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魔法使いの相棒契約  作者: たるとたたん
四章 枯葉に眠る真実の歌
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✤ 第63話(後編):爆発事故







 焦っていた頭が、すっと冷えていく。でも、冷静になってから見た所で、この状況が異様な事には変わりない。その中でも1番頭を埋め尽くすのは「花柳やみんなが無事で良かった」と言う安心感だった。

 


安藤(あんどう)さん、小野田(おのだ)さん。怪我はしていませんか?」

「うん、私は大丈夫だけど……」

「僕たちの心配よりも自分の心配をすべきだな、花柳(はなやぎ)咲来(さくら)。そっちこそ、いきなり大量の魔法を使って大丈夫なの?」

「そうだよ咲来さん、怪我とかしてない?」

「す、すみません……私も平気です」



 彼女が庇うようにしていたのはダイヤ()クラスの図書委員だったらしく、2人は花柳の心配をしながら会話を続けている。緑色の魔力が少しの風を起こして、焦げた破片は閉じ込められた空間の中で少しだけ舞う。相棒の出した檻の内側には他にも人が居て、中には図書委員の先生らしき人も見える。

 体育委員の先生は、コホンと咳払いをしながら問いかけた。


 

「他の先生にも連絡をして、みんなは一応保健室に行きましょう。その前に、事の経緯と魔法を聞いても?」



 その後の話によると、どうやらその魔道具らしきものは図書委員用に用意された物だったらしい。そのペンがうちの学年のダイヤクラスに回った時に花柳が不審な動きを察知して、ペンをぶん投げてから自分と魔道具に〝風の檻〟を使った……と。

 おかげで教室には地面に少しの煤が残っただけで済んだけど、一歩間違えれば大変な事になっていた。単なる魔道具の故障なら良くても、それにしては威力が高くて不自然だったらしい。



「ありがとう、それじゃあみんな保健室に行こう。松島先生、よろしくお願いします」



 そう言われると、図書委員の先生はみんなを保健室の方へと連れて行った。私が治癒魔法を使えたら、保健室に行かないでも直ぐにみんなを治せたのにな。

 図書委員の先生が結んだポニーテールが揺れるのを眺めていると、隣に立っている体育委員の先生にじーっと睨まれた。



「春風さん。心配だったのは分かりますが、教室に居るように言いましたよね?」

「スっ、すみません〜!!!」



 私が慌てて謝罪をすると、ぼんやりと視界の端で誰かが映る。向こうの教室から頭を出してる愛奈(まな)先輩っぽい人は、あちゃーと言うように額へ手を当てていた。委員会の集まり初日から、私は色々とやらかし過ぎてませんかね……。




 *




「大変だったな、色々と」

「本当ね〜。図書委員の子は怪我して無いみたいで良かったけどさ」



 念の為そのまま学校が終わりになり、小学生は全員寮へ帰宅。私は陽太と寮のスペースで、委員会の時に提出を求められた紙に色々と記入をしていた。

 寮にはクラス毎に入れる部屋が2つと、寮生なら誰でも入れる部屋が1つあって……確か『ラウンジ』って言うんだっけ。入った事は無かったけど居心地も良い。誰でも入れる部屋なので、室内には青と赤の制服を着た生徒で溢れていた。



「よしっOKだな! じゃあこれは俺が持っておくよ」

「ありがとう、めっちゃ助かるよ!」



 自分が持ってると無くしそうだったので、本当に助かった。陽太は寮部屋に帰るらしいので、私は手を振って彼が出ていくのを見送った。ふかふかの椅子に更に深く腰かけて息をつくと、私は辺りを少しだけ見渡した。

 

 新入生が居るのもあって、昔のような注目される空気が増えた。でも大分「花柳咲来のライバル・春風菜乃花」って雰囲気が定着したのか、以前のような過剰な聖女様扱いは減った。私が塞ぎ込んでただけだけど、入学した時からちゃんと自己主張すれば良かった……なんて、それは今の私だから言える事だけど。

 さて、私も自分の部屋に帰――



「ばぁっ!」

「うわぁぁぁっ!?!?」



 椅子を立とうと正面を向いた瞬間、目の前に突然人影が現れた。急すぎてつい大声を上げてしまったけれど、その相手は私のよく知る人物だ。



「心愛ちゃん、千鶴……もう、ガチでビックリしたよ!」

「あはは、ごめんね菜乃花ちゃん♪」

「なんか難しい顔してると思ったら〝脅かそ〟って言われたからさ、ついつい」



 どうやら2人で遊んでたらしく、ぼっちになった私に声をかけてくれたらしい。心愛ちゃんはケラケラと笑うと、私のドキドキと高鳴る心臓もゆっくりと落ち着いて来た。彼女たちは私の横に腰をかけると、こちらに身を乗り出しながら話し始める。



「ねぇ菜乃花ちゃん、図書委員事故の新情報知ってる?」

「え、知らない。何か進んだの?」

「さっき先生が言ってたの! ねっ千鶴ちゃん」



 彼女が問いかけると、千鶴はコクコクと頭を上下に揺らした。



「爆発した魔道具は普通のペンで、勝手に保存魔法を掛けてくれるやつらしいんだけど……その中から呪いの残滓(ざんし)が見つかったんだって」



 その言葉を聞いた瞬間、胸の奥が冷たくなる。パッと思いつくのは去年の夏休みの記憶だけど、逆にそれ以外がよく分からない。呪いと触れたのは人生で一度、あの時だけだから。

 

 あの魔道具にお店にイタズラされてたをたまたま誰かが買ったのなら、まぁ有り得るんだろうけど……ワザと入れられたのなら話は別だ。不自然に威力の高い爆発だったのも納得出来たけど、その時花柳が真後ろで気付かなかったらどうなっていた事か。こう言うのを解決するのは、やっぱり八雲(やくも)先生と和泉(いずみ)先生なのかな。そう言えば、今月はまだ花柳との相棒報告会をしてないんだよね。


 花柳からの連絡が帰って来ない事に少しモヤモヤしながらも、私は他にも何か知らないか2人から話を聞く事にした。後で花柳や先生と話す時にちゃんと知っておいた方が良いから。

 ラウンジの明かりは柔らかいのに、頭の中ではじわりと不安が押し寄せてくる。あれがただの事故じゃなくて、誰かを狙った事件なのかもしれないと考えてしまって。






 




 

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