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いつか巡り逢う君へ  作者: コノハ
始まりの世界
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初めての武器、けれど……


 最初、彼はその剣を見た時まるで気にも留めなかった。

 しかし……大金を、それも、まだ成年になりきっていないような少年がもっていて、それをカウンターに置かれた時、彼はようやく、自身の目の前にある剣に目を向けた。


 そして、衝撃が体中を走り抜ける。


 な、なんだ……これは!?


 彼の店は武器屋である。けれど……ここ十万年近く戦争どころか内乱すら経験したことのないこの国では、実質の鋭さや強度は使う機会がない。故に、彼の店に並べたてられている物は大半がなまくらだ。それを名刀の値段で売りつけるのだから、性質たちが悪い。いままでお咎めがなかったのは、国にも明確な判断基準がなかったからなのだが……それでも、彼の店はたびたび、詐欺まがいだということで注意を受けていた。……けれど。


 今回だまされるのは、どうも彼のようだった。


 彼は目の前に置かれた双剣を、見たことがあった。それは、自身の店でではない。


 かつて愛刀一つで旅に出ていたころあるところで目にした、二振りの剣。


 神のために作られたといわれる神殿の奥深くに眠る、神双剣。銘は忘れたが、とてつもない力を秘めていたはずである。


 それがなぜ、彼の目の前に彼の商品として在るのか?


 その謎は、彼には解くことができなかった。

 しかし……彼はその答えを耳にする。


 「………………これでどうだ?」

 「うわ、すごい!どうやったの?」


 『購入』した双剣をどこにしまおうかと考えていた少年に、お供の少女が、一言。

 

 「ふふふ、これがボクの道具としての力だ。すごいだろう?」

 「うん、すごいね!」

 

 彼は、戦慄していた。


 まさか。


 まさか、本当にあるなんて。


 全ての願いを自在に叶える人格を有する万能無限の秘宝、トレスクリスタル。

 そして、王宮が追う、第一級指名手配の名前でもあった。


 まさか、本当にそれが、この世界に、この国に、この店にいるなんて!


 彼は心底喜んでいた。これで、国から金がもらえる。ガレオン金貨三枚もふんだくれた上に、まだまだ金がもらえる。今日のわしは、ついている!


 そんな風に、あさましく。


 そして、少年少女の二人が店を出て、完全に見えなくなった後。


 「……もしもし」


 彼は、王宮に全てを話した。







 


 なにも知らずに、彼らは進む。








 「……ん、これおいしい。なんていうの、トレース?」

 

 そろそろ空が赤くなって、『夕方』になりかけている。僕たちは変わらずに商店街を歩いていた。……いや、食べ歩いていた。いい加減人はまばらになってきたけど、それでもまだにぎわっている。これが首都かあ……なんて事を考えながら、黒くて甘いお菓子をもう一度パリッと噛む。……うん、おいしい。

 

 「それはチョコレートだな」

 「チョコレート……?長い名前だね」

 「だから大概は『チョコ』と略される。ちなみに製法は単純で、カカオ豆から採れるカカオを」

 「いや、そういうめんどくさそうなのはいいよ」


 言いながら、もう一度チョコを噛む。うん、おいしい。

 

 「そうか。……では、次はあの店なんてどうだ?」

 「あ、おいしそうな食べ物がいっぱいある!お金足りるかな?」

 「店ごと買っても釣りがくるぞ。けれど、荷物が増えてもアレなので、あまり無計画に買いこまないようにな」

 「うん!」


 武器屋さんでコンシャンスを買ってからというものの、僕は食の魅力にすっかりとりつかれてしまった。辛いもの、苦いもの、甘いもの、すっぱいもの。味はいろいろあるけれど、僕は全部好きになった。ピリッと電撃が走ったみたいに舌がしびれるような辛い物も好きだし、ぐっと口全体に広がるような苦いものも好きだし、食べるだけで幸せになれるような甘いものも好きだし、神経全体で味わうような感覚になるすっぱいものも好き。


 「ボクはキミが偏食にならないか心配だったんだが……どうも、この様子を見る限りでは懸念だったようだ。よかったよかった」

 「?どうして偏食になるの?」

 

 目の前にあるものが何か分からなくても、偏食の意味はわかる。僕ってホントに変な人間。……って人間じゃないんだったっけ。


 「まあ、その。最初においしいものを食べすぎると、普通の食事が物足りなく感じてしまうことが往々にしてあるのだが……。キミの場合は大丈夫なようだ」

 「ふうん……そうなんだ」

 

 そんなことやりとりをしながら、僕は気に入ったお菓子とか、お料理とかを店から店を移動しながら買っていく。そんなことをしているおかげか、だいぶ買い物にも慣れた。


 「ふふふ、なんだか子供の成長を見ている母親の気分だ。本当に、キミを見ていると心安らぐ」

 「子供の笑顔をみると疲れが吹っ飛ぶ、ってやつ?」

 「キミはなんでそんなことを知っているんだ?……でも、まあ、それに近いかな?」

 

 近い、ってことは違うんだ。


 「……!!」

 「急に怖い顔して、どうしたの、トレース?」

 「……ルウ、いやご主人様、来てくれ」

 「なんで言いなおすのさ……」


 僕は買い物をやめ、トレースのそばによる。


 「……敵が来てる」

 



 ……え? 

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