✧ 第30.5話:当時の自分は (和泉翔太)
「う~~ん」
「どうしたんだ和泉。さっきから唸って」
先輩の買ってくれたコーヒーを、グイッと口に放り込む。じわじわと喉に広がる苦味が、俺の思考を現実へと引き戻してくれていた。
「春風さんの話を考えてたんですよ、ちょっと気になって。何処か引っかかると言うか……感覚的に見過ごせないものがあるんです」
「例えば、なにが?」
先輩はそう言いながら、ノートパソコンをパカッと開く。その内容は、魔法省からの連絡事項や捜査部員内の情報交換。一応スマホでも出来るものの、秘匿性も考えると誰にも見られないノートパソコンで確認する方が理にかなっているのだ。
俺は先輩に聞かれた事を頭の中で咀嚼して、今一番気になっている事を、言葉を丁寧にかき集めながら口を開く。
「さっきの話ですかね。春風さんの対話している相手が、本当に魔力ならそれで良いんです。でも……もし二代目聖君様の言われていた〝魂〟と同じなんだとしたら、それは何の魂なんでしょう」
その瞬間、先輩の手はピタリと止まった。
文献に書かれていた聖君様の内容では、当時その魂と共に民を導いたと書かれていた。でも、先生になって実感するけど人を導くのは難しい事だ。それこそ、経験した事以外の分野で行うなんて……。
「それは確かに悩みどころだ。ひと口に魂と言ってもルーツや説は色々ある。有り得るもので言うとすれば――意識の源・記憶を宿すもの・かつて生だったもの……色々ありすぎて難しいな」
「まぁ、これも仮説の話ですし、全部が杞憂かもしれませんけどね。真実が分かるのは、春風さんとその大事な相手だけですから」
俺がそう答えると、先輩も同意するように頷いた。
もしも自分が彼女と同じく生い立ちだったら、同じように色々考えて行動を移すことは出来るんだろうか。そう思って入学した10歳の時の自分の記憶を思い起こしても、アホみたいに遊んでいた記憶しか取り出せない。
あの子は、ただ遊んで学園生活を謳歌だけでは満たされないような、大きな悩みを抱えているのだろう。さっき聞かれた事なんて、きっとその一部に過ぎない。俺には分からないような経験ばかりして来たはずだ。
だからこそ、俺は自分に出来る範囲でで精一杯生徒を支えたい。魔法省から学園に来たのも、きっとこの為だったんだ……と、胸を張ってみんなに言えるように。
「ふぅ~。取り敢えず、俺らも捜査部の仕事を進めますか! この依頼も終わるまであと少しですから」
「あぁ、早く終わらせてさっさと寝よう。明日も文化祭は続くからな。明日は特別に、私の奢りで何か食べるか」
「えっ良いんですか!? 先輩太っ腹〜っ!」




