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魔法使いの相棒契約  作者: たるとたたん
三章 不滅を誓うあの日の僕ら
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✤ 第41話:やらかしちゃいました





 


「はぁ……」

「そんなおっきなため息ついて、どうしたの?」

「あ、お姉ちゃん」



 振り向くと、目の前にはお姉ちゃんの姿。思わず漏れたため息は、飲み物を取るために冷蔵庫へ向かっていた彼女の耳にまで届いていたらしい。

 1歳しか年が変わらないはずなのに、私よりもずっと年上のように見える。その表情は、久しぶりに寮から家に帰ってきた事を実感させるのには十分すぎる安心感だ。



「いやね、冬休みにやっと家に帰れたのはすっごく嬉しいの! でも友達とはなかなか会えないからさぁ……なんか寂しいな~って」

「なんだ。てっきり宿題が嫌なだけかと思った〜」

「宿題は嫌だけど、それは入学前からだからノーカンなの!」



 私がそう反論すると、純粋で鋭い言葉が私の耳に突き刺ささる。



菜乃花(なのか)姉ちゃん、宿題はやっておかないと後悔するって涼花(すずか)姉ちゃんとママが言ってたよ?」

「うわーー耳が! 耳がとても痛いお言葉! 湊斗(みなと)、どうか姉にそんな言葉は投げつけないでぇっ!!」



 耳を塞ぎながらそんなことを言うと、2人して声を上げて笑い始めた。まったく、私を挟んで私の事で笑うなんて、失礼しちゃうんだから……なんて悪態を頭の中で付いているけれど、そんな出来事ですら私には愛おしい瞬間で。私の口角も、自然と上がってしまっていた。


 だけど、学園では毎日千鶴(ちづる)と一緒に過ごしていたし、花柳(はなやぎ)とは週2回は会っていた。それが急に途絶えるのは、やっぱり少し寂しい。

 もちろん、家族と会える環境に戻ってこれるのは嬉しい。だからこそ、私はどうしても欲張りになってしまう。どちらの気持ちも叶えたいと思ってしまうぐらいに。



「じゃあ、とりあえず……宿題を終わらせる前に、まずはお手紙を書いておいたら?」



 そう言いながら、お姉ちゃんは引き出しから便せんを取り出した。赤と緑の色が散りばめられたその紙は、我が家で毎年使われているクリスマス専用の便せんだ。

 私の座るテーブルの前にその紙を置くと、にやっと口角を上げながら話し始める。



「サンタさんのプレゼント何がいいか、前にグループメッセージで送っておいたんでしょ?」

「はっ、そうだった!」



 冬休みで家に帰れることが嬉しくて、帰宅してからさっきまではずっと学園でのことばかり話していた。そのせいか、今日の日付もすっかり忘れていたみたいだ。

 学校が終わった日は12月23日……つまり、今日はクリスマスイブの12月24日。寝て起きたらサンタさんが来ている、私たちにとって凄く特別な年末行事だ。



 春風(はるかぜ)家では毎年、サンタさんへお礼のお手紙を書いている。それを事前に書いておくんだけど、サンタさんは毎回その手紙を読んでお返事を添えてくれる。だから、我が家のクリスマスではそれも楽しみのひとつなのだ。

 隣に座っている湊斗は、ウキウキしながら習ったばかりのひらがなを書き始めた。すり減った鉛筆は、学校用に購入していたもの。きっと頑張って練習してきたのだろう。静かに頭を撫でると、不思議そうな顔をした。



「そんで、2人はサンタさんに何頼むん?」



 そう言うと、2人は顔を見合せて「ふっふっふ」と不敵な笑みを浮かべ始めた。



「え、何。怖いよ2人とも!? まさか、激甘シュークリーム1年分とかじゃないよね!?」

「何そのチョイス。全然違う~」

「甘い物は怖くないよ!」



 どうやら、プレゼントが届いてからじゃないと言う気がないらしい。だったら私も届くまで内緒にしよう。私だけ教えるなんて、そんなのフェアじゃないんだからっ!








『へぇ~! じゃあ、菜乃花(なのか)は今日の夜にクリスマスのお祝いをするんだ』



 日の沈みかけた夕方。ママが帰ってくる前に、なんとなく千鶴に通話をかけてみた。理由は単純で、冬休みの宿題から逃げる為だ。



「千鶴は今日じゃないの?」

こっち(魔法世界)だと25日は、家族や愛する人と過ごす日で、お休みになるんだよ! だから明日の朝からは、みんなお祝いモードって感じかなぁ……今日は特に何もしないかも』

「え、何それいいなぁ。ハロウィンの時も思ったけど、同じ日本でも魔法世界とは色々違うんだね~!」



 今はパパが大量のご飯を作っていて、お姉ちゃんがその手伝いをしている。私は料理が苦手だから、宿題をやることにしたのだけれど……どうしてもやる気が出なかったのだ。

 だから千鶴に話をかけたのだけれど、どうやら魔法世界で今夜お祝いするお家は少ないらしい。それに明日がお休みなんて、あまりにも羨ましすぎるよ~!!



「でも、YOTSUBAPAN(よつばパン)は忙しそうだよね、お店ってお休みの日とか混んでるもん」

『そうだよ~、なんと言っても今日と明日は、クリスマス限定スペシャルスイーツパンがあるからねっ!』

「それは絶対人気が出るやつだ!」



 私はそう言いながら、まるで目の前に彼女が居るように頭を上下に動かした。甘いパンじゃなかったら、きっと私も食べてたんだろう。こういうのを好んで食べる人のイメージで1番最初に思い浮かぶのは、やっぱり花柳だなぁ。



『……わっ、ごめん菜乃花。親に呼ばれちゃった』

「ううん、話せて嬉しかったよ! 急だったのにありがとね!」



 そう言うと、通話の音はプツッと途切れた。時間はだいたい30分……思っていたよりもずっと喋っていたみたいだ。しかし通話が終わってしまったら、いよいよ宿題をするしかない。

 算数、国語、書き初め……うーん、どれも全くやる気にならない。書き初めなんて年明け後にやるべきでしょ。だったら、そんな中で目に入るのは、 ……人生で初めて出てきた〝魔法教科の宿題〟かな。


 まさか魔法の授業が始まったからって、宿題まで出されるとは思っていなかった。でも、花柳と一緒にたくさん予習していたから、算数や国語よりも魔法の方が得意かもしれない。

 だから、わざわざこの宿題には一切手をつけていなかったのだ。こういう得意なのは取っておかないと、最後の方になってやりたく無くなる悪循環になる。

 ……そう思っていたけど、やる気がない時はやっちゃおー!



「よし、終わらすぞ〜半分ぐらいは!」



 私は机の上に置かれた魔法教科の宿題を開いた。ページをめくると、それなりにたくさんの問題が並んでいる。でも、あれもそれも全部花柳が教えてくれたものだからだろうか。何だかんだ、手はスラスラと自由に動いていた。



──────────

 


【 以下の問題について〇か✕かを記入して下さい。✕の場合は、正しくないと思った場所に線を引き、正しい文章を書いて下さい。 】


①光魔法と闇魔法は〝二大魔法〟と呼ばれている。


②〝光魔法師と闇魔法師〟は強力な魔法を扱うことが出来て、元素能力に捕らわれない新しい魔法を、簡単に作り出す事が出来る。


③能力は四元素(しげんそ)魔法と同じく個人差があるものの、四元素の魔法使いとは比べ物にならない程強いと言われている。



──────────



「①は〇で、②は✕だね! 個人差があるから簡単じゃないって花柳と八雲先生が言ってたはず! ③は……これも○なのかな」



 やっぱり、魔法の宿題が一番上手く出来る気がする。相棒にあれだけしごかれたんだから、逆に出来ない方が悲しいけど。テストだって、これだけは割と高得点だったんだから!


 でももし、本当に私が簡単に魔法を作り出せたら……何をしたいと思うかなぁ。


 そんなことを考えながら、私はふと杖を右手で動かしてみた。杖を持って、使いたい魔力の種類を唱えて、頭で想像しながら願いを告げる。そうして自分の魔力を杖の方に流れていくのを感じて、コントロールする。それが、魔法を使う為の法則。

 過去を生きた聖君様や聖女様も、私と同じように杖を振って、願いを叶えてきたわけだ。魔道遺物で見た、あの聖君様みたいに。


 その中でも先代聖女様は、色んな人を助けたり癒したりして回ってたらしい。初代聖君様は、魔法世界と人間世界を分けるための仕組みを魔法で作った立役者。他の人たちもたくさんの事を成している。

 私も一応同じ立場にいるから、彼らと同じようなことができるかもしれない訳だけど、私は誰かを助けたいみたいな気持ちがあるわけじゃないし……。



 そんなことを考えていると、目の前にある窓から光が差し込んできた。オレンジ色の、キラキラと煌めく太陽。それでふと思い出したのだ。今日一番望んで居たのに、一言も会話も出来ずに悲しかった事。

 私が今一番欲しい魔法と言えば……



「〝光の魔法さん、私の部屋と花柳の部屋のクローゼットをくっつけて!〟 ……な~んちゃって、こんな適当な言葉で魔法が作れたら、ほんと笑っちゃ――ん?」



 その瞬間、ふと気づいた。なんだか、右手の方がふわふわと光っている気がする。しかも、いつも魔法を使う時と一緒の感覚が身体の中から右手に向かって流れているような。

 

 って、いや……そんな、まさか。


 まずい。よく考えたら、いつもこんなふざけたことを言う時は、こんな呪文っぽくもなければ杖も持ってない。でも、今は持ってるし条件も揃ってた気がする。

 信じられない私の頭とは反対に、目の前では光の糸が空気を裂いていく。クローゼットにチクチクと刺されるその糸を、私はボーッと眺めることしか出来ない。



「いやいや、だってさっき問題に✕して『簡単に魔法は作れないって』って書いたばっかだよ? これで出来たら○にしないとじゃん! ここを開けても、ど~せ何にもも起こらない……」



 自分を必死に励ますように……いや、誤魔化すように言葉を続けていた。しかし私の目の前に現れたのは、信じられないような信じたくないような……そんな光景だった。



「は?」

「……へ」



 目の前にいたのは紛れもなく、私の唯一の相棒。

 魔法世界に居るはずの、花柳(はなやぎ)咲来(さくら)その人だ。



「……ひっ……は、春風の形したおば……け……?」



 何が起こったのか理解できないまま、私はただただ目の前の現象を見つめるしか出来ない。しかしこのままでは、あらぬ誤解が生まれそうだ。

 とりあえず、今の季節に一番似合う挨拶をしておこう。



「あっ、えぇ~っとぉ……は、花柳……メリ~、クリスマァ~ス……」

「う、うわぁぁぁぁあぁああ!!!!」



 彼女は顔を真っ青にして叫びながら、おそらくクローゼットなのであろう場所から部屋の壁に後ずさりした。口をハクハクとさせながら、ぎゅうぎゅうと背中を壁に押し付けている。懐かしいなこの感じ、ハロウィン付近によく見た光景を100倍誇張した感じのリアクションだ。

 普段なら普通に笑っていてもおかしくない状況下。でも、今の私は全然笑っている場合じゃない。背筋は今にも凍えそうだ。

 

 この(人間)世界で魔法を使うのは基本的に禁止で、これは魔法学園の校則にも書かれている事。こっち(人間世界)で魔法を使った場合は、自分の所属している組織の魔道具に〝魔法を使用した〟という履歴が残されてしまう仕組みになっている。つまり、私はたった今【校則違反をしました】って学園側に記録されてしまった!

 しかも、確か花柳は夏休み明けに、大庭先生に職員室に呼び出されて……。


 

 ――どうしよう。私、後からすっごく怒られるような事やらかしちゃった!?






 

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