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37. 覚醒計画 サード

(;゜Д゜):アホの顔

 その後も川瀬先輩とおしゃべりしながら軽くパス練習をしていると、木谷キャプテンから号令が掛かった。体育の授業でも見たことないほどの俊敏さで部員が集合すると、いつも通りの挨拶に加えて少しだけ昨日の大会についても触れられた。



「えー。まずは昨日、一昨日と四国大会に出場していたわけですが、結果は惜しくも準優勝でした。試合に出場した皆さん、お疲れ様でした。そして応援して下さった皆さん、ありがとうございました。私たちはこの結果を真摯に受け止め、また新たなる日々を精進していきましょう。それでは今日の練習を始めます。よろしくお願いします。」


『よろしくお願いしますっ!!!』



 ……いつも以上の迫力でもって放課後練習は始まったのだが、やる事は変わらずいつも通りランニングをしていつも通りストレッチを終えた。そしてさあ次の練習メニューに移ろうかという時に、一時休憩と称して木谷キャプテンが四国大会出場メンバーを集めた。



「さっきも言ったが、まずは皆四国大会お疲れ様。結果については新チームで挑んだにしては上出来だったと思う。…………。」



 木谷キャプテンは態々集めるほどのこともない謝辞と大会の感想を聞かせてくれた。長いしさっきも聞いたから割愛。


 真面目な顔をしつつ木谷キャプテンの奥に見える人物を観察する。次に声を掛けようと思っている子だ。俺と同じく新入生のサッカー未経験者で、多分前は空手をやっていた子。本入部した時のシュート練習で前蹴りを披露した子でもある。目をつけた時と殆ど変わらずどこか武道の癖が残ったプレースタイルで、動きにくそうだ。しかし()は良い。動体視力と受け身に回った際の立ち回り、そして短距離走の速さ。あとは経験さえ積めば、といったところか。




 キャプテンの話が終わった。時間にして3分弱、やっぱり集める必要無かったよね。木谷キャプテンの横を通り過ぎて、元空手男子に声を掛けた。



「やあ、ちょっと良いかな?」


「ダメ!!」


「ならいいや。」


「っ、冗談だって、マジになんなよ!」


「……。」


「ごめんって。」


「……はぁ、まあいいや。あー、君はレギュラーになりたい?」


「……ん?どういうこと?」



 俺が指導してレギュラーになれるほど強くする、ということを情緒豊かに語って見せた。その結果。



「……。」



 眉を引き寄せ口を半開きにした、ボケッとした様子の顔が目の前に誕生した。ア、アホの顔だ――!




 急に罵倒して失礼。とはいえ、いつまでも練習が始まらないとも限らない。なのでさっさと話しを進めることにした。



「で、どうしたい?」


「……お前って、俺と同じで未経験者だったよな?なんでそこまで自信満々なんだよ。」


「いやまあ1ヶ月でこの部活動の誰よりも上手くなったからね、俺。」


「おまえやばあ……。」



 目の前の少年は再びアホ顔ダブルピースをキメた(キメてない)。



「先に君を強くするプランを説明するから、それを聞いた後で実際に俺に指導を委任するかどうか決めてくれていいよ。」



 ポケットから指導メニューを書いた紙を取り出し、空手少年に渡す。



「そこに書いてある内容から分かる通り、俺は君にディフェンダーとして活躍して欲しいと考えている。」


「……ん、あぁ。」


「理由は主に3つ。1つ目は、未だに君がボールの扱いに慣れていない所為でドリブル等の直接ボールに絡むプレーを苦手としていること。2つ目は、君の目の良さはディフェンダーとして非常に強力な武器となること。3つ目は、単純にウチの部活で初心者が食い込むにはDFしかないこと。特に3つ目が一番重要なことだね。」


「……。」


「正直、俺がいつもGKとして試合に出られるのであればどんなシュートでも絶対に止めるからDFなんて全く必要ないんだが、実際にはそうはならない。まあ疲労や成績不振等の影響を鑑みて、なんてこともスタメン選出時に考えられるだろうからそうはならないだろうと薄々予感はしていたが、実際に四国大会で俺がGKとして出続けられないということがはっきりした。だからこそ、全国制覇にはDFの育成が急務であり、君に声を掛ける事にしたんだ。


 さて、もしも君が俺の指導を受けてくれることになったら、まず初めにすることはドリブル技の()()()を覚えてもらうことになる。理由はもちろんドリブル突破を止めるためだ。このチームはパスで最終防衛ラインを割られるよりもドリブルで正面突破される方が被得点率は高くなるというデータがある。実際に今見せることは出来ないが、気になるなら後でマネージャーからスコアシートを見せてもらえばいいだろう。とりあえずはここまでだ。」


「……。」



 ア、アホの顔だ――!(天丼)



「失礼。要するに、だ。君の素質を開花させ、部内でもトップクラスのディフェンダーに仕上げて見せよう、という表明だ。ついてこれるか?」

(;゜Д゜):アホの顔




1ヶ月という期間について、長いと思うか短いと思うかは人それぞれだと思います。

たとえば日々を精一杯生きる人にとっては、1ヶ月はとてつもなく長いと感じられることでしょう。

しかし視点を変えてみるとどうか。地球が誕生して46億年、そして人の一生はせいぜいが100年。そんな地球から見ると人の“一生”とは“一瞬”の出来事であり、“1ヶ月”なんて“一瞬も一瞬”、もはや“0”に等しいものであると捉えることができます。

さてそんな壮大な話を持ち出すからには、それ相応の大事な話がしたいのだろうと、察しの良い皆さまなら既に勘づかれていることでしょう。

それでは発表します。




特にないです。1ヶ月はさすがに長かったですね。

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― 新着の感想 ―
想像以上に面白かった。 更新待ち。
[一言] 楽しみに待ってます。
[一言] 既に2ヶ月、もうすぐ3ヶ月… おーけー…?
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