35. 覚醒計画 ファースト
運とかじゃなく実力で負けたPKでしたね。
悔しいですけど、相手が上手すぎました。
日本 vs クロアチア|決勝トーナメント1回戦|FIFA ワールドカップ カタール 2022
https://abema.tv/live-event/9c8643c5-0550-4219-8de2-6576b077f8f5
残念ながら日本のワールドカップはこれまでですけど、どの試合も本当に面白かったです。最高でした!
四国大会という小規模大会を準優勝という結果で終えた。試合に出れなかった部員や観客たちはそれでも褒め称えはしていたが、俺からすると全く納得のいく結果ではない。なぜならば俺を出していれば確実に優勝できたはずだからだ。そのことが何よりも悔しい。せめて俺を出さないなら出さないでいいから勝ってくれ。
翌日、放課後。
そろそろ舐めプもお仕舞いにしよう。確かにこれまでも全力で活動していたが、所詮部活動と考えていたことも事実だ。これからは考え方を改める必要がある。そして昨夜あれから色々考えた結果、俺には足りてないものが多すぎる。
まずはシンパ。厳密には政治用語であるが、部内政治と考えれば間違いではない。いち早く俺の考えに対する賛同者が必要だ。今の口調と遠回しすぎる発言内容のままでは俺はただの性格が悪いチャラ男になってしまう。その結果望まぬ諍いやらが起こる可能性も否定できない。さらに木谷キャプテンがやったような俺を『悪』と扱うことで場を動かすような輩が今後も現れるような予感がする。そのためには、俺の口調を早急に直すこと、発言の意図を汲み取れる存在を増やすこと、いついかなる時も俺の味方をするような人間を用意すること、の3点が必要となる。
次に、強さのアピール。キーパーをやっていると、どうせそれ以外はできないんでしょと侮られることは多々ある。これまではそれでも特に問題はなかったが、今となっては話が異なる。シンパを増やすにしても実力がなくてはお話にならないからだ。そこで俺の足下の技術やフィールドプレイヤーとしての動きを見せることで、敢えてキーパーをやっているということを周りに理解らせなければならない。
そして最後に、同僚との連携。これは前世で学んだことだが、有能だが独断専行の嫌いがある部下は体制について学び終えた後は一人でさっさと組織から抜けていった一方、有能で周囲と連携の取れている部下は組織を抜ける際に有能な人員を引き抜いてから辞めていた。辞めるまでの期間は大体同じぐらいなのに、その後独立するに際しては後者の方が圧倒的に有利である。それを考えると、有能(自画自賛)ではあるが独断専行気味の今世の俺はまさしく前者である。なのでピンポイントでしか発言しないという今の状況はよろしくない。これからは社交性マックスで生きていかなければならないだろう。……そして俺のシンパになった者だけに弱った姿を見せれば……、おっと。まあこれは他2つと違い努力目標としておこう。出来る気が微塵もしないし。
さて、早速。土日の大会を見ていた両親がもう少なくなってしまった身銭を切ってまで買ってくれたサッカーシューズを履いて部室を飛び出す。サッカーボールを蹴りながら変わってしまった足裏の感触を慣らすようにリフティングをしながらサッカーコートに向かう。途中でドリブルに切り替えて、今まで使えていた技の感覚のズレを取り除く。足裏の突起の有無や爪先の踏み込みやすさ等々の違いに粗方慣れると、今度は皮革素材との違いを慣らしていく。
そしてサッカーコートに着いた時には昨日までの自分と同じレベルにまで戻せた。こういうところがチーターのチーターたる由縁だろうな。
いつも通りリフティング先輩が黙々とリフティングをやっているので俺も真似をする……のではなく、今回は俺から声を掛けた。
「七留先輩、こんにちは。」
「……おう。」
「練習が始まるまで、ちょっと時間いいですか?」
「お前、喋り方……。」
「ん?……ああ、まあアレは昨日までですね。今日からはちょっとだけマイナーチェンジってヤツです。まあそれは置いといて。先輩ってレギュラー狙ってます?」
「……ああ、勿論だ。」
「なるほどなるほど。でも今のままじゃレギュラーに選ばれる確率が低いということも理解していますか?」
無言で俺から離れて行こうとするリフティング先輩。
「ちょちょちょ、ちょっと待ってくださいよ、先輩。確かに今の俺の言葉に棘があったのは認めますけど、だからって無視はひどいじゃないですか。こんなんでも俺は提案をしにきただけなんですから。」
「……チッ。一応聞いておこう。」
「はいはい。まあ別に良いんですけどね。ぶっちゃけた話、ウチのレギュラー陣って超弱いじゃないですか。唯一見てられるのなんてキャプテンと1年だけ。あとは皆ザコです。なんで俺、ちょっとでも全国で勝つ確率を上げようと思って才能ある人に声掛けてるんですよ、今。」
「……。」
「まあ要するにアドバイスするんでサッサと強くなってサッサとレギュラー奪って欲しいってことですね。はい。で、早速七留先輩にやって欲しいことなんですけど……。」
ふと何かを考えるかのような顔付きになったリフティング先輩は、少ししてから全く関係のないことを聞いてきた。
「……その前にだ。葉隠、お前は今まで何人に声を掛けた?」
「えっ、先輩が1人目ですけど。それがなにか?もしかして俺にアドバイスされるのが嫌とかですか?」
「……ふっ、いやイイ。確かにお前のサッカー歴は浅いがそれでも結果を残しているんだからアドバイスを貰った方が良いのは確かだろう。教えてくれ、俺は何をすれば良いのか。」
「あ、はい。……で、先輩にやって欲しいことなんですけど。先輩ってリフティングバカなだけあってボールハンドリングだけなら部内でもトップレベルなんですよ。なのでそれを活かす方向に特化して欲しいんですよね。」
「……具体的には?」
「『前線でパスを受けたらその瞬間から攻め始められる選手』が理想ですかね。今のところ七留先輩がパスを受け取ってから前を向くまでの時間って自分で把握してますか?」
「……10秒ぐらい掛かる時もあるな。」
「いや聞いてるのは平均なんですけど……。……まあいいか。で、平均なんですけど、先輩の場合は大体5秒前後ですね。数字で見ると分かり易いと思うんですけど、コレ遅すぎるんですよね。」
まあこの『5秒』という数字には、先輩自身で言ってたように10秒近く掛かった時とかの外れ値が入ってるんだけどそれは黙っておく。言わぬが花っていう便利な言葉もあるからね。ちなみに中央値は3秒強だったりする。いや、普通に遅いんかい。
「……ああ、そうだな。で、俺はどうすれば良い?」
「あー、今のところは『首振り』を中心に状況把握の練習をやって下さい。あと瞬発力を鍛える為の筋トレも欠かさないで下さい。筋トレのメニューはこれ作ったんで渡しときます。」
体操服のズボンのポケットからリフティング先輩用の筋トレメニューを書き込んだ裏紙(今日返ってきた満点の数学の小テスト)を取り出し、そのままプレゼントした。内容はスクワット系が中心。
「パサーの用意が出来次第、次の指示を出します。やるかやらないかは七留先輩次第ですけど。じゃ、俺はこれで。」
そんなこんなで5分ぐらい喋っていると川瀬先輩が部室から出て来たので会話は打ち切り。優先順位の違いってやつだ、すまんな。
カルチオ 様の 『前を向けない選手の「原因」と改善【全てのポジションに当てはまる】』 という動画を参考にさせていただきました。
https://m.youtube.com/watch?v=R72m5uYHAf8
いつも分かりやすい解説ありがとうございます。




