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境界の娘 ~人ならざるものと生きていくのも楽じゃないけど、それなりに楽しくやっています~  作者: 狐のボタン


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山に行って汗だくだったからシャワーを借りて、制服も新しいのに着替えてカフェのバイトに戻る。

接客するのに汗臭いままとか乙女としても接客をするバイトとしてもあり得ない。


落ち着いたオーナーはいつも通りカフェで接客を始めてて、ホッとする。

やっぱりこの光景がないとね。オーナーがいてこそのカフェなんだから。


ただ、日が暮れたというのに中々雪女さんが帰ってこない。

そのくせ”あっち系“の依頼者は絶えず、オーナーは対応に追われている。


私は洗い物とかの片付けくらいしかできなくて申し訳ない気持ちでいっぱいに…。

オーナーの手が空いている時に教わってはいるけど、お客に出せるようなものは私ではまだ淹れられない。


「子狐丸、本当に帰ってくるんだよね?」

「アイツはバカだけど嘘をつくようなやつじゃない」

「友達なの?」

「…瑠璃がこっちへ来ると決まった時に挨拶した。一応、ここらのまとめ役の一人だからね」

「へぇー。他にもいるんだ?」

「うん、ここの雪女もそうだし、あと二人いる」

縄張りみたいなものかな。猫が地域のボス猫に挨拶しに行ったみたいだと思えば納得。



洗い物や掃除をしながらも、聞こえてくるオーナーの受けている依頼は殆どが今日の妖怪散り散り逃走事件の後遺症みたいなもので…。

既に妖怪そのものは子狐丸や、他にも地域を守るモノがいて、それらが倒して境界の向こうへ返してるそうなんだけど、実際に被害に合った人はたまったものじゃない。

私自身も被害を受けたからわかるけど、加害者の記憶は無くなるのに、出来事の結果として残ったもの…、つまり被害者の記憶はしっかりしてるから。

とはいえ今更どうにもできないから、オーナーも説明して帰ってもらうしかなくてお疲れの様子。

せめて雪女さんが帰ってきてくれたら元気になるのかな…。


カランっと扉の開く音。

今は特殊なお客さんがいるのにどうして…。入ってきたのは真っ白な長い髪のお姉さん。

水色の瞳で目つきは鋭く、服装は何処かのパンクロッカーか?っていう出で立ち。

黒いショートパンツにブーツ、ドクロのプリントが入ったタンクトップも黒。髪の白との対比がすっごい。


なんて例えたらいいか…。 あ! ヤンキーがカチコミかけてきたと言われたほうが納得するレベルかも。

とびきり美人なのがまた怖さを助長してて、見た目の威圧感もプラスされ物凄く怖い…。


でも、私はバイト。お給料ももらってるんだから仕事はしないと。

そう気合を入れて接客に向かう。

「お客様はお一人ですか?」

「あんだよ、その(よそもん)みてぇな扱いは。オレはここの(アタマ)だぞ? テメェはオレの手下(コマ)だろうが。ナマくれてっとしばくぞボケ」

何なのこの怖い人は…。言ってることが全くわかんない。何語?


「ユッキー、帰ったか!」

「その呼び方すんなっつてんだろうが…ったく。…ただいま。心配かけたか?」 

「当たり前だ! 嫁の心配をしない旦那がいるわけ無いだろ!」

オーナーがヤンキーに抱きついてる。ナンダコレ。


「瑠璃、その人が雪女の雪乃」

「………」

はぁ!? 

大声で叫ばなかったのを褒めてほしいくらい。

いやいやいや…。 雪女って、こう…真っ白な着物を着た冷たい雰囲気の…。

って私の勝手なイメージを押し付けたらだめか。それだって絵本とかで見ただけの知識だし。


「お、おかえりなさい」

「おう。瑠璃はわざわざ探しに来てくれたんだってな? 手間かけた」

「私は何も…子狐丸のおかげで…」

「なんだ、和解(よりもど)したのか? ああ…、それでオレの姿もしっかり認識したわけか」

ええまあ…。前のフワモコ毛玉状態のが怖くなかったですが…、とは言えない…。


「いつまでも抱きついてると殴るぞ。オレは疲れてんだ…。ったくよぉ…あちこち逃げ回りやがって。街に残ってた奴らも見かけたのは返しといたからな」

「助かるよ。 食事にするかい?それともお風呂? もしくは俺でも…」

言いかけたオーナーを抱きしめ返した雪乃さんはそのままオーナーにキス。

私が見てる目の前で!! すごっ…美人なのに男前な行動にびっくりして目が離せなかった。


子供(ガキ)には刺激が強かったか?」

そう言いながらニヤッと笑われて、慌てて目を逸らしたけど後の祭り。

「おいおい、生娘(バージン)みてぇな反応してんじゃねぇよ。男をとっかえひっかえしてんだろ?」

「してません!!」

「いや、してただろ。 三ヶ月かそこらで五人とか、人間は年中発情期(さかってる)ってのはマジなんだな」

軽い女みたいに言わないでほしい。ちゃんと守るべき一線は越えてないし!

ニヤニヤしてるから多分わかっててからかってるんだろうけど…。

だって、オーナーにいつも憑いてたあの真っ白い毛玉がこの人なら全て聞いてて知っているはず。


「子狐丸、私この人嫌い! 意地悪する!」

「諦めて瑠璃。雪乃はこういう雪女だから」

これからバイト先でいつもこの人に絡まれるのかと思ったら憂鬱になってきた。

宿題とかも出来る落ち着けるカフェだったのに…。バイト先だけど。



雪乃さんの帰宅後、お客が途切れたタイミングで店を締めたオーナーは色々と報告を聞いてた。

私はその間にお風呂を借りたり、使っていいと言われたから、山に行って汚れたカフェの制服も洗濯させてもらった。


リビングには雪乃さん…怖いから行きたくない。

「オーナー、夕食の仕度お手伝いします」

「約束のカレーがもうすぐできるから、雪乃と待っていてくれ」

「は、はい…」

カレーは嬉しい。でもあの人は怖い…。だから台所にきたのに。


「おい、瑠璃、ここに来て座れ」

「わかりました…」

リビングであぐらをかいて座ってる雪乃さんが手招きしてるから逆らえるはずもなく。


「んで? 和解したくせにこいつはなんでその姿なんだ?」

雪乃さんはちっちゃいままの子狐丸を指差す。

「私がお願いしたんです。その…ちょっと破壊力がすごくて耐えられそうにないので」

「…まあしっかり向き合うってんなら何も言わねぇよ。ただなぁ…瑠璃」

「はい…?」

「自分を大事にしろ。アホな男にコロッと絆されてんじゃねぇ」

返す言葉もない。歴代の彼氏のことを言ってるのはわかるし、確かに今思い出しても、私の外見だけに釣られてよってきた人達だったから。

曲がりなりにも三大美少女とか言われてるから、私と付き合ってるのをステータスみたいに考えてる人もいたのは間違いない。


「はぁ…。九城の名が泣くぞ?」

「えっ?」

九城って…私の母方の姓だよね。どういう意味…?


「カレーできたぞ! 瑠璃ちゃんにはお礼も兼ねてカツ付きだ!」

「わぁ! ありがとうございます!」

すごい豪華! 食事をしない子狐丸に申し訳なくなるくらい美味しそう!







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