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魔法使いの相棒契約  作者: たるとたたん
三章 不滅を誓うあの日の僕ら
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✤ 第34話(後編):謎の灯火の正体は?





 



 しばらく歩いていると廊下に突き当たる。つまり、もう校舎のすべてを巡ってしまったということだ。

 心の中には少しの達成感があるものの、どこか物足りなさも感じてしまう。目的の灯火が見つかってないんだから、そう感じるのも当たり前かもしれないけど。


 

「あーあ、結局居なかったね」

「居なくていいよ。て言うか居ないなら早く出よう。もうすぐ小学棟にいるのは校則違反だから」

「違反の常習犯に言われたく、なっ…………」

「? 急に黙って、どうし」



 私が言葉を失うと、彼女の視線も何かを捉えてピタリと止まる。目の前にある屋上へ続くドア。そのドアの窓に映る光が、私たち視界に飛び込んで来たんだから。

 一度動きが止まってガチャっと何かの音が鳴ると、それはまた動き始めた。ゆらゆらと揺れる淡黄色の柔らかな光。まるで私たちを誘うかのように、空に浮かぶ灯火。その灯火はば扉の前で止まって、ゆっくりと回転してからグッとこちらに寄って来た。



「ひっ、ゆ、ゆれ、ゆゆゆ」

「落ち着いて、あれはきっと精霊だから幽霊じゃないって多分! ほら、目眩しを解いて手を振ったら振り返すかもしれないよ!」

「どっちでも変わんないし、何で魔法解いたのバカ!」

「幼稚な罵倒はお辞め下さい、魔法を解いたのはお嬢様でございます~!」

(うち)に執事とか居ないんだけど、こんな時に何のロールプレイしてんの!」



 私たちがワーキャー騒いでいるうちにも、灯火はこちらへ迫ってくる。それはゆらりと空気に歪むと、少しずつ音を響かせた。



『――ア……テル……』

「てるって言うのはTEL、電話(イコール)スマホ、つまりこれはスマホに何かやりますよという意思表示……この後私のスマホに凄く恐ろしい画面が映った後に突然バキバキに壊れて」

「待って待って、考え過ぎて意味わかんない事言ってるから」



 私は彼女の手をしっかりと握ると、その瞬間花柳は「ハッ」と驚いたような声を上げた。何だ、正気に戻ったのか……と思ったけれど、その考えが浮かぶと同時に私の体は階段に移動していた。

 周囲の景色が爆速で流れ去り、花柳が腕を強く引っ張る感覚ばかりが腕から全身へと広がっていく。バタバタと鳴る足音は、静かな廊下で嫌に響いていた。



「……君、珍しく走るの速いね。いつもお化けに追いかけられてると思えたら、意外と速く走れるんじゃない?」

「うるさいな。て言うか、暇なら後ろ見てっ、アレが居るかどうか確認して。私はっ、見たくないから!」

「了解しましたお嬢様~」



 彼女はゼーハーと息を切らしながら私に訴える。その言葉へ素直に従って、後ろにチラッと振り返った。

 ……よし、そのまま見た情報を伝えよう。



「居るね、めちゃ揺れてる。っていうか凄い動いてるし、だんだん近づいてきた」

「なんで!?」

「知らんよ、むしろ何で逃げるの!」

「だってお化けじゃん!」



 息の切れた音が静かな廊下に響く。それは私の音ではなくて、目の前の相棒から漏れ出る音だ。本気でこの人は体力がない。むしろ、こんなに速く走れているのが驚きだ。しかも、手を繋いだままで下り階段を。風魔法で足早くしちゃえばいいのに、焦って魔法使う頭になってないのかな。


 そんな考えが頭の中を巡っているうちに、私たちは小学棟の1階にたどり着いた。でも、花柳(はなやぎ)はもう限界みたい。階段を下りきった瞬間に彼女は繋いだ手を離して、床へ静かに(ひざまず)く。 もう息を整えるのに精一杯だ。

 しかし、花柳の努力はあっという間に砕け散る。ゆらゆらと揺れる灯火は、もう階段を下り始めているのだ。



『――ニシ……ル……』

「に、西るってなに春風。もうダメだ、私たち多分祟られる」

「君が知らないことを私が知ってる訳ないじゃん! って言うか私を囮にしてるよね、グイグイ背中押されてる気がするんですけど!?」

「光魔法の幽霊なら春風は襲われないでしょっ! 私は闇魔法師だからきっと会話通じないの!」

「何その理論!」



 花柳は私の背中を思い切り押しながら、普段じゃ考えられない声量で叫んで来る。私もそれに言い返す様に叫んで応えた。目の前に見えてくる灯火や声は一切無視して。

 大体、この前光の魔力と喋ってそっちは姿も見えてたじゃん……なんて声に出す前に、灯火はもう目の前に迫っていた。私のお腹に腕をぎゅっと回しながら情けない声を出す花柳を、とりあえず背中に隠してじっとその光を睨んだ。

 幽霊だろうが精霊だろうが、意思疎通出来るなら光魔法の情報はちゃんと吐いてもらう! じゃないと、ここに連れてきた花柳に後ではっ倒されそうだから!!



「ちょ、ちょっと灯火さん! 話があるならちゃんと話しかけてきてくれないと、この人がビビっちゃうんだけどー!」


 


 その灯火が目前で止まった瞬間、思わず目をぎゅっと瞑る。

 ――だと言うに、聞こえたのは怒号でも叫びでも恐ろしい言葉でもなく、ただただ聞き覚えのある優しい声だった。



「やっと追いついた……2人とも、こんな時間にココで何してるんだ」

「もうすぐ門限だし、早く戻った方が良いよ?」



 その声に驚いて、私は思わず目をパッと見開く。2人は目の前で何かを察した様に顔を見合わせると、少し笑いながら話し始めた。



「それにしても、コレは珍しい組み合わせだな」

「俺も一緒に居るのは初めて見たなぁ。先輩が誰か居るって言わなかったら、多分気付かなかったですよ!」

「や、八雲(やくも)先生!?」

和泉(いずみ)先生……」



 私たちの目の前に立っているのは、この学園で魔法教科の教師をしている、私たちの先生。どうやら噂の正体は『光魔法の幽霊』でも『魔法の知恵を与える精霊』でも無く、灯火を持った魔法学園の先生だったらしい。


 だから、気付くのが遅れたんだ。


 闇の目眩しを解いてしまった私たちが目の前に居る。それはつまり、数少ない身内以外に〝相棒〟で居る私たちを見られてしまったって事。そして、よりによって相手が魔法の先生だと言う事実に。









 

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