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魔法使いの相棒契約  作者: たるとたたん
二章 虹光を探す春咲き花
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✤ 第28話(前編):相棒ミッション!








「確かに魔法の授業も始まるし、放課後に魔法を使うのも禁止されていない。だからって、考え無しにポンポン使うもんじゃないんだ」

 

「はい……」

 

「特に1年生は魔力の定着が済んで居なくて、不安定なんだ。全員、自分が魔法を使う時はもちろん、誰かに使って欲しい時も気をつけて」

 

「ごめんなさい!」

 

「もう絶対しないです!」

 

「……まぁ、今回は特殊な事例だから一概には言えないけど、魔道具は既に魔法がかかってる物だから、基本的に魔法は追加でかけないように!」



 東郷(とうごう)先生は、放課後に職員室の前で私たちを怒っていた。授業初日一発目からお説教されるのなんて、きっと小学生でも私たちと宿題忘れた人くらいだろう。

 今ここに居るのは、昨日サッカーをしていたクラスメイト。たまにはクラスメイトと遊ぼうと思った途端ポカをやらかすって言う……どうして私は毎回何かしらやってしまうのか、自分の頭に直接聞きまくりたい気分だ。



「今後はもっと分かりやすい指導を心がけるよ。お互い、反省会だな」

「せんせぇ……!」

「それじゃあ、はい解散っ!」



 先生がそう言うと、クラスメイトはやっと解散されたと言わんばかりに歩き始めた。



「東郷先生って、超良い人だよね」

「分かる。でももう絶対怒られたくね~」

「先生、マジで怖かった!」

「空飛ぶよりもね」

「いやいや、それはちょっとオモロかったろ?」

「え~、もう一生ムリなんだけど~」



 私もそれに続いて歩こうと右足をスっと伸ばした瞬間「ちょっと待って、春風」と私だけ呼び止められてしまった。

 まさか、今から個人的に怒られるんじゃないか……と思って、私は肩を竦めながら恐る恐る先生を見る。でもその表情は、怒るの〝お〟の字すら無さそうだった。



「呼び止めてごめん。魔道具にかかってた魔力の件を調べた結果が出たんだ。その書類を渡そうと思って」



 そう言えば、昨日知らない先生に魔道具持って行かれたんだっけ。怒られた反動ですっかり忘れてた。



「あ〜! ありがとうございます、結果が出るのって早いんですね!」

「簡単な検査みたいなのは、学園でも出来るようになってる。だから直ぐに結果が出てくるんだよ。はい、これがその書類」



 手渡されたその紙に書かれているのは、堅苦しい言葉たち。その中にあるのは【魔力の性質が特異的】という文字だった。



「……トクイテキ?」

「特異的って言うのは、簡単に言うと『他とは違う』って事かな」

「なるほど!」

「調べた結果、とりあえず魔道具に残った魔力がこんな感じで。春風的にはもっと細かく知りたいと思うけど、光魔法の解明は中々進んでないから、原理とかが良く分からないみたいなんだ」



 特異的って言葉は初めて聞いたけど、要はこの電気ビリビリ静電気みたいな魔力が変だって意味だよね。

 花柳(はなやぎ)と治癒魔法を練習したから先に分かってたけど、それが無かったら私も知らないまま授業を受けてたかもしれない。そう考えると、やっぱり花柳との魔法の勉強はちゃんと自分の為になってるんだなぁ。

 まぁ、それ知ってた上で昨日やらかしたんだけど。



「アハハ……私の魔法って変だし、先生たちもよく分かんないですよね。なんかすみません」

 

「いや、謝るのはこっちの方だ。本来なら学園側がサポートするべきなのに、全然力になれていない。学校生活も窮屈(きゅうくつ)だったりしないか?」

 

「ぜ、ぜぇんぜん! キュウクツとか思ったコト、一度もナイでスッ」



 聖女様って言われるのが嫌です。どうにかして下さい!

 とか言えないよ~! ただでさえメンドーな魔法適性の私がクラスに居るとか胃荒れそうなのに、これ以上東郷(とうごう)先生に迷惑かけられませんって!



「今までの光魔法を使う人には見られない性質って事は確かみたいなんだけど……春風が良ければあのボールごと魔法研究所に回して、光魔法の研究として使用させて欲しいみたいなんだ。春風的には堂々?」

 

「ほ、ほんとに気にしないで下さい、私だって意味不だな~って思ってますもん! 魔力も、どうぞご自由に調べて下さい!」

 

「そう言って貰えるとすごく助かるよ。春風から何か取ったりはしないんだけど、親御さんにも今度ご確認して良いかな?」

 

「はい、もちろん!」



 ともあれ、私が知りたいと思ってる自分の謎は、先生にも原因までは分からないわけか。花柳と一緒に謎を解明出来るのは、一体何時になるのやら……。



「少しでも気になる事とか変な事があれば、先生に相談して。俺でもいいし、魔法の授業が始まればそっちの先生に聞くのも良いからね」

「分かりました!」



 日に日に増えてく自分の謎に頭を抱えながら、私は思わずため息をついた。







「魔法かけてボールが壊れると思わなかった!」

「確かに思わない」

「だよね!?」

「まぁ、いい加減機嫌直しなよ。私だって夏休み中に魔法使ったので呼び出されたんだから」

「え、呪使い相手に魔法使っても呼び出されるの……」

「魔道具には〝違反しました〟って事しか書かれないから。細かい内容は後で直接確認されるの」



 恐ろしすぎるシステムに、思わず体が震え上がった。


 今日は火曜日だけど、珍しく向こうから呼び出された私は、花柳と第1棟まで来ている。高く登る太陽に少し蒸し暑い教室の空気。授業と説教の疲れを癒す様に、私はぐったりと机に上半身を乗せていた。



「で、今日は昨日言ってた話で見せたい物があって」

「昨日の話?」

「〝魔力の声が聞こえる〟って話。図書館で見た事ない本を漁ったんだけど、今までの本にも昨日の本にも『魔力の声が聞こえる』なんて話題は無かった」

「そのことか! でも、やっぱり本にも無いんだね……」



 そう言うと、鞄の中から一冊の本を取り出す。そのタイトルは『水魔法大全』で、大全って意味は分からないけど、水魔法を使えない私たちにはあまり関係なさそうな本だった。



「水魔法の本も読んでるんだ、珍しいね?」

「いつも二大魔法(光・闇)ばかり読んでたから、他のも見てみたの。そしたら、本の中にこんなのが挟まってた」



 そこに書かれていたのは、誰かのメモみたいなものだった。でも、文字がじんわり滲んでいる所もあって、中には読めないところもある。



「え~っと、ナニナニ? 魔力が生きてるんじゃないかって思う時がある、魔法は自然からの借り物……ゲームに出てくる精霊師……魔法使いと似てる?」



 きっとこれは、この人の想像の話だ。でも、そんな可能性の話ですら、私にとっては希望に見える。まるで、光り輝く夢の宝・金銀財宝! 

 この考え方は、私の謎に近付く為の大事な一歩になる気がする!



「へぇ~、魔力が精霊みたいなものかぁ! 確かにゲームとかでも良くあるよね、私もお姉ちゃんたちと遊んだやつに出てきたよ!」

 

「私も見た事ある。もしかしたら本当に、春風に話しかけて来たのだって、精霊みたいな存在かも」

 

「本当にそうかもしれない。これ書いた人、めっちゃ天才だよ! あ、でも最後の方は文字がジワジワしてて、あんまし読めないね。この人の名前もよく分かんないし……」



 私が肩を落としながらそう呟くと、花柳が紙に指をさした。そこに書いてあるのは『9█生・スペードクラ████ 969期』と言う文字。名前以外は何となく読める様になっているけど、花柳が何を伝えたいのか分からなくて、思わず頭を傾けた。



「これってスペードクラスの9年生で、水魔法を使える人が書いた物でしょ。で、この右の数字が大事 」

 

「969期? ウチらが1001期生だから、えーっと……とにかくめっちゃ前の人たちって事だよね!」

 

「……この代は、親ぐらいの世代の人たちなの。そして969期生は、春風より前に生まれた光魔法師……つまり、先代聖女様と同級生の学年の人が書いてるって事」

 

「え!?」



 街中や学園内でも聞いた事のあるその人。護衛の闇魔法師に殺められたって言われてる先代聖女様は、会った事の無い私の中でも有名人的な存在だった。

 私と同じ魔法が使えて、私と同じ立場の……1番年齢が近かった人。もしも叶うなら、今話してみたいと思う人だ。



「じゃあ、クラスメイトに話したら素敵って言われた〜って書いてるのは……」

「その相手は、クラスメイトの聖女様だったかもね」



 もしその人が私の目の前に現れたとしたら、この魔力が話しかけてくるって話も、素敵だと言ってくれるのかな。

 実際に会う事も話す事も出来ないし、会った事は1回も無い。それでも、同じ立場を生きた人が肯定してくれるんじゃないかと思える事が、私にはスゴく嬉しくて。自分に対しての分からない事が増えたモヤモヤが、少しだけスッキリした様な……そんな気がした。



「話したかったのはこれだけ。通話でも良かったけど、実際に紙を見た方が分かりやすいかと思って」

「は、花柳ぃ~! わざわざ探してくれて本当にありがとう!」

「いつもの本探しのついでだから、別に……」



 その時ふと、頭の中に疑問が湧いた。

 気にしないようにしていたけれど、いつも何処かで感じていた違和感。



「もしかして、花柳は何か探してる本があるの?」



 魔法の勉強の為に毎日読み漁っているのかと思っていた私は、その言葉に引っ掛かりを覚えた。

 誰かに脅迫されたみたいに魔法を勉強する花柳の事が、時々良く分からない。きっと、魔法の事は好きなんだと思う。でも、たまにしている苦しそうな表情だって、きっと魔法のせいだ。魔法の事で頬を緩めたり、キツくしたりする。


 でも、その理由を花柳は教えない。

 きっと幼馴染にも、家族にも話していない。


 数ヶ月間彼女と関わりを持って来た私は、彼女の性格なら誰にも言わないんだろうと、そう確信していた。

 自分の事を誰かに話したがらない人だと思うから。



「それなら私にも一緒にやらせて欲しい! 1人で探すより2人で探す方が絶対早いもん」

「あぁ……」

「ダメ、かな?」



 でも、それでも……もしも探しているのなら、私も一緒に探したい。いつも助けられてる恩返しがしたい。君が何かに苦しんでいるのなら、少しでも助けになりたい。

 私は君の相棒だから、誰にも言えない事だって一緒に背負いたいんだよ。


 そう思って質問したけれど、彼女の表情は変わらずポーカーフェイスのまま。でも、伏せられたまつ毛から覗く瞳は、どこか暗い色をしている様な気がした。



「別に、ただ色んな魔法の本が読みたいってだけ。もう沢山読んでるから、同じような内容の本が結構多いの」

「そうなの?」

「……とにかく」



 明らかに話を変えようとする花柳に、私がツッコミをする事は無い。きっと踏み込まれたくない話だから誤魔化すんだ。教えてなんて、そんな事を言う勇気ない。

 すると、花柳は人差し指をビシッと立てて私の目の前に手を向けた。



「魔力と話せた・魔力がパチパチするって言うのは、同じ光魔法が使える私には無い性質でしょ。だから、まずは魔法の先生に聞いてみたらどうかと思うの」

 

「でも、先生にパチパチの原因は学園も分からないって言われたよ? ほら、書類もこんな感じだもん」


「……うーん、それはそうけど……でも、魔法教科を専門に担当する人だったら、何か知ってるかもしれないでしょ? 私が見せた誰かのメモみたいな物でも、今の私たちにとっては重大な情報になるんだから」


「確かに……流石、私の相棒は頭の回転が良い!」



 そんなこんなで、私には『魔力の声・パチパチの原因を探る為に、魔法教科担当の先生に相談する』と言うミッションが授けられた。


 

 寮に帰っても部屋で筋トレしながら唸り続ける私に、千鶴(ちづる)が心配して質問してくれた。でも、魔力がパチパチとか、魔道具に魔法をかけたら壊れるとか、そんな経験は無いみたいだった。

 

 しかし昔から魔道具マニアな千鶴は、魔道具に魔法をかけ続けてたら人生で初めて魔法が成功して、代わりに魔道具が壊れて親にこっぴどく怒られた事があったらしい。

 魔道具壊しが私だけでいない事実にホッとした私は、持つべきものは友達だ……と、心の中で千鶴に深く感謝した。




 




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