狸を撃ち続ける雪乃さんを残し、私と子狐丸はカフェに戻る。
しかも今回は子狐丸にお姫様抱っこされて空から………。
無理、許して…。美形の顔が近い。
「瑠璃のために頑張ったからこれくらい良いでしょ?」
「…はい…」
“はい”じゃないよ私! ここはビシッと言わないと…。
そう思ったのに…。
うん、無理。目が合うとニコって笑いかけてくるんだもの。
胸の奥がきゅーーってなるの! なにこれ…。




