ささやかなおとぎ話
昔、大陸の北にある鉱山地帯に隕石が飛来しました。
隕石には、「アポロニウム」という未知の物質が含まれており、近辺に暮らしていた者たちは、とある奇病に感染しました。
身体が炎に包まれ、理性が失われていく。という謎の病でした。
やがて、感染者は言葉を発することもなくなり、息絶えてしまいます。
すると、獣の頭蓋骨を模した頭部、肥大化した肉体、溢れ出る炎の力を宿した怪物へと生まれ変わりました。
そうして、姿の変わり果てた者たちは、アポロニウムから授かった恐ろしい力で、世界を破滅へと導いてしまいます。
彼らは伝承に倣い、奇跡や災いの象徴ともされている「魔法使い」と、呼ばれるようになりました。
(中略)
人間が、魔法使いに生身で敵うはずもなく、大陸からは、人間の住む村や街が次々と消えていきました。
人間たちには、覚悟が必要でした。
魔法使いと化してしまった者たちと、世界の命運を賭けて、戦う覚悟です。
生き残った者たちは、大いなる存在に贄を捧げ、力を求めました。
そして、降臨した大天使によって、それは為されました。
「勇者」と呼ばれる力を、人々は得たのです。
(中略)
世界は二つに分断されました。
魔法使いの跋扈する北の地と、生き残った人間たちの暮らす南の地に。
大陸の境界線では、今日も、勇者と魔法使いの戦いが繰り広げられているのです。