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【11話】評価の誤り ※リファルト視点

 

 和気あいあいと魔法の実技教育を行っている二人を観察中のリファルトは、驚いた表情をしていた。

 

 不甲斐ない教育をしたときには、容赦なく文句をつけてやろう――そう意気込んで、リファルトはここへとやって来た。

 そのはずだったのだが、観察を始めてからというもの、まだ一度たりとも文句をつけていない。

 

 エレインの教え方は実に分かりやすく、それでいて無駄がなかった。

 まさにパーフェクト。

 文句をつけにきたというのに、つけようがないくらいに完璧だったのだ。

 

 そんなエレインの教育を、フィオは心から楽しんでいた。

 

 その表情が、その動きが。

 大きな喜びで満ち溢れていた。

 

 普段のフィオは、割とおとなしめの性格をしている。

 ここまで弾けている姿は、初めて見たような気がした。

 

 エレインのことを深く信頼しているのだろう。

 そうでなければ、こうして遠慮することなく自分を出すことはできないはずだ。

 

「よくできたわね! とっても良い調子よ! それじゃあ次――と思ったけど、少し休憩にしましょう」

「私、まだまだ元気ですよ? 休憩しなくても大丈夫です」

「頑張り屋さんなのは素晴らしいわ。でも、休まなくちゃダメよ。表に出ていないだけで、体は意外と疲れているものなの。疲労状態で魔法を使っても、思ったような結果にはならないわ。体を休ませてあげるのも、魔法の上達には必要なことなのよ」

「分かりました!」

 

 どこまでも優しい眼差しでフィオを見ているエレインの言葉には、労いと心配がいっぱいに詰まっていた。

 フィオを大切に思っているという、揺らぐことのない確かな証拠だ。

 

「……どうやら俺は、エレインの評価を見誤っていたらしいな」


 ノルンと血が繋がっているというだけで、ろくでもない人間に違いないと初めから決めつけていた。

 フィオを傷つける悪魔だと、証拠もなしに断定していた。

 

 だがそれは、リファルトの大きな思い違いだった。

 

 フィオを傷つけるような真似を、彼女は絶対にしないだろう。

 眼前の光景を目にしたリファルトは、確信を持ってそうだと言えた。

 

(フィオの言っていた通りだな)


『エレイン様はエレイン様です。ノルン様ではありません』

 以前、フィオはそう言っていた。

 

 当時は同意できなかったが、今では、本当にその通りだと思っている。

 エレインという人間を少しだけ知れたことで、自分の間違いに気づいた。大きく考えが変わったのだ。

 

(……エレインに謝罪しなければ)


 よくも知らずにエレインを批判していたことが恥ずかしくなってきたと同時に、非常に申し訳なくなってきた。

 ともかく謝りたい、という気持ちで胸がいっぱいになった。

 

 ベンチから立ち上がったリファルトは、エレインのもとへ向かうおうとする。

 

 しかし、歩き出す直前で動きを止めた。

 

 休憩中のエレインとフィオは、仲良く歓談をしている。

 二人だけの時間を、これでもかというくらいに楽しんでいる最中(さいちゅう)だった。

 

 ここで出て行けば、その時間を壊してしまうような気がする。

 それはリファルトの本意ではない。

 

(ならば俺が取るべき行動は……)

 

 考えた挙句、リファルトはひっそりと邸内へ戻る。

 二人の邪魔をしないためには、これが最善の行動だった。

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