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電車の大木

作者: 湾田
掲載日:2023/04/03


電車の大木

一話:藤電車

仲直りってどんな概念?目が覚めると、何となくそういうことを思いちゃう。だから、その古い電車の中に行って入った。壊れていないが電車内に大木が留めてあって生えてて、ものすごくて素敵な場所だった。毎日放課後から行くと、そこで寛ぐことができた。その場所には、自然界と現代世界が混ざっている感じがした。

今日、電車に行っていた。行く前俺は市街を歩いて、摩天楼から逃げた。動いている新幹線の揺られる音を聞きながら、俺はなんか変だなと思った。留めてある電車に行くつもりだったから。一人ぼっちの俺が、いつも独り言してるのはわかった。だが、到着のときに一人ぼっちのままが変わっていった。電車の中に入ると、ある人がいたーー

俺は何も言わずに普段の席に座ってみた。左側。その人もこちらの側に座っているけど、別に構わなかった。でも聞きたかった。なんでここに来てるんだろう......

俺はイヤホンを耳につけて音楽を聞いた。その人がいないフリをした。あまり見た目なんて見えないがそもそも見たくなかった……

「音楽うるさいんだけど」

沈黙が続きながら俺は驚いた。イヤホンを外して振り返ると、こういうことをいった。

「聞こえてるか?」

「うん、邪魔なんだけど」

何なんだこいつってしか思わなかったなーー だけど振り返ると、女子高生だった。同じ制服、それって同じ学校に在学している。長くて黒い髪、普通の顔。でも失礼な......

「そもそもなんでここに来てるのか?ここは俺のだから」

「こっちのセリフじゃない」黒い髪の人が言って「この捨てられた電車は誰にも有してないから誰にもここに座れるだもの。」

「!!!」何も返事できず俺は黙っていた。俺の楽園を守るしかなかったがこの女が...... 自由に携帯を使っている様子だった。

「まず俺の質問答えてくれない?」防ごうとしてみろ。その女は学生カバンをとって立った。電車の手すりを握って藤花を背景に女の格好が俺にはくっきり見えてきた。彼女の長い髪が風のほうへ浮かんでいた。

「あの質問に答えない」

俺はため息をついた。「とりあえず、同じ制服だな。」

「嫌な偶然だね」

「俺も同意見」

俺たちはすぐに黙って何も言えなくなった。

何か言うべきなのか?そんなことを考えているうちに彼女はまた座り始めた。俺と同じようにイヤホンをつけて音楽を聞く。しかし、今度は違う方向を見ている。一体何考えてたんだ……

俺もイヤホンをつけに戻った。そして考えた。なんでこんなことになったんだろうか。俺はいつものように放課後に藤電車に行くのに、今までその人全然見たことがない。もしかして、理由は同様に休みたがってるのかと確かに思った。でも察する場合じゃなかった。

あの日から、俺たち二人は藤電車によく来るようになったーー。


二話:警備員との遭遇

翌日。藤電車に行く途中で俺は近くの建物を言い立て始めた。学校、八百屋、スーパー、廃駅、そして病院。藤電車のあたりに公立病院があった。電車の過去とか、どうなってきたとかわからないけどずっと前からあったんだろう。俺は藤電車のドアを開けると、またその女がいた。

「......」

「.......」

何も言わずに入っていった。いつものようにイヤホンをつけて黙った。とにかく、何も言えないと感じた。

「お前、うちの学校どのクラス?」

女は携帯を切ってこっちの方を見た。「あなたには関係ないでしょう。」

答えられなかった。一応俺は学校で見たことなかったから、多分一年生か三年生。それと、二年生の可能性があったがその女を見た覚えがなかった。俺たちは風の音を聞いていた。風が涼しくてきれいだと思った。藤を見て休んでみた。やっぱり素敵な場所だったーー

「藤の象徴って知ってるか?」俺は目をつぶって聞いた。

「ん?何それ?」

「へ?藤ってのは、長寿って意味。その上愛情の象徴」

「愛情?くだらない話らしいね」女が俺を嘲った。

俺は頭を振って「違う。ロマンチックだけではなく家族愛でもある。」

「あっそう......」俯いつつ返事をした。真面目な顔。「そのくせにあなた、家族いるの?」

「は?家族がいるんだが。」

「じゃどうしてここに来てる?放課後、家族と一緒にいればいいでしょう」

「それは......」まったく返事が思いつかなかった。立ち上がってたのは気づかなかった。

「こんなことって疲れるよな」

「!!」

「!!」

突然外から声が聞こえた。俺たちはとっさに頭を振り返って目を留めた。

「やばい、警備員だ!」まごまごと言った。病院の敷地だったから捕まったら困るんだった。こんな状況に引っかかったなんて。

「どないしよう?」

ドアが開く音がした。鳴り続けつつ俺は手を差し伸べた。手を握って俺たちはベンチの下をくぐって倒れた。姿勢が...... 女の髪が俺の顔に撫でて...... まるで不愉快な姿勢だというものだった。

「古い電車じゃな」

「おう。病院に無用」他の警備員さんが藤をせせら笑って蹴った。大木の震える音がした。その時に俺は、嫌味を出す感じがした。いきなり声が聞こえた。俺じゃなかった。

「藤を蹴るのはやめて!」

「な!......」俺も言い出した。するりとドアを開けて立ち上がって女の手を取り始めた。

そして、そのまま二人で走った。

「おい、待て!止まれ!」

「すみません!」俺は叫んで走り続けた。

結局、俺たちはその日を無事に過ごせた。摩天楼の市街まで逃げて警備員さんたちにつかまらずに済んだ。でも......

「なんでそういうの言ったかよ」俺が走り疲れて喘いて「バレたところだぞ。」

「わかんないよ」女がまごついて言った。「自然は重要なもん...... かな?っていうか、私たち一体どこ?」

俺は周りを見ると、確かに知らない道だった。なんであいつはそんなことを言ったかはわからないが、大木を守ってもらってちゃっと感謝していた。こういう気持ち、久しぶりだったーー

なんだか冷たい目つきで俺を見ている気がした。まさか怒ってた?

「なんかごめんなさい、連れて逃げてなんて......」 いや、冷たすぎて睨みつけた気がした。「どこかでお前におごるから。自販機とかコンビニとか」

迷っている子供たちのように道を歩いていた。そのまま何も言わなくなった。離れるかと提案しようと考えた。だけど、景色を見た。狭い道路、高いビル、午後の寒さ、悪くないと思った。

「やっぱ離れるか。俺たち一緒にいなくていいさ」

「あかん。」

「そっか、それじゃあ。あ?はあ?」

「当たり前でしょう?私が迷ったらどうなるわけ?」

「いやいや、お前は高校生。自分で帰ることができるんだろうが。」

「なんだって?『女子』高生だよ。こんな時間は危ない」胸に手をおいた。「男ならセーフ。だけれど私は男じゃないよ。でも実は......」

一秒で静かになってきて歩くのをやめた。前の方向に風が強く吹いてきた。

「最近この街に引っ越した。当座のところ、転校生だ。」

二十分が経ったあと、別々の帰り道をやっと見つけた。なんとも言えないけど、女は藤電車の方に行った。『当座のところ』ってどういう意味だろうと考えてた。本当に転校生だったら学校で見たことがなかったのは今理解できるようになった。

下校したあと、太陽がとうとう消えた。自分のベッドで寝そべると、ため息が出て何もしたくなかった。俺の部屋の外のざわざわな生活音を聞きたくなかった。窓を眺めると、街の光がチラチラしていた。摩天楼が様々な色で塗られ、俺は各ビルの方書を見分けた。そして、病院の明かりの近くに藤電車のところが見えていた。


三話:猫カフェ

校門から出て、桜の並木が下がるうちにいつもの場所の方向に行った。他の木々を見ると、そのおじさんの面影を覚えてきたものだ。忘れられなかった。だが俺は何してるんだと考えてしまう時もあった。結局、学校で馴染むことができなかった。

電車のドアを開ける前、何か......

「何してんの?」

肩をピンと立てた。俺の後ろに、あいつがいた。いつも俺よりも早かったと思って振り向いた。

「あ、やあ。なんだ?」

鞄を女の背中から下げていた。ちょっと眠かったから俺は頭が回らなかった。

「おごるって言ったでしょう?さあ、行きたい場所があるんだけど。」

「お、それ忘れてたか......」やばかった。完璧に忘れてしまった原因は、俺のせいだった。何にせよ財布を持っていてよかったとしか思わなかった。女が俺を連れて行きながら、初めて誰かと外食したり遊んだりするつもりだと思った。思春期のせいか。食事のところに近づくと、俺は店名を読んで思い知った。

「何?行こう」

「いや、なんでもない......」俺が言って店頭の看板を見た。『カップルズオンリ〜』って書いてあったから、いやだった。

「いらっしゃいませ!何名様ですかー」

「二人です。」

「ご案内いたしますー」

猫がたくさんいた。猫すぎ。にゃあんと席に飛んで行った。食卓を囲みながら俺はいう。「うわ......」

「猫嫌い?」

「違う。お前ちょっと恥ずかしくない?ここってカップルの空気だ」真面目に聞いた。女が返事の前にベルを押して給仕さんに注文し始めた。

「何にする?」女が聞いた。俺はさっさと何かメニューで決めた。

「じゃあ...... チャーニャン一つお願いします」

給仕さんがメモ帳で書き続けつつ「お飲み物はいかがなさいますかー」

注文した後、さっきの話をしようとした。でも賑やかなお店なので、ちょっとうるさい。

「先の話だが」

「どうして私は恥ずかしくないってこと?」お茶を飲みつつ言って「カップルズオンリーとは、ここで食事するには二人が必要だと言われてる。前からこの猫カフェ見てて行きたかったから問題ある?」

「そっか......」俺は頷いて考えた。やはり変なのは俺だった。だけど、こんな会話をすることなんて久しぶりだった。「実はこんな外食に連れて行ってもらって嬉しい。数年前、あるおじさんがいた。いつも藤電車に迎えられて木々のことを教えてもらった。藤は聖なる力がある、どんだけ一百年まで生きることができるやんって。あ、悪い、独り言しちゃって」

「ううん、なんか聞いたことある」女が首を振って返事した。

注文したものが来てチャーニャンを見た。やはり猫の形。オムライスを注文したほうがいいかなと思いながら猫の炒飯を食べようとした。すると、いきなり猫が俺の膝に跳ねた。

「な?!...... 降りろ!」猫は俺の膝が好きだったようだ。嫌がってる間、女が笑い出した。本当に笑えるものだったのか、こいつ...... 女はナイフとフォークを手に持ってからミニキャットタワーというパンケーキを食べ始めた。デカい...... いくらなのかとしか思わなかった。

「んん、美味しやで!」

「え?なんで急に方言?」

「あ、いや......」

「そうだ、お前は転校生ってのは、もしかして南から引っ越したのか?」

「!!!」その瞬間ショックで女は黙って「バレたかな......」

視線を逸らして何も言わなかった。そして俯いた。しばらくすると互いに音もなく食べ続けることにした。俺は経緯を知らなくて知りたくなかった。だけど、謝らなければならなかった。仲直りっていう概念は苦手だったが。

「やっぱ-」

「な-」

「どうぞ。」こんな空気、気まずい。

「舐めてるの?」

「そんなわけないだろう。北とか南とかなど、どうでもいい。それに、お会計お願いします。」

お会計を払うと、ひどくて高い。毎月の小遣いがかかったけど、財布持っていなければどうなるんだろう。

猫カフェの出口から、とことこと道を歩いた。女は先に行って止めた。

「今日軽食を奢ってくれてありがとう。私-」

「何しとるん?」声をかけたのは俺じゃなかった。後ろに振り向くと、ある中年女が現れた。悲しい顔をして俺たちを見つめた。

「お母さん?......」

「この人、誰やねん?今日病院に戻るん?ほら、そろそろ時間やよ」

やばかった。誤解しないで俺の頭で繰り返しながらパニック。だが、病院?

「あいつは...... 友達や」

「......」俺はそもそも友達ではなかった。知らない人間。よそ者だった。

「その制服...... やっと学校で友達ができとるん?!」お母さんははっと驚いた。

「はいはい、気にせんでええから帰ろう」女は母を歩道に連れて行った。

女の母。そんなに泣きそうな顔をするなんて、仲良くしてるな俺は思った。いいな、と。だって俺は家族愛という概念が、欲しかったんだ。呆れたままで、その呆れた俺はごめんなさいって女に言えなくて帰ることにしたーー。


四話:お見舞い

「おはよう、息子」

瞼を擦りながら目覚めようとしていた。台所に歩み入ると、俺のお母さんとお父さんがいた。好きな味噌汁の美味しい匂いがして席に座った。

「おはよう、朝ごはんできたわよ。一杯食べてね」

「うん。いただきます」

「また味噌汁か?息子の体に悪い」お父さんが言い出した。空気がすぐに変わった。

「貴方、味噌汁はうちの息子の好きな食べ物だね。どうして突然そんなに心配してるの?ほとんどの時間いないくせにね」

「は?誰が一生懸命働いているんだっけ?誰がうちの代金を支払ってんのか?パパは息子の将来のために仕事をしているんだ。」

急に俺は立ち上がった。こつんとテーブルが震えた。もう我慢できなかった。頭がくらくらしつつ、俺は台所から去っていった。

「どこに行くの?」

「学校準備だぞ。」

「ほら、貴方と話しかけたくないじゃん」

「なんだと?妻こそだろう」父の声が聞こえた。いつも通りに喧嘩していた。俺は他の家族関係を見澄ますと、うちの家族関係ってどこだと考えてしまうものだった。羨ましかった。

学校で、馴染むことができなかった。クラスメイトたちは多分、俺のこと嫌がってるかも。授業中、俺はもやもやと教師に聞いていた。だが、馴染むことができなかった理由は多分、俺のせいだった。授業が終わった後、クラスのみんなが集まって話した。

俺を除いて楽しそうに喋っていた。俺は席に座って、ただぼうっと教室の風景を眺めていた。何の話をしているのか分からなかった。

休み時間になった途端、俺は教室から逃げた。廊下に行くことにしてから階段を登った。確かに、あいつのことを探していた。転校生だと言ったから、どこかに校内がいるはずだったと。俺が廊下に着いたとき、誰もいなかった。

「だよな......」自身に話しかけて「彼女がここにいるなんて、馬鹿か俺」

そよ風が俺の顔を撫でて、俺は校舎の中に戻ることにした。

放課後。歩きながら建物の猫カフェを見た。今日はストレスがたまったから、休もうと思った。家でさっきの喧嘩、学校で宿題、勉強、廊下...... 気分が悪くて心臓が痛かった。藤電車に歩み入った。その大木がいて、藤花も相変わらずきれい。

いなかった。何を期待したんだ?

イヤホンを出してつけて電車のベンチに座った。しばらく落ち着かせようとした。嫌な感情が俺の奥に襲いかかっている間、きれいな藤花を眺めた。音楽と美しい風景なら、落ち着けた。それからなんで女が来なかったのかを考えてみた。いや、あいつは最初から答えられなかったから、ゆえに来なかった理由を考えるのは無理。だが昨日、お母さんが現れたとき何か病院って...... まさか。

藤電車から出た俺は病院の方向に行った。このあたりの近くに病院があり、入院中の可能性は確認しないと。病院の内部は白すぎてアルコールの匂いがしていた。受付に近づくと、お見舞いの条件を確認。制服ならいいかも、だが色は…… そしてプレゼント……まるで困った。

「あの、お見舞いですけど」

「患者の名前をご存知ですかー?」

「あ、あの……」やっぱりよそ者だった。女こそは知らない人間。女の名前、全然知らなかった。なんでこんなに心配しているの?

広い大部屋を走り抜けてからキョロキョロと表札を見ていた。色々な名前の表札をさっさと読んでいた。でも名前なんて知らなかった。女は俺に話しかけてくれたんだ。初めて爽快な会話を楽しめたんだ。何か手掛かりとかがあったのかと思いながら、廊下を走り回った。

十分が経った途端、ある表札が俺の目を引いた。『藤沢』と表札に書いてあった。藤が含まれている漢字名字...... 間違いだったらどうしたらいい?緊張しながら、俺はグズグズと部屋の引き戸を開けることにした。

ベッドで窓を眺めているのは、前からどこかで会った中年男がいた。サイドテーブルを見ると、薬が多かった。俺はその顔を思いついた。顎髭を生やしてる男性だった。

「おじさん?......」

こっちのほうを見ると、彼も気づいたんだろう。「おう、少年やないか?」

「......」

しばらく黙っていた俺は何も言わなかった。変な気持ちを重ねていた。この男性...... 昨日おじさんのことを教えてた。

いきなり引き戸がまた開いて、女が現れた。花束を持ちながら止めた。

「お父さん入るで」女が言って俺と見つめ合った。「へ?!どうしてあなたここに?!」

「少年、お前は娘の知り合い?」

何が起きてるのかわからなかった。

おじさんはこっちを見て言い続けた。「久しぶりやな。どないしたん?」

「嘘つき」俺の口からそれが出てしまった。「あの三年前南に帰るって俺に言ったんだろうが!藤電車で待ってろって!...... 毎日毎日ずっと前から待ってるんだよ!おじさんはこの病院に入院中なんて、なんで俺に伝えなかったのか??」

「少年。怒ってまっか、俺を」

「怒らない、俺はおじさんのそばにいたかった。入院知っていたら毎日見舞ってあげるよ」悲しい顔をしながら頭を振った。泣いたところだった。

「ちょっと、」女がまごまどと言い出して「あなたのおじさんは私の……」

「誤解すな。ほんまのおじさんやない。」彼は返事をした。「ごめんな、その長年前から伝えなくて。そのときに真相を教えられたら少年の問題が消えへん。」

「俺の問題?」

「この三年間、両親は今どない?」

「......」俺は答えることができなかった。だけど、あのとき真相がわかったらどうする?

「やっぱまだ仲良くしとらんな。せえや、少年は娘と知り合っとるな。」

「お父さん、この人とどういう関係?」

「知り合っとらん?やったら二人ともちゃんと紹介しといて」

俺たちは互いに顔を見合わせて緊張していた。確かに俺たちの関係を全然知らなかった。

「藤沢さん、よろしく。」

「あ- うん、こちらこそ。」

気まずい。なんだか悪い感じがした。紹介、失敗。だけど、話してくれる人が増えたと思っていた。

「とりまお前たちがここにいるから、今日は帰ったほうがええ。明日ここで頼みたいことがある」

「わかった、失礼するわ」女が従って俺の手を取った。「行こう」

病院から去っていった。結局本当に何も知らなかった。俺たちは藤電車に入った。互いに疲れてるからどすっと席に倒れた。この数年前、おじさんはこの病院にいた。

「ね、お父さんとあなたどういう関係?」また女が聞いて「私にはわからないよ……」

「中学の時、お前の父はこの場所で俺に相談してくれた。毎日いろんな話題、木々、人生とか」

「やっぱお父さんらしい」柔らかく微笑んだ。

「んで、なんで彼は今病院に?」

藤沢さんは目を逸らした。俺は知りたかった、ずっと一人でいた理由を。街は夜にかけて、藤花が青く輝いていた。

「末期がんだからよ」

本当に、何もわからなかった。このくだらない夜、静かになってきた。


五話:クエスト

ある朝のこと、俺は電車の美しい大木を触った。藤の表面はツルツルだった。

「人生っていつか終わるもんや」おじさんが言った。「木々は幾星霜生えとるけど、いつか木の葉や枝が枯れて死ぬ。」

「でも、新たな木がその木の代わりに生えていくんじゃない?」

「ほらほうや。いつか俺たちは死ぬかもしれんが、子孫がいる限り俺たちの代わりや」

「おじさん、ちょっとわからないけど覚えとくよ」

現実に戻った。今学校は昼食時間だった。学生たちが別々の友達と一緒に座ったり会話したりしていた、それでその一方俺は一人。やっぱり藤沢さんを探してみることにした。何年生なのかわからなかったので階段を登った。

「ねえ」ひょっこり誰かが声をかけた。

「は?すみません、誰ですか」

「私だよ。冗談しないでちょうだい」

その声は紛れもなく藤沢さんの声だった。女は俺の前に立っていた。俺は冗談を言ってみたけど、ちょっと嬉しかった。でも、真相を無知しちゃだめだってわかってた。

それから俺たちは、屋上に行くことにした。

「聞きたいことがあるさー」藤沢さんが食べつつ話し続けて「名前を教えて」

「ん?」

「な、ま、え。昨日全然教えてくれなかったよ」

「あ、それっか......」確かに今まで言わなかったが、よそ者だと思ったからだった。息をついて言った。「樹木永阿だ。」

「樹木君か。私は藤沢藤華」とフルネームを交換してもらった。

「藤沢って知ってるが」

「藤沢もお父さんの苗字だから藤華でいい。嫌なら練習しといて」藤沢さんが食べ終えて立った。「放課後病院に早く行きなさい、あなたの『おじさん』待ってるから」

「わかった、藤沢さん」

「藤華でええって」

藤沢さんは何を感じているのかわからなかった。きっと大変だろうと思った。

学校が終わった途端俺はすぐに病院に走った。おじさんは何か頼みたいことがあるって言ってたから。近所のあたりはあまり遠くなくて距離は大丈夫そうだった。はあはあと病室の引き戸を開けた。

「参ったな、おじさん」

藤沢さんも部屋に歩み入った。挨拶をして引き戸を閉じた。おじさんは中年男の格好で、知恵がある男だった。

「来てくれてありがとうな、少年と藤華。昨日の話は、これや」彼はノートを出した。ノートは、おじさんが書いたものだった。

「お父さん、これ何?」

「俺が死ぬ前のクエストや」

その時、俺は不安になった。時が止まった瞬間だった。死ぬってこの世界から永遠に去っていくものだった。もしおじさんが消えたら...... 

「……」

「……」藤沢さんが言い出した。「なんでやねん⁈私お父さんの状態わかってるのに……」

「藤華。これは俺の願い。嫌ならやらへんでええ、やけどしたいならできるだけしといて」

藤沢さんにとってきっと俺より苦しんでる状態。おじさんは藤沢さんの父だから。その家族愛が、別れたくもなかった。

「わかったわ、受ける!でもお父さんだって約束してくれたんだ...... 私の高校生活に助けてあげるって約束」

「忘れへん。せやからこそ約束を守るため、作ったんや。少年は?」

ずっと黙ってた俺は口から言葉を出せなかった。おじさんは初めて話しかけてくれた人。藤沢さんは二つ目。消えなくなったら俺はどうするのかわからなかった。

「受ける」俺はやっと呟いた。顔の踊っている涙を気づかなかった。「受けるから、死ぬな」

おじさんが柔らかく笑って「ええでええで。さあ今日はこれで」

俺と藤沢さんは、何も言えずに藤電車のドアを開けて入った。理解できるように黙ってた。なんで、なんでこういうのになったのかと俺は考えるしかなかった。でも、心配してるのは座っている藤沢さん。

「とりあえずノートを読もうか」手に落ちた涙を隠してみた。

「うん」

一緒に挑戦状を読むと、驚いた顔をした。

☆クエストボード☆

藤華:学校で友達を作れ!!

少年:両親と仲良くしい!!

そして、クエストがスタートした。一つだけが書いてあったのに、一番難しいクエストだった。

「仕方ないわね」藤沢さんは目をつぶって腕を組んだ。「これがお父さんの望み。ルールにしよう。」

「は、はい」

人差し指を立てて「一つ。誰しも私たちの関係を知らない、家族の規模だけ。二つ、一生懸命クエストを終了」

「なるほど」

「三つ、毎日この電車で落ち合う。わかる?」藤沢さんが握手をしようと手を俺に差し出した。信じられない状況だった。俺は手を差し伸べて握手した。

「わかった。おじさんのために、頑張る」


六話:相談と試し

おじさんの病名はなんだろうと時には考えてきた。この数年の間、知らず知らずに俺は人生をしてておじさんの末期症状の病気って知らなかった。その間ずっと一人ぼっちだったから苦しんでると思い込んでた。それは嘘。ずっと苦しんでいるのはきっとおじさんだと考えた。

両親は小さい頃から喧嘩してた。いつもだけど、お父さんとお母さんの喧嘩を見るのはいやだった。今でも嫌い。でもどうすればいいのかわからなかった。なんで全部わからなかったのかよ?俺は両親の息子のくせに......

「ちょっと聞きたいことがある」

「何?」

藤電車の中で藤沢さんに聞いてみた。今日はおじさんが挑戦状をくれた翌日。放課後だから、女と落ち合った。相談が欲しかった。

「お前は父と母と仲良くしてるよな?」俺が言い出した。

「うん、そうだけど。」

「どうやって両親の喧嘩を解決すればいいか?その......」腕を組みながら腰掛に座った。

「あなたのパパとママも愛し合ってるんだから、喧嘩しないでって言えば済むことじゃない?」藤沢さんが言った。

「そんな単純な問題じゃねぇよ!」

思わず大声で叫んでしまった。藤沢さんがびくっとして目を丸くした。

「ごめんなさい。」すぐに謝ったけど、恥ずかしかった。

「いや、こっちこそ悪かった。怒鳴ったりしてすまん。」

しばらく沈黙が続いた。気まずいなぁ。藤沢さんが続けて提案した。

「両親の喧嘩なら、あっさりお前ら喧嘩をしてるのはいやだって言えばどう?」

「無理かな。」即答した。

「どうして?」

「うちの父さんと母さんは昔離婚する寸前まで行ったらしいんだ。父さんと母さんは仲直りできたのか知らんが、その時の話は父さんが聞かせてくれたことがないんだよ。なんか悲しい話のような気がする。」説明しつつ、電車の窓を眺めた。「でも相談してくれてありがとう。俺はお前の言ったことを忘れない」

「ううん、大丈夫」藤沢さんが頭を振った。

「それで、お前の友達を作るクエストどうなってる?」

「えー?それは...... ムズイ。そもそも友達を作る方法あるの?」

「ごめん、俺にもわからん......」

「へー、外向的な人だと思ってたのに」

「そういうわけないだろうが」

その後、俺たちは二人で電車を出た。

帰り道、夕日を浴びている藤沢さんの後ろ姿を見ながら歩いていた。やはり藤沢さんは強い人だった。

「樹木くんは私の初めての友達だよね?」女が確かめて聞いた。俺は何も言えずにぐっと歩くのをやめた。前から俺は、友達なんかいなかった。まあ、おじさんなら友達だと思ったけど。

「俺たちもうこの環境につながっていき、おじさんの願いを果たすには仲良くしなければならない。当然友達だと思う」と考えて決めた。

「そうだね...... これからもよろしく」藤沢さんが振り向いて悲しく笑った。そして再び歩き始めた。

俺は家に着いた。玄関の前にお母さんがいた。

「ただいま」と囁きつつ、靴を脱いで上がった。暗い玄関で騒がしい怒鳴り声を聞いた。お父さんとお母さんの過去...... 知りたい。リビングに入ると、お父さんとお母さんがテーブルを挟んで座っていた。二人が同時にこっちを見た。二人の目の下に隈ができていた。昨日より疲れてるように見えた。二人は喧嘩してたみたい。

「おかえり」お父さんが低い声で言った。俺はさっき藤沢さんのアドバイスを思い出した。今言い出さないと。俺の口から言葉を出さないといけなかった。じゃないと進めることができないとなると思った。

「あのさ、父さんと母さんはなぜ喧嘩してるんだ?」

二人とも驚いた表情をした。お父さんが先に答えた。

「仕事だよ。今忙しくてイライラしているだけ。心配しないでくれ。」

「嘘だ。」

俺は首を横に振った。

「なんのこと?」お母さんが眉をひそめた。お父さんもお母さんの真似をして俺を見つめた。

「父さんと母さんは喧嘩するほど仲が良いって知ってるかよ!俺は」

「お前は一体何を言ってる?」お母さんが怖い声で答えた。「永阿、何も知らないから気にしないで」

「じゃあ俺に嘘をつくなよ!喧嘩してる理由をちゃんと言ってよ!」俺はがっくり悲鳴を上げてしまった。

「そこまでだ。ちょっとパパと出かけないか?」

「松くん!」

「安心してくれ、林。息子と散歩してくるだけだ」お父さんが言って立った。「行こうぜ」

寒い夜にお父さんと家から出た。上着を着て手に息を吐いた。たくさん電柱が並んでて近くのコンビニの明かりが見えた。町の瞬きは、きれいだった。

「んで、学校どうだった?」お父さんが聞いて目をつぶった。

「まあまあ、と思うけど」

「なんだ?いじめられているならパパがいじめっ子をぶっ殺してやるぞ。」

「そんなわけねえだろう」と返事して目を逸らした。お父さんにおじさんたちのことを話してみようかなと考えた。しかし、俺はやっぱりできなかった。

「好きな人いるか?」お父さんが突然質問した。

「いないって当たり前」と即答した。

「そうなのか?ママはいるって言ったけど」

「お母さんは嘘ついてる」

「嘘つきが嫌いなんだよなー?」お父さんが肩をすくめた。「最近どうした?いきなり叫んでて」

言わなきゃ。藤沢さんの言ったことを。俺は自分の胸をつかんで言えた。

「お父さんとお母さんが喧嘩してること俺が嫌い。」

「ごめんなさい」お父さんが謝った。

「何で謝るんだ?」

「だって息子が苦しんでいるじゃないか。お前は本当に優しい子だから……」

お父さんの目の下の隈を見て、申し訳ない気持ちになった。

「違う。」

「ん?」

「俺は優しくなんかない。」

「いや、息子は優しい子だ。」

「違う。俺が優しかったら……

こんな風にならなかったんだよ。」

俺は泣き出した。お父さんが俺の頭を撫でた。涙がだんだん流れて止まらなかった。よく考えると、初めて普通に彼と話した。

「永阿、いつかすべてを説明してあげるから泣かないでくれ」

家に帰って来た。リビングに入っていくと、お母さんが料理をしていた。

お父さんはソファーに座ってテレビを見ていた。

俺は台所に行って、何か手伝うことはないか聞いた。

俺が泣いていたせいで、お母さんは振り返って俺の頬を触った。そして悲しい笑顔を見せた。

果たしたい現実とは遠かった。


七話:南北

学校のときだった。昼休み中に俺は廊下を食堂まで歩きながら藤沢さんを見つけた。でもその女は一人じゃなかった。他の女子生徒たちと会話してて俺は何も言わず壁に隠れようとした。さすが、藤沢さん。こんなスピードで友達ができたなんてすごいと思った。だが、完璧にストーカーじゃないかと思ってしまった。

そして授業の終わりに教室から出た。また藤沢さん以外の女子生徒たちを見た。俺は気になって追いかけることにした。あの三人が校庭に集まってきた。俺はこそこそと耳を澄ました。

「その女、藤沢藤華だっけ?まじでむかつく。アクセントを聞いたら南からの子だとはっきりわかるよねー」

真ん中の女が言った。俺の体が震えた気がした。

「確かに、あいつのせいで私たちのグループもめっちゃめちゃだよ。」

「ほんとそれ。私、あの子としゃべらないことにしたんだ。」

我慢できなかった。もしかしたら噂を言いふらされれば...... 邪魔するのかと考えてた。でも、このグループの環境もわからなかったから邪魔しちゃだめだとも考えてた。藤沢さんがその警備員たちに言ったのを思い出した。決めた途端、俺はあの三人に歩こうとした。

「噂話をやめろ」と言って壁から出て行った。「藤沢さんのこと」

「へ?誰だ?藤沢のホワイトナイトか?」

「いや、俺は」

「邪魔しないで欲しい、ボッチ野郎。」

「ボッチ野郎?......」俺は拳をあげたくて頭を振った。「お前らって本当の友達じゃない。」

真ん中の女は怖い目つきで俺の方へ来た。「よく聞けよ、あんた。友達っていう概念はなんだ?話しかけたから友達?仲が良いから友達?全部自分に嘘をついてるだけなんだ」

「!!」と俺は黙っていた。確かに、友達は何も知らなかった。俺は腹が立って殴ろうとする気がした。

「はぁ?」誰かの声を聞いた。

そのとき、誰かが後ろに立っていた。振り向いた瞬間、俺は凍りついたように動けなくなった。

そこには、藤沢さんがいた。彼女は、俺の背中に手を当てて首を横に振る。やめてというサインだった。俺はただ呆然としていた。

「ずいぶん楽しんでるわね」藤沢さんが眉をひそめて腕を組んだ。

「何⁉一体いつから聞いてんの?」他の女子生徒が言った。

藤沢さんがため息を吐いた。「最初から」

「は?じゃあこいつが藤沢のホワイトナイトか?」

「そうよ」藤沢さんが俺の肩を持って、後ろに押してくれた。「優しい人はホワイトナイトって意味だとしたら、それはいいんだ」

「あのさ、南の女と彼女のホワイトナイトってこのエリアで要らねえつーの」

「南から来た人々なんて問題ある?北とか南とかなど、どうでもいい。」

猫カフェのときに俺が言ったセリフを聞いた。

「何それ?」

「私はあなたたちに興味がないという意味。だから、もう関わらないでほしいの。」

藤沢さんが彼女たちに背を向けた。

「はぁ?調子に乗るなよ!」

「これ以上しつこくすると、先生に言うぞ」藤沢さんが言った。

「え?そんなことできるはずないじゃん」

「本当に、君たちの方こそ、私に構うと面倒になるから。」

藤沢さんの口調が強くなった。理屈も高めた。

「ふん。」と女子生徒らは鼻で笑って去っていった。俺は何もできず呆然のままで見つめた。だっせえな、俺。

「ごめん」としか言わなかった。「邪魔してしまって」

「別にかまへんさ、あの女たちはあくまで悪人やから......」重苦しい笑顔をして笑った。「授業始まるよ。急いで」

「大丈夫か?......」真面目に言った。その笑顔は、お母さんみたいだった。

「教室に戻ってって」

誰かの関係を邪魔するなんて、きっと災厄だった。なのに俺が邪魔をしてしまった。本当に追いかけなきゃよかったのだろうか。

「おじさん、ちょっと質問する」

「ん?なんや?」

放課後俺は病院に行って聞いた。今日の事件を相談する必要があった。昨日の話、アドバイスをくれた藤沢さんが相談してくれたが俺は相談してあげられなかった。

「どうやって友達を作るの?」

「やっぱできんか、藤華が?」

「え?知ってる?」

「そのもんを書いたときに、藤華に気づいてほしいのは友達を作ることがムズイ」おじさんがベッドで直立して答えた。

「なんだと?どういう意味だよ、失敗して欲しかったのか」

「ちゃうちゃう。学校で、友達をぐっと作り上げられるけど、人間のマスクが徐々に割れてその友情が崩れるもんや。」

「そっか......」

俺は、さっきからの女子生徒たちが頭に浮かんだ。まじめそうだった。いきなり、引き戸の近くで音がどすっとした。

「誰?」

「多分看護師さんが間違ったドアを開けようとしたのかな。」

「さっきの話だけど、あくまで藤沢さんには友達が必要なのか?」

「重要なのはな、友達の数ではなく質であるってことやで。この酷い世界には、一つの親友でもしかいないならそれで十分やろう?」

「でも、その人に最初から友達がいないならどうすればいい?まず何となく友達を作るわけにいかないよな?」

「それは厳しい人やな。最初の親友は必ず、両親。そして、周りの人。」

俺が顔をあげて宣言した。「これは学校の規模だ。藤沢さんは」

「藤華は少年にとってどういう存在なのかい?」とおじさんが即答した。

「藤沢さんは……強い人だと思うが、よくわからない」と俺は首を横に振った。「おじさんはきっとわかってるから、多分俺は違う」

「いや、正直俺は自分の娘あまり知ってない」

「へえ⁈」すごく驚いて下がった。「どういうこと?」

「長年この病院に入院、家族は全員南に住んとるな。やから気に入っとる。藤華の興味とか、好きな男子いるとか、好きな食べ物とか、本当に何も知らない」頭を振って言い続けた。「娘の小さい頃から会えなかったけど、今はできる。ずっと前から会いたかった。俺は父やから......」

「そういうのが欲しがってるならもっと時間を過ごせば喜ぶんだろう!何をしている?」大きな声で答えた。

「高校生活は大事なもんやろう?俺は藤華の勉強と友情の邪魔になる。最初からこのベッドを離れられへん」

「た、確かに...... それでも」

「人生は一度きり。俺の娘は親友の少年と遊んだ方がええ、彼女は少年のことを大事にしとるからさ。明日は今年の花火祭りやから、藤華を連れてきいひん?」

「できるけど...... 後夜祭は絶対におじさんも見舞いたい。約束だ。」

「おっけー、少年。それなら少年の両親も会いたいな」

俺はお辞儀した。「ああ、相談してくれてありがとう。おじさんのアドバイスを藤沢さんに伝えとく。だが、両親は一緒に花火祭りに来たくないかも」

「本当に愛し合ってたら、さあな。覚えとけ、少年。人生っていつか終わるもんや」

「木々は幾星霜生えてるけど、いつか木の葉や枝が枯れて死ぬ」と俺が即答した。もちろん忘れるわけないだろう。「それじゃあ、失礼します」

おじさんが俺の即答に柔らかく微笑んだ。藤沢さんの柔らかな笑顔に似てた。すると、テーブルの薬の数が変わらなかったのに気づいた。

もう夜だった。俺は藤電車に立ち寄ることにした。藤沢さんがいたら今度こそは、相談してあげると考えた。暗くて誰にもいなさそうに見えなかった。

「しぃ!ちょっときい」と声が出た。誰かが俺の手を握って引っ張った。またベンチの下に静かに倒れた。そして、電車のドアを開ける音が聞こえた。

「この古いやつが病院の敷地だから早く審査したほうがいい」警備員さんが言いつつ藤電車を入った。

「いや、もはや病院のトップによるとスクラップする予定があるって。じゃが、問題はこっちの藤。」

「燃やせばどう思う?」

「早く審査して帰ろう。時間の無駄」

しばらくすると警備員さんたちがもっと話し合ってから去っていった。俺たちは互いにため息をついて立った。

「藤沢さん?」

「藤華だ」長い髪を直しながら言い出した。「あいつらよくここに来てるの?」

「ああ、時々だが」俺は藤沢さんの顔を見た。制服に涙の染みがあって藤沢さんがすすり泣いたそうだった。じっと見た。

「何?何か私の顔に?」

「いや。本当に大丈夫?」

「.......」藤沢さんは少し黙って静かな夜にかけた。「大丈夫じゃない、かな」

「そっか、今日はな」

「なんでもないや。私に聞くためにここに来たんでしょう?さあ、なんや?」

「え?」話題が変わったのに気づかなかった。「じゃ明日の花火祭り、俺と付き合ってもらえないか?」

「はぁ?デートやないかそれ」藤沢さんが心外な表現をして答えた。

「少しの間聞いてよ。おじさんが欲しいものだ。でも俺にはどうしても構わないものさ、俺たち友達だろう?おじさんのために、何でもやるから」

「うん、せえやけど。」藤沢さんは考えてる顔をして言い出した「決めた。行くわよ。」

「よっし。連絡を交換して詳しく教えとく」俺は自分の携帯を出してつけた。藤沢さんも出した。

「わかった。ねぇ、樹木くん......」と藤沢さんが声をかけた。俺が振り向くとフレーズを聞こえた。「付き合ってもらっておおきに。」

知らない言葉だった。「なんだ?おおきにってなんだ?」

藤沢さんがそっと笑って「ううん、辞書を引きなさい」

「なんでだよ、方言教えろよ」

そして、花火祭りの準備を始めた。


八話:花火祭りのフィナーレ

花火祭りの日だった。俺はどう準備をしたらいいのかわからなかった。久しぶりに花火祭りに行くつもりだったから、小さいころ両親と参加したことがあった。今夜、リビングに入って両親を見た。誘ってみようと考えた。

「なぁ、今日は花火祭りだろう」

「その服、行きたいのか」とお父さんが返事をした。お母さんも気になった。

「あなたの息子と行けばどうかしら?」

「構わんさ行く」

「いや、お母さんも行ってくれない?」俺は即答した。携帯を持ちながら音がした。藤沢さんが開催地に着いたようだった。

お母さんが驚いた顔をして「いいえいいえ、とっちゃんのお父さんなら大丈夫よ」

「いや、一緒に全員行こう」俺はもう決めた。この喧嘩してるままでいや。「幼稚園のときから全然行ってないから」

少し時間がかかったが、両親が一緒に行くのは納得できた。

祭りの入場に近づいて藤沢さんと藤沢さんの母と会った。俺が手を振って彼女たちは気づいた。

「この二人、誰だ?」俺のお父さんが聞いた。「まさか学校で」

「あら、私の娘の友達の両親でしょうか?こんばんは、藤沢ゆえと申します。」

「えっと、どうも。樹木松です。よろしくお願いします。」とお辞儀した。お母さんも同じようにする。

「樹木林です。藤沢さんの娘はうちの息子の友達だと知りませんでした」

「まあ、最近南から引っ越しましたから」

「南からですか?」お父さんが大きな声で即答しちゃった。俺は彼の胸をそっと殴った。「いや、なんでもないです。とりあえず花火祭りに行きましょう」

空気を読んで俺と藤沢さんがたった二人になった。まさか藤沢さんの母がいたから両親がやっと仲良くしてるわけ?あいつにせっかくのチャンスだった。

藤沢さんは、はなあさぎ着物を着て黒い髪を丸く束ねていた。俺、もっとおしゃれな服を着た方がいいのか考えた。まあいっか。

「似合うな」と俺は言った。

「ありがとう」

「ところで、何をしたい?」

「わからへん......」

これは久しぶりに祭りに行くのはせっかくだったから何か選ばなきゃ。おじさんのために。一番面白いのは射的ゲームだったから、一緒にやることにした。

俺たちは列に並んで順番が来るまで待っていた。その間、俺は何を話したらいいか考えつかなかった。

「樹木くんは、どうしてここに来たの?」藤沢さんが聞き出した。

「いや……別に」

「じゃあ、何が欲しいの?」

「あのぬいぐるみかな」指さしたのは猫ぬいぐるみだった。藤沢さんはすぐにキラキラな目つきでわうっとした。

「私も欲しい。」

「じゃ俺がやるか」

「自分でやろうよ」

キツイ。

でも、俺はお金を払って銃を持って構えた。狙いを定めて撃った。弾は外れた。

「下手やね」と藤沢さんがバカにしたように笑った。

「うるさい!」俺も負けずに怒った。もう一度狙って撃ったが、また外した。三回繰り返したが、全部ダメだった。

「あーもう」

「ふふん」藤沢さんが余裕で俺を見下ろしてた。彼女は一発で撃った。引き金を引いたら、弾が当たった。「やった!当たった」

「うわ、すごいじゃん」俺は目をパチクリしながら拍手した。

「こんなゲーム南に住んでいたときたくさんやったことあるやで」

俺は嬉しくなって喜んだ。だがこいつ......

「ほれ、何も撃てない樹木くん」猫ぬいぐるみを見せびらかしながら抱きしめた。

「むかつく……」俺は悔しくて歯を食いしばりながら、互いに他のゲームをやってみることにした。ぼんやりとすると金魚すくい、千本引き、たこ焼き屋など。しばらくして、仮面を買うのに俺はポケットに手を入れた。でも財布にお金がなかった。「あれ?」

「はいこれ」藤沢さんが自分の財布を渡してきた。俺は受け取って中を見ると、五千円札があった。

「いいのか?」

「いいから仮面を二つ買いなさい」

買った仮面を頭の横にかぶりながら閑散としていた通りを歩いた。気まずくなって恥ずかしがってる表現だけをした。大勢の人の周りにいると、俺は疲れることだった。

「これはええか」と藤沢さんが言い出した。「私の父を除いてこんなに楽しんでるなんて」

「お前の親父の頼みだ。祭りのあとに見舞う」俺は青空を見つめて返事をした。「俺も心配してるから」

「ならどうしてあなたと私なの?」

「......」しばらく黙ってた。どう言えばいいのか考えた。「学校の事件、本当にお前にとって悔しかったんだろう?実は、その事件のことを伝えた。そして宣言したのはおじさんだった。」

「……」

「つまるところ、この先どんなことが起ころうとも、たった一つの友情でもある限り自分が決して挫けないってことなんだ」

「そう……それはよかった」と藤沢さんが安心したように答えた。「でもその言い方で哲学っぽいやん」

俺は彼女の表情を見て、心が痛くなった。

「すまん、俺もちょっと後悔してる」まさか変なこと言ったのだろうと思ってた。行き止まりに近づくと、森が見えた。美しい木々が並んでてすぐにおじさんに教わってもらった樹種を思い出した。

俺は木々を指さした。藤沢さんも不思議そうな顔で見上げた。暗い景色で花がほのぼのとしてきた。彼女は息をついて目をつぶった。

「初めて出会ってから言いたいことあってさ」

「何?」

「私とお母さん、実際お父さんが亡くなったら南に帰る」

ついに『当座のところ』ってようやく俺は理解してきた。一つしか出なかった。

「なんだと?なんで簡単に言えるかよ?......」

「信じたくないよ!私はお父さんが死んでいくなんて聞きたない」と言い出すと、藤沢さんは猫ぬいぐるみを強く抱きしめた。「彼が末期患者だと聞いたとき私はどう思った?有り得ないって当たり前やろう?」

互いに向き合った。沈黙した俺たちは、自分の肩に寄りかかった。

「怖いよ。誰かの死亡って怖いのよ。」

「俺もそうだ...... だから俺は何も言えない。おじさんに死んでほしくない。でも......」俺は泣きそうな顔で藤沢さんを見た。「ごめんなさい。お前とおじさんの邪魔になってしまってごめんなさい。俺が病院に行かなかったら、もっと時間を過ごせる。父子としてもっと知り合ったり仲良くしたり、遊んだりすることができるかもしれない。」

ぱっと明るい閃光が空に飛んでいた。それから火花は延々と続いて、夜に爆発してきた。

藤沢さんは俺の手を握ってきた。

花火を見上げてた。

でも、俺は藤沢さんの手を握り返せなかった。

俺には、おじさんを救う方法がなさそうだった。

どうすればいいか、わからなかった。

藤沢さんも俺と同じ気持ちだった。ただ、何も言わずに、二人でずっと眺めた。キラキラしている花火が本当に花の様子だった。俺たちはずっとそのままで立っていた。藤沢さんが俺に何か話しかけようとしたけど、俺は口を閉じたままで、話そうとしなかった。藤沢さんも同じように黙っていた。

俺はふと思った。今こそ、あの時言おうとしたことを言うべきじゃないかって。

俺は勇気を出して、口を開いてみた。だが、藤沢さんが先に近寄った。

「私はちゃんと考えると、あなたと出会ってからクエストを果たせたの。」と花火の音がしつつ囁いた。

後夜祭、俺たちは入場で両親たちと落ち合った。お父さんとお母さんが穏やかな行動をしてるのに俺は驚いた。

「ずいぶんと仲良くしてる」俺がコメントして言った。

「仲良くしてるってどうだろうな」と即答したお父さんがお母さんを見た。

「ちょっと行きたい場所がある」俺は藤沢さんの母に聞いて「藤沢さんのお父さんを見舞ってよろしいでしょうか」

母はびくっと「見舞い?」

「ええ、色々お世話になりましたからできるかな」

「もちろんだよ...... 行ける」

みんなは納得して五人で病院に行くことにした。着いた途端に、受付の受付係が疲れてる様子だったみたい。この時間まで働いてるのは当然だと思った。藤沢さんの母が先に言った。

「藤沢木蓮にお見舞いです」

「ふ、藤沢木蓮ですか?......」と受付係さんが深刻な表現をしながら呟いた。

「何かありまっか?」藤沢さんのお母さんが訪ねて「私の夫に何か起きましたですか?」

俺たちはおじさんの病室に急いで走った。引き戸を開けると、他の看護師さんたちがいた。そして、ベッドでうたた寝をしてるおじさんがいた。

「どうしまっか?木蓮!」

「お父さん!......」

「おじさん?......」

俺は信じたくなかった。ちょっと下がって叫びを出してしまった。看護師さんたちはただ、心配そうな顔で俺たちを見つめていた。信じられなかった。俺はクエストを果たさなかったのに、おじさんが......

「うそだろ……」

「あなたもそんなこと言わないで!木蓮!」

藤沢さんの母は涙を堪えながらおじさんを見つめた。おじさんは目を閉じたまま、呼吸してなかった。もう、おじさんの息は止まってしまったのだ。

俺は、おじさんに近づいて彼の手を握った。彼は氷のように体が冷たかった。「おじさん……」

「君たち、一体どうしてここに来たんだ?」と医者が聞いた。

「私たち、木蓮さんのお見舞いに来たんです」とお母さんが答えた。

「ああ、そうか。じゃあ、ちょうどよかった」と医者が言って「藤沢木蓮は、ついさっき亡くなったよ」

「えっ?」と藤沢さんの母が聞いた。

「うん、死因は心臓発作だね。最近、薬を飲み忘れたからだと思う。」と説明をした。

藤沢さんは声を上げて涙が出て行った。猫ぬいぐるみを抱きしめたまま、ベッドに崩れて泣いた。俺は彼女の隣に立った。

おじさんが、死んだ。


九話:くれたもの

数日間、自分の部屋に閉じこもった。暗い部屋でパソコンの薄明かりが光りつつ、おじさんの挑戦状を見つめた。藤沢さんに返せなくなった。頼まれてたのに...... 

俺は約束を破った。おじさんに嘘をついた。

葬儀を営んだ日が来て、参列した。葬式に参列した人はたくさんいて、俺はみんなの後ろに立っていた。お香典にもあげられなくなった。

部屋の外から両親の怒鳴り声が聞こえた。また喧嘩してるか、と。やっぱりクエストを果たせなかった。

「なんだと?あなたの娘が消えたって⁈」

喧嘩の音じゃなかった。いきなりペタペタと誰かがドアを開けた。

「おい、息子!藤沢さんからお前の友達が消えたぞ!」

「い、いなくなったってことか?......」しわくちゃな毛布の下でまばゆい光に目がくらんだ。そして、力づけられた気がした。おじさんの言ったこと。やる気のエネルギーが足りようとも、体力を強要した。

お母さんも部屋に入って「そうだよ。捜索が-」

「俺が行く。」

「へ?」

「俺が探しに行くわけには行かねえんだよ」

ノートを掴みながら布団から飛び出した。謝らなきゃいけなかった。探さなきゃいけなかった。

「ちょっと、とっちゃん!」

「待ってろ、林」お父さんが手をお母さんの肩に置いて「こんなにあの女のこと心配するなんてお前と俺の彷彿だな」

「彷彿って余計だと思うわ。半分の私、半分のまっくんは、とっちゃんだからね」

ようやく両親のいきさつが聞こえた。でも、俺はさっさと着替えて玄関で靴を履いて出かけた。おじさんは彼の娘に幸せになって欲しかった。だがその一方俺は懲りないやつだった。

涙が夜明けの風にぶらりと走った。俺は走り回りながら、同じような街並みがただ通り過ぎた。いつもの賑やかな八百屋、学校で見張っている門番さん、スーパーの明るいネオンサイン。病院のところに着いたときに、藤電車が見えると思った。だけど、目の前で繰り広げられる現況が違った。大型のクレーンがあった。クレーンは藤電車を鉤に引っかけて持ち上げた。

俺はがっくりと膝をついて倒れた。ゼイゼイ着いたのに、藤電車がスクラップされてた。すべての記憶を、絶対に忘れることはないと考えて精一杯走り続けた。

「藤華!どこにいるんだ⁈」悲鳴を上げて走った。そうだった。ここは俺の故郷だったから、彼女の所在を考えようとした。

探し回った。彼女は見つからないまま、時間が過ぎていった。

朝日が踊った時、俺の心は絶望に陥った。疲れ果てた。そして、猫カフェの看板が輝いた。まさか、という予感がした。

一人でビルに入ると、息を吞んで喘ぎ声で言った。

「いらっしゃいませ!何名様ですかー」

「予約した、藤沢です」

「あ、七時ですか?今度こそお客様の彼女を待たせないでくださいねー」

テーブルに案内した途端に、藤華を見た。

「藤華!」俺は叫んで近寄った。隣の席にぱっと座った。足と胸が痛かった。

「樹木くん?......」

「ごめんなさい」

「どうして?」

「お前のお父さんに頼まれたことなのに、クエスト失敗したんだ」悲しく即答した。俺はおじさんの挑戦状を出して彼女に手渡した。

「ああ……」と藤華は目を閉じながらうなずいて「でもありがとう。私に謝る必要はあらへん。」

「......」

「だって、私はずっと前から君のこと知ってたんやもん」と猫を撫でて言い出した。

「……どういう意味だ?」

「樹木くんが、私のおじさんに会っていたことを知っていたんや」

「えっ?」

「お父さんが亡くなる前に話してくれたよ。彼は私にこう言ったの……『この子は菊のような人やろう』って手紙で書いてあったの。だから、安心してたのに……なんでこんなことになったのかしらね」悲しそうな顔を嚙み殺しがら微笑んだ。

「そんな…… 俺はそんなに正直者ではない」俺は自分を責めた。

「ねえ、聞いてくれるか?」と彼女が言って「私とお母さん、明日南に引っ越して戻っていく」

「それは...... わかってる」俺は泣き出した。「わかってるが、悔しい。おじさんが藤華と会いたくて知り合いたくて、でもふと死んだ......」

「木々は幾星霜生えとるけど、いつかその木々が枯れて死ぬ」同じセリフを言いながら俺をじっと見た。「お父さんは樹木学のことがすごーく好きだったから、きっと樹木くんにも教えてもらった。多分そういうのは、私たちに伝えてほしかった」

「そうだよな。」俺はすすり泣いた。

「もう泣く必要はないよ。」彼女は頭を振って言った。「お父さんが死んでも、お母さんがいるし、それに……」

「そして?」

「私もあなたのそばにいる」と俺を見つめて優しく抱きしめた。「友達やから」

「藤華......」俺は感動した。俺に話しかけてくれて嬉しかった。俺に構ってくれて嬉しかった。初めて普通に友達になってくれて嬉しかった。

「藤華と呼んでくれてありがとう、樹木くんと呼ばずに名前だけで呼んであげるわ」と涙が流れ落ちた。

「うん、でもほらお前も泣いてるんじゃん......」俺は顔を拭いて言い続けた。「困った時はお互い様。今まで、色々ありがとうございました。」

藤華はおじさんのノートを見つめてから「ううん。何か食べよう」と言ってメニューを開いた。

「あと、お前のお母さんに謝ろう。終日探してたから迷惑をかけたんだ」

「わかったわかった」

食事中、俺達はずっと黙り込んだままだった。今日は、藤華との最終日だった。そして、藤沢家にさようなら。だって、俺は家で自分の争いを解かないと。

「さようなら、藤華。」

「うん、こちらこそ。いつかまた会おうね」

猫カフェを出てから、別々の方向を歩いた。学校を完璧にサボったから、近道で家に帰ることにした。でも、俺の心は晴れなかった。そして、自分の部屋に入った途端に、ベッドの上に寝転んだ。そして、目を閉じて、夢の中に入り込んで行った……

その時、ドアが開いて誰かが入ってきた。誰だろうと思って目を開けると、そこには俺のお母さんが立っていた。

彼女の顔は、いつもよりさらに心配な表現。お母さんは俺の顔を見て、俺の心を読んだ。

「とっちゃん。あの、喧嘩するのはいやだって言ってるから、パパと合意に納得できた。」

「今から、俺たちは仲良くしてみる。どうせ先行きにわからないが、さらに俺たち互いに息子の泣く姿を見たくない。」お父さんも現れた。俺は二人を見た。二人は肩を並べて歩いてきた。

「俺はお前たちに言いたいことがある」

「何を言うつもりだ?」お父さんが聞いた。

「俺はお前たちと一緒に暮らすために努力する。しかし、お前たちは、俺がお前たちのそばにいることを許してくれるか?もし許してくれるなら、俺はお前たちとずっと一緒にいるぞ。」

「いいよ」とお母さんはうなずいて「でも、とっちゃんは私たちのことを思ってくれるから、私たちはとっちゃんのことを大切に思う。だから…… 逆だわ。私たちはとっちゃんの将来のために養ってる。」

「そうだよ」お父さんが同意した。「パパに任せとけ!」

俺はしばらく黙ってから「わかった」と言った。そして、「これからよろしくお願いします。」と頭を下げて言った。

「ああ、こちらこそ。」とお父さんが答えた。おじさんがいたら、現況を見たらどう思うのかと考えた。これって、仲直り?いや、仲直りって遥かにあるはずだった。それでも、俺の心は軽く晴れた。


十話:君のいる南へ

藤華が引っ越して数年後、俺は決断をした。

揺られている電車の中で、その古き良き日々を思い出した。夕闇の曇り空を窓の外から眺めて俺は自分の息白しが見えてきた。電車がトンネルを通過しつつ、窓で鏡のように俺の反射を見た。どれだけ俺の姿が変わろうとも、きっと両親なら眼鏡と丈の長いコートを見抜けるかと笑った。そして、電車がとうとう到着した。俺は、南に着いた。

小雨が降りながら駅を出て傘をさした。商店街の様々な店舗が近海とずらっと並ばれて豪華な風景だった。錆びたアーチ橋の捨てた自転車を見つめて歩いた。北同様に幾重にも高いビルが摩天楼っぽい、一体なんで南北差別が存在してるのかと考えた。俺は雑踏の道をぶらぶらすると、水溜りに波紋が描いてきた。雨と海水の匂いが同時に俺の鼻に入ってて不思議な匂いだった。打ち寄せる波とありがちな方言などに聞き入りつつ、俺は携帯をつけた。

最近のところ、藤華から俺にメッセージが届いてもらった。住所じゃなく、久しぶりに挨拶的なメッセージでもなく、店舗名だった。スタスタしたまま、お店の名前を確かめてサインを見た。『ニャーニャー屋』、いささか藤華っぽい。

お店の扉を押し開けると、店員さんの声が聞こえてきた。

「いらっしゃーい」

「あ、こんにちは。」俺は返事をして店内に入った。

「えっ!?」と彼女は驚いた。「樹木永阿くん!久しぶりね、元気?」

俺は頷いて「うん、元気だ。結婚おめでとうな」と腕を組んで立った。

「ありがとう!アーノ!永阿が来たで!」と嬉しく微笑んで声をかけた。キッチンから夫と子が出た。店内をよく見ると、居間スタイルで飾られていた。だが、天井を見ると、ぶらりと長い電球が藤の枝と花の様子だった。

「どうも。原田アドリアーノです。よろしくな」首を掻いて紹介した。

「こちらこそ、俺は樹木永阿と申します。いきなりですが、あなたはブラジルの方でしょうかね?」

「パパイ、この人カッコいいやで!」突然その子が言った。まあ、おしゃれな服だったのか。樹木学者の服はガッコよかったのかと。原田が恥ずかしそうに返事をした。

「それはそうですな。樹木さんは前から藤華と知り合ってるらしい」

「うん、北にいた時さ。ところで、こっちの子は、あなたたちの子供ですか?」

「はい、六歳です。名前はフロレ」

俺は笑ってフロレに跪いて「よろしく、少年。きっと藤華はいい母だね」

「あの、お兄さん...... テレビの探偵なの?その服覚えてるから!」

「いや、俺は...... 樹木学者だよ」俺は堂々と立って即答した。

「樹木学者って何?それカッコいいの?」

「探偵よりもカッコいい。よく聞いてくれ、少年。樹木学とは木々を勉強することだ」と説明して宣言した。おじさんが教え込んだもののおかげで大学で何となく専攻していた。説明しながら誰かが俺の頭を叩いた。

「はいはい、いい加減にしなさい。早く注文してね」藤華は笑顔で叱ってから、俺はさっさと猫と席に座った。

「私がお会計払います」と原田さんも隣の席に座った。

「いえいえ、あなたは藤華の親友ですので、奢らせてください」

「そう言うなら...... じゃ一番高いパンケーキお願いします」

「一番高いパンケーキ!」

「かしこまりましたけど、夜のパンケーキってほんま?」

注文した食べ物が来て、パンケーキの様子はなんか...... ミニキャットタワー。食べながら、原田さんが言い出して聞いた。

「それで、どうやって藤華と知り合ったんですか?」

俺は窓から漁港の灯台を眺めてから原田さんを見た。パンケーキは美味しすぎた。

「俺は藤華の親父と仲良くしてた」

「ちょっとたくさんのことがあったんやけど、今でもいい記憶やったと思う」と藤華も言った。

「そうですか?親父の仏壇ありますよ」

「本当?連れて行ってもらえませんか?」

原田さんは納得した様子だった。食べ終わった途端、俺たちはすぐに仏壇のところに行った。みんなは静かになった。

座禅をしてから俺は伝統に従った。

そしておじさんの写真を見て少し悲しかった。彼の死と向き合った原田さんも辛かっただろう。しかし、写真の中の彼はとても幸せそうな表情で、まるで今生きているみたいだった。俺は手を合わせて祈った。

「どうか安らかに眠れますように」

おじさん、俺は将来に目を向けることにした。どれだけ争いがあっても、命が進むことだった。藤華と、みんなと一緒にいるんだったから。俺は藤のように両親を愛してた。俺は菊のように我慢できた。

「そういえば、変な場所で藤華と出会ったらしいですね」原田さんがフロレと一緒に立った。二人とも俺に話しかけてくれて嬉しかった。

「んん?変な場所?いや、素敵な場所でした」と俺は優しく微笑んだ。「その場所は、電車の大木。」


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