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『あなたが落としたのは、この金のおにぎりですか?』
『それとも、こちらの銀のおにぎり?』
異世界、マジ侮りがたし。
目の前には、神秘的な雰囲気で佇む、水も滴るような美女。
たった今、湖から出てきたばかりなのに、
あの薄着が濡れ濡れじゃないのが全くもって残念無念、
なんてバチ当たりなことは思ってませんってば。
ただ、女神さまとお呼びしたくなるほどの美貌と気品が、
その手に持っている金ピカ銀ピカのおにぎりのせいで、台無しこの上無し……
『あのぅ、聞いてます?』
はい、ばっちり聞いておりますよ。
あまりにもお美しいので、我を忘れて魅入ってしまいました。
『あら、お上手』
『それはそうと、金と銀、どちら?』
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こういう重大なイベントは、きちんと家族で相談して……
などと思うなよっ。
このヤツタカ シジマ、全てまるっとお見通し!
金だの銀だの怪しいおにぎりなんかには、ごまかされたりしませんとも。
何故なら、失われたツェリアさんの手作りおにぎりの行方、
そのロストの理由と証拠は、既に皆さんの目の前に!
『何ですって!』
ふふん、しらばっくれても無駄ですよ。
その綺麗なお顔の柔らかそうなほっぺについたソレ、
皆の視線を絶賛釘付け中の"ごはんつぶ"こそが、
あなたの所業の動かぬ証拠。
つまりは、あの大切なツェリアさんの手作りおにぎりは、
今まさに、あなたのお腹の中にあるのです!
『……参りました』
これにて一件落着!
ぱちぱちぱち
『お見事、シジマさん!』
『……みんな、拍手しないの?』
「お茶、冷めちゃいますよ」
「お茶会だけに茶番劇……」
おっと……




