03
チミコさんが感じた街の違和感とは、
どうやら俺たちへの監視が復活してるっぽいってことのようです。
しかも、以前の監視者たちよりも遥かに隠密度マシマシな何者か、からの。
それって、いま俺たちが装備している対監視用アイテムでは、
全然役不足になったってことだよな……
以前、俺の不審者っぷりが様々な組織から注目され過ぎたせいで、
俺たち家族は一時期、あちこちから監視され放題な状況だったのです。
で、対策のために俺が『創造』スキルで作成したイカす指輪、
それが『見つめ返すジト目』
陰からこっそり監視している嫌な連中への反撃アイテムとして、
『視線感知』『直接警告』『悪意反射』の強力な付与で、
しつこいデバガメどもを完全シャットアウト!
だったはずなのですが……
『最近、指輪に反応しない視線、感じるよ』
むう、パワーアップしたデバガメの逆襲、ですか。
でもどうしよ、対策っていっても……
これって結局、指輪の付与をいくら強化しても、
イタチごっこにしかならん気がする。
もっと根本的なところから根こそぎ根絶、みたいな強硬策を……
「出来れば穏便に……」
……優しいですね、ツェリアさん。
でも、その優しさにつけ込んでくる悪党どもから家族を守らにゃならんのです。
何せうちの奥さんときたら、美人で気立てが良くて家事万能な完璧メイドさん。
どこへ出しても恥ずかしくないけど門外不出の独り占めしたくなっちゃう、
シジマ家専用パーフェクト新妻さんですから。
「もう、シジマさんったら……」
照れ顔もサイコーですっ。
ところで、ツェリアさんも監視に気付きました?
「私は特には……」
「殿方からの視線には結構敏感なのですが」
なるほど、でもそれって凄いヒントかもしれませんよ。
美人メイド人妻さんと、見た目だけはやたらと可愛い妖精さん、
野郎に監視させると辛抱タマラン状態になって仕事に支障が生じるので、
監視任務させるのはクノイチちっくな女性監視員のみに切り替えました、
みたいな?
『妄想、乙!』
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そんな感じの家族会議の結果、
とりあえずこの件は保留、ってことに。
チミコさんも、今すぐどうこうしなくてもよさそうって言ってます。
確かに鋭い視線は感じるけれど、エロエロとかヤバヤバとかの、
悪意バリバリじゃないから、だそうです。
実害を被ってからでは遅いのかもしれませんが、
残念ながら今は、対応出来る策を思いつかんのですよ。
何せ、悪意の無い視線にまで反応するよう指輪の付与を調整すると、
記録されるログのデータ量がエラいことになっちゃうわけで。
そんなの見てるヒマがあるなら、とっとと次の冒険しようぜ、ってことで。
というわけで家族一同、出立に備えていそいそと旅支度。