【10話】心境の変化
翌日。
眩しい太陽が輝いている昼下がり。
エレインとフィオは、デルドロア邸の庭園に来ていた。
これから、魔法の実技教育を行う予定となっている。
エレインはこの場所に、特別な思い入れがある。
大泣きしてしまった初日。
その日の夜に、この庭園で初めてフィオと触れ合ったこと――それが全ての始まりだった。
こうして今、楽しい気持ちでいられるのも、フィオに出会えたからだ。
(私とフィオを巡り合わせてくれて、どうもありがとうございます)
庭園に深い感謝を捧げたエレインは、フィオへ向けて笑いかける。
「さっそく始めましょう――え」
カツカツカツ――近づいてくるのは、昨夜も聞いた足音。
そう、リファルトがこちらへ向かってきたのだ。
口を真一文字に結び、険しい表情をしている。
つい先ほどまで笑っていたエレインから、一瞬にして笑みが消えた。
少し怯えた様子でリファルトを見やる。
「あの……どういったご用件でしょうか?」
「貴様がフィオの教育係に相応しいのか、それを直々に確認しにきた。勝手に見ているから、好きにやってくれ。俺のことは気にしなくてもいい」
リファルとはそれだけ言うと、少し離れたところにあるベンチに腰を下ろした。
スラッとした長い足を組んで、背もたれにふんぞり返っている。
どうやらその体勢で、エレインの教育ぶりを監視するつもりらしい。
(気にするな、って言われてもね……)
言われたところで、そんなの無理だった。
見られているとあらば、どうしても気になってしまう。
やりづらいといったらない。
正直言うと、リファルトには即刻ご退場願いたいところだ。
しかし、そうもいかないだろう。
見せられないような教育をしているのか! 、と言われてしまえばおしまいだ。
教育係を解任されてしまうかもしれない。
であればもう、全力でやり切るしかないだろう。
嫌でしょうがなかったが道は一つしかなく、逃げられない状況だ。腹をくくるしかなかった。
「……よし。始めましょうか」
いつもより重々しい雰囲気を纏うエレインの言葉に、フィオは元気に頷いた。
監視されているというイレギュラーな状況下で、エレインは魔法の実技教育を進めていく。
リファルトはというと、いっさい口を出してこない。
勝手に見ている、という言葉通り、ただじっと見ているだけだった。
初めの方こそやりづらさを感じていたエレインだったが、時間が進んでいくにつれて、段々とそうではなくなっていく。
リファルトの存在が希薄すぎるせいで、監視されているという意識が薄れていたのだ。
最後の方になると、頭から完全にリファルトの存在は消えていた。
フィオと朗らかなコミュニケーション取り合い、伸び伸びと教育を行っていた。
読んでいただきありがとうございます!
面白い、この先どうなるんだろう……、少しでもそう思った方は、↓にある☆☆☆☆☆から評価を入れてくれると嬉しいです!
ブックマーク登録もよろしくお願いします!