24. 高二病 閑話(視点変更)
今日は月が綺麗でしたね。冥王星食はいまいち分かりませんでしたが、皆既月食は感動ものでした。
【ノーカット】皆既月食 × 惑星食 世紀の天体ショー ――Total Lunar Eclipse 2022,Japan(日テレNEWSLIVE)
https://www.youtube.com/watch?v=Q5RWZICcDZw&ab_channel=%E6%97%A5%E3%83%86%E3%83%ACNEWS
【ライブ配信】皆既月食+天王星食(2022年11月8日)
https://www.youtube.com/watch?v=-VUftz_GTOk&ab_channel=%E5%9B%BD%E7%AB%8B%E5%A4%A9%E6%96%87%E5%8F%B0
ここで冥王星食も見れました。いやーほんとありがとうございます。なんか思ってたよりも冥王星が小さくてビックリしました(笑)。
水谷 紗季は高二病である。
中学2年生の時に味わった他者に対する過剰な優越感や虚無感からくる自身への強烈な違和感を時の流れとともに克服し、今や高校1年生。良い物は素直に良いと褒めるし、流行のものもすぐにダサいと否定せずに一旦受け入れるようになるお年頃。とはいえ直前まで強烈な自尊感情に曝されていたのもまた事実である。
そこでいつの間にやら、「大流行しているものに飛びつくのは『トーシロー』、私みたいなのはマイナーなものの方が『らしくて良い』んだよ。」と少しだけ自己固有特別性(造語)を擽る行為に愉悦を覚えてしまっていた。
そしてその性癖のせいで、『サッカー部に所属する憧れの幼馴染を自身がマネージャーとなって傍で応援する』ことよりも、『日常生活では寄り添うけれども本業(語弊あり)については彼のことを信じ離れて見守る』という一般的には間違った行動を取ってしまったのである。しかし彼女は「それこそが真の『内助の功』であろう、寧ろ安易に近寄るのは最悪手である。」と本気で考えているのでノーダメ。恋する乙女は無敵とはよく言ったものだ。
だがやはり、気になるものは気になるし、出来ることならあの人の全てを知りたい。そういう風に考えてしまうのも恋する少年少女特有の特徴である。その例に漏れず、幼馴染に恋する彼女も同じ気持ちだった。
ここで、よほど軟派な人間(偏見)はともかくとして平凡な人間ならそう思うだけで実際に行動に出ることは躊躇ってしまう者が多い。しかし彼女は他とは違い圧倒的に地頭が良かった。それこそ高校を主席入学できる程度には。そこで彼女はその頭の良さを存分に活かし、自分で動くのではなく他人を動かす方法について学んだ。そう、自分で情報を得られないのなら他人に情報を得て貰えば良いじゃない。恋愛強者な現代のマリーアントワネットの誕生だ。
それから更に時は流れ、入学後から続く浮ついた空気とともにひと月という暦も終息を迎える4月下旬。なにやら図書室では彼女の友人が進路に悩んでいるようなので相談に乗ってあげることにした。因みにその友人とは、昔から彼女の想い人に懸想(語弊あり)されているにも関わらず憮然とした態度で袖にし続ける男の子であり、そして彼女しか友人の居ない哀れな男の子でもある。
話を聞いていると何やら今すぐお金が欲しいらしく、どの職業がいっぱいお金を稼げるのかと尋ねてきた。どの職業でも稼げる能力のある人はいっぱい稼ぐだろう、何を言っているんだコイツは。そう訝しんだ彼女であったが、男の子にはそんな態度は微塵も見せずにしっかりと相談に乗った。そしてふと彼女は思い付いた。男の子にサッカーを勧めれば幼馴染が喜び、それが巡り巡って幼馴染から自身への好感度爆上がりという宿願が叶うのではないか。さらに、男の子を自身の手駒としてサッカー部で動かせられるようになれば、誰にも知られずに幼馴染の情報は筒抜けにすることができるのではないか、と。
思い付いたら即実行、出来る彼女のモットーである。さり気なく他職業種を選択した場合の男の子の将来像を扱き下ろし、『サッカー』こそが男の子にとって(そして彼女にとっても)最良の選択であることを示す。そうして男の子の選択の幅をどんどんと狭めていき、最終的には『シャルパンティエ効果』と『選択肢の錯覚』他多数という心理学の技法を用いて彼女の望んだ通りの結果を叩き出した。それ即ち、男の子をサッカー部に本入部させるに至ったのだ!
改めて宣言しよう。水谷 紗季は高二病である。しかしその持って生まれた能力は思春期特有の精神疾患と捉えるにはあまりにも大きすぎるものがあるが。
それからも折良く彼女は、自身の手の者として潜ませたサッカー部のスパイこと葉隠和義に部活動での火暮真の様子を聞いている。今は幼馴染がサッカー部の新レギュラーになって活躍している話を聞いたところだ。
場所はいつもの図書室。とあるお昼休みのこと。




