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魔法使いの相棒契約  作者: たるとたたん
二章 虹光を探す春咲き花
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✤ 第15話(前編):カミングアウト








 相棒契約と言うのは、魔法使いの中で「命をかけるほど大切な関係を築くこと」と言う重い意味のあるもの。色んな理由があってだけど、私は天敵と言われ続けていた相手である花柳(はなやぎ)咲来(さくら)とその契約を交わした。それから日にちは2週間ちょっと経っている。

 

 今の目的のメインは『お互いの魔力を理解する・私の魔力のコントロール・相棒契約の代償は何か』を探す事。他の目的は合間に探すって事で、私たちは人の寄り付かない特別教室の第1棟で集まっている。この時間は、私たちが天敵じゃなく〝相棒〟で居られる唯一の時間。




「――手な感じで、千鶴と友達になれたんだ。改めて色々とありがとね、花柳」

「そうなんですね……全部丸く収まったみたいで良かったです。春風(はるかぜ)さんなら仲直りできるって、私は思ってましたから」



 いつも通りのポーカーフェイスで彼女は淡々と言い放った。

 今日は金曜日。昨日は学校をサボって魔法駅に行ったり、私の話を聞いて貰ったり……色々とお世話になり過ぎてしまった。


 そのお礼として、お昼に出てきて取っておいたデザートのヨーグルトを渡してみたのだ。もちろん、甘党の彼女は直ぐに受け取って美味しそうに頬張っていた。

 そう、私は相棒に感謝してるんだ。感謝してるけども!



「ちょっと待って、君は私の話を忘れたの?! 魔法駅で君が連れてってくれた高台で話した事!」

「失礼ですね、私は記憶力がある方ですよ。大体の出来事は頭から無くなりません。ましてや昨日の事なんて」



 そう、私は昨日彼女に「相棒に対して敬語でさん付けなんて、めちゃめちゃ他人行儀」と言う話をして、実際私は彼女へさん付けをやめたのだ。なのに、それなのに!

 

 この相棒は全然私を呼び捨てにしてくれない。ドラマで見た相棒たちは名字で呼び合っててカッコよくて、密かに憧れていたと言うのに! しかも話を覚えてる上で敬語のままなんて、むしろそっちの方が失礼だと言うものだ。

 


「じゃあなんで敬語なのかなぁ~?」

「無意識ですね。貴女だけじゃなくて誰にでもこうやって話してますし、癖ですよ」

「そっか癖かぁ。へーほーふーんっ!!」

「うわっ……ちょっと、急に叫ばないで」



 ふふ、引っかかったなこのお嬢様め!

 どうやら彼女は、焦ったりするとタメ口になりやすいみたい。相棒になって数日間で何となく掴めてきた事のひとつだ。案の定、適当に大きい声を出してみたら花柳の口調が少し緩んだ。でも、こうやって無理やりタメ口にして欲しい訳じゃないんだよね。



「まぁいっか、いつかそうしてくれるなら」

「……すみません」

「謝んなくて良いよ。相棒が敬語で喋ってるのも大人っぽくてカッコイイからね! いつか敬語がなくなるまで、今のうちに沢山堪能しとく!」

 


 多分これは、彼女なりの「他人への壁作り」だ。私が勝手に聖女様の仮面が着いちゃう……的なのと一緒で、花柳は自然と壁を作ってる。だから無理やり辞めさせるのも彼女からしたら辛いんだろう。きっと、私が強制できることじゃないんだから。

 

 そんなことを考えながら、私は自動販売機で買った小さいパック牛乳を飲み進めていた。さっきとは違って静かな空気の中、ヨーグルトを食べ終えた花柳がゴミを片付けながら声を上げた。



「そういえば……私と相棒契約してるって、四葉(よつば)さんには言わなくて良いんですか?」



 突然そんなことを言われて、口に含んでいた牛乳が喉の変なところまで入った。焦って咳き込みながら、私はその言葉へ返事をする。



「ゴホ、ゲホッ……えっとー……そ、それはなぜゲホッ、」

「貴女、癖づいてない演技で嘘つくの下手じゃないですか。親しい人には隠した所でバレるんじゃないかなと」

「酷い言われようだ! 否定したいけど、その通りな気がして何も言えない!」


 

 思い切りむせて喉を鳴らしていると、その様子を見かねたのか彼女は私の背中をさすってくれていた。

 自分の演技の下手さなんて、自分で1番自覚している。えぇ分かってますとも。みんなの前で勝手に笑ってるのは癖だから行けるのに、意識すると逆におかしくなって大袈裟に笑っちゃったりするんだから。



「でもいいの? 君は誰にも言わないって約束で契約したじゃん」

「自分で言った事を曲げるのは確かに嫌ですけど、もうりんと鈴音(すずね)には教えてしまってますし。あの状況なら言ってしまった方が良かったからそれはもう良いんですけど……ルームメイトで信頼出来る友人なら、貴女も言った方が心も楽なのかなと」



 要は私が四葉さんから逃げなければ、あの日花柳は相棒契約の事を言わなくて済んだ訳だ。結果的に丸く収まったけど本当に悪い事をしたと思う。彼女が私に何とも思ってなさそうな分、その罪悪感は私に重くのしかかるんだ。

 せめて、花柳の役に立てることは無いかな? 私だけじゃなくて、花柳にもメリットがあるような何か――



「あっ、そうだ!」



 突然声を上げた私に、花柳は目を丸くして瞬きを繰り返す。さすっていた手を離し固まる彼女に、私は顔を見合せて勢い良く告げる。



「私たちの事さ、陽太(ようた)(ひかる)にも教えない? 実は私が君と話せたのも、2人が相談に乗ってくれたおかげなんだけど〜……あれ、君の幼馴染ってルームメイトの女子と男子2人ずつだよね?」



 私がそう確認すると、彼女は「幼馴染は、4人だけです」とたどたどしく声を放つ。少しの間口を閉じて考え込むと、ポツリとまた話し始めた。


 

「あの2人、貴女の相談に乗ってたんですね」

「うん! だからまぁ、これは花柳が良ければなんだけど。どうせなら知ってて欲しいなって思って」

「……そうですね。輝と陽太・四葉さんだけに、私たちの関係を教えましょう」

「良かった、じゃあ決定だね!」



 これなら、花柳と仲のいい幼馴染はみんな私たちの関係を知っている事になる。これなら相棒にもメリットがあるよね。

 彼女はその提案に納得したようで、私に少し微笑んでから手元にある本を読み進めた。その内容はもちろん魔法についての事だ。


 気を取り直してぐーっと伸びをしながら、私は机に置いていたスマホを眺める。そこに映る日付は5月……今月は魔法学園の体育祭があって、その日付は来週の土曜日だ。

 

 学園は小中高と別れているからそれぞれ1週間ずつ開催日がズレているらしい。高校生は月末で中学生は再来週、そして来週が私たち。体育祭までの運動パラダイスなこの状況は、私からするとまるで天国のような期間!

 

 なんだけど、目の前のお嬢様はそーでもない。何回か体育の授業してるのを上から見てて分かった事だけど、多分この人は運動がめっちゃ苦手だ。



「あのさ、君って体育祭は大丈夫なの?」

「……」

「え? ちょっと、おーい花柳ー?」



 無言を貫いている、これ全然大丈夫じゃないやつだ! 

 というか、何で何も言わなければ大丈夫みたいな表情をしてるんだろうこの人。ダラダラ汗出てて嘘バレバレだよ!



「君ってさ、頭いいのに時々すっごくバカだよね」

「はぁ? 脳筋の貴女に言われたくないです」

「なにーっ!? ほんっと言うようになったね君は!」

「私は元からこんな感じですよ、春風さん」



 体育祭においての敵を心配してる場合じゃ無いけど、それでもちょっと心配になる。今それを本人に言ったら更に怒らせそうなので、私は黙って魔法の本を読んで勉強をする事にした。

 相棒契約の代償……いつになったらそれが何だか分かるかなぁ。




 *




 

「花柳咲来と相棒契約したーっ!?」

「うん……」



 夜ご飯も食べ終わって、お風呂も終わって。落ち着いた夜の静かな空気を彼女は一瞬で切り裂く。

 それは隣の部屋に聞こえるんじゃないかと思うくらい、ルームメイト兼友達である千鶴(ちづる)の、今まで聞いた中で史上最大の声だった。



「えっ花柳さんと!? 本当に、聖女と闇魔法師が?」

「うん、まぁ色々あったんだけど……なんやかんやで相棒に」

「いや、色々ってレベルなの!? 相手が誰とか関係なく相棒契約してるのも、それが成功してるのにもビックリだし……とにかくビックリだよ!」



 顎が外れそうな千鶴の驚きっぷりに少し心配になりつつ、その反応は当然だと納得もしていた。彼女から見れば〝聖女と闇魔法師〟という天敵の2人が自分の知らない所で相棒になってるんだから。花柳のルームメイト……幼馴染の片桐(かたぎり)さんと稲山(いなやま)さんのリアクションの方が、世間的にはズレてたんだろうな。



「ほら、私たちの魔法って謎が多いでしょ? だから、お互い一緒に居たら自分の事とか魔法の事をもっと知れるかな~って思って……それを私が言って、向こうが納得してくれたの」



 そう伝えると、千鶴は「むむ~う~~ん……」と腕を組んで少し唸る。そりゃあ、急に言われて『はいそうですか、了解です!』って答えるのが難しい。千鶴の考え方を知った今の私は、それもちゃんと分かってる。

 すると彼女は少し目を伏せて、気まずそうに声を上げた。



「闇魔法は呪いの元って昔から知ってたから、どうしても少し怖いんだ。おばあちゃんたちも、それで」

「……うん」

「先代聖女様の事件もあるし、怖い気持ちはある。でもね、花柳さんが怖い人じゃないって言うのは分かってるの。だからあの子が怖いって訳じゃなくて……うぅっ、言葉にするのが難しい!」



 呪いは、闇魔法の〝生命力を使って能力を向上させる〟力を悪用したもの。みんなに教えて貰って、呪いって呼ばれてる違法の力が危ないんだって良く分かった。自分の大事な家族がそんな力に巻き込まれてるんだから、怖いと思って当然だよね。私だって家族が巻き込まれたら嫌だもん。

 

 隠すと約束してるから言わないけど、本当は私も何故か闇魔法を使えるし、花柳も光魔法を使える。それを知ったら千鶴は私の事も怖いと思うかもしれない。でも今は千鶴の事を前より知ってるから、そうされても嫌だと思わないんだろうな。



「ごめんね、千鶴に無理させたいわけじゃないんだ。ただ、私が花柳を信頼してるってことをちゃんと伝えておきたくて。2人無理矢理仲良くして欲しいとかも思ってないよ」

「……うん。大丈夫、ちゃんと分かってるよ。言いづらい事なのに、教えてくれてありがとう!」

「ううん! こっちこそ、聞いてくれてありがとう」



 正直、千鶴に花柳の話をする事は未だに不安に思っていた。でも、彼女が真っ直ぐ真剣に話を聞いて飲み込んでくれたから、この不安も薄れて行くんだ。

 ……と言うか、正直友達になれたのが嬉しすぎて真面目な話してるのに顔がによつく。これじゃ私、めっちゃ変態みたいじゃん!



「っうわー! ごめん、私千鶴と友達になれたの嬉しくて絶対舞い上がってる!」

「いや、菜乃花だけじゃないよ。私も同じ事になってるから」

「本当?」

「ほんとほんと!」



 そう言って、彼女は勢い良く頭を縦に振りまくる。そうして少しボサついた髪の毛に包まれた千鶴の顔……その表情を見合ってはお互い笑いが込み上げた。

 これで千鶴は大丈夫。後は、輝と陽太に相棒契約の事を話さないとだね。

 



 








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