25. 四国大会 愛媛県予選 開幕
梅雨の時期に大会なんてやるなよと散々な文句を付けられ始める6月初旬。遂に人生初の公式大会が始まろうとしていた。
新レギュラー陣含め、控えの選手は誰一人として中間試験で赤点を取らなかったようなので全員参加。俺も社会だけは赤点ちょい上の32点だったが、それでも赤点はなしなので大手を振って参加だ。
土曜日朝5時。集合場所は学校の校門。大会参加者は学校が借りたバスに乗って会場へ向かう。そこで初めて顧問の教師に出会った。なんと、家庭科のお婆ちゃん教師だった。そりゃ練習にも来ないわな。というかサッカー人気が凄い今世なら、学校側ももっとサッカー部を盛り立てても良かろうに。上手くいかないもんだ。
バスの中では何をするでもなくとりあえず寝ることに。周囲がワイワイと煩く騒いでいるが、そんなことが気にならないぐらい深い眠りに誘われた……。
バスが目的地に到着し、車内に響く足音で目が覚めた。多分今はパッチリという擬音がピッタリなぐらい目は冴えている。俺も荷物を持って下車した。
さてここ、今治総合運動公園にはサッカーコートが4面張られてある。いやいやそんなテニスコートじゃないんだから4面なんて多すぎるよジョニー、なんてマトモなツッコミはノーサンキュー。その代わりにグラウンドや体育館の敷地面積が削られているだけなのだから。要するにサッカーを厚遇しているだけだ。まあこの世界(隠し切れない厨二病的表現)なら一般的な話である。
第1コートに今回の四国大会愛媛県予選に出場する高校合計16校が集結した。……まあインターハイ前だしね、仕方ないね。時間割的には
9時:開会式
10時:第1試合-1(前後半各30分+延長)
11時30分:第1試合-2(前後半各30分+延長)
14時:第2試合(前後半各30分+延長)
15時30分:準決勝(前後半各30分+延長)
17時:決勝戦(前後半各30分+延長)
18時30分:閉会式(上位2校が翌日の地方大会出場)
という感じだ。因みに県予選優勝校は今晩この付近の宿舎に泊まることになっている。何故なら翌日の地方大会の開催場所もこの今治総合運動公園だから。
それにしても今日明日だけで全てを終わらせようとしてくるあたり鬼畜の所業のように思われるかもしれないが、実はこの四国大会は元々サッカー好きの個人がはじめた大会なのでそんなものだ。なら四国大会なんて地方を代表するような名前なんかつけるなよと言われるかもしれないが正式名称を『水田八兵衛協力四国地方高等学校蹴球育英大盛会』といい、それの略称が『四国大会』となったのである。要は省略しすぎだったというわけだ。
昔は1ヶ月もかけてそれなりに参加校もあるような地方では割と大きな大会であったそうだが、『全国高等学校総合体育大会サッカー競技大会』こと別名:インターハイが7月からはじまることもあり、皆そちらへ注力するようになってしまったそうだ。しかし現在も『四国大会』の原形が残っていることからも分かる通り、それなりに支持はされているようではある。まあ優勝しても名誉と盾ぐらいしか貰えないが支持されているならそれはそれでいいんじゃなかろうか。それにぶっちゃけ俺もこの大会があるお陰で新レギュラー陣として内定したようなところもあるだろうからな。俺がキャプテンの立場ならいくら才能があろうとも、インターハイでずぶの素人を使おうとは思わないし。まあ実績作りの一環として大会に参加してインターハイでも使えることを内外に示そうと思っている。
校長先生の朝礼と同じぐらい退屈な開会宣言が終わり、各高校がアップを始めた。もちろん俺たち修徳高校も。いつも通りの準備体操まで終えると残り練習時間が40分になった。俺たちの初戦は第1試合-1・第3コートなのであまり疲労を残さないようにパス練とシュート練で軽く済ませた。
俺たちの戦いは、これからだ……!




