16. レギュラー戦 前
プロローグの前に「設定の説明」を割り込み投稿したのでしおりが1つズレてると思います。
───波乱(誇大表現)の自己紹介から一夜明け翌放課後。
今日の部活動は昨日自己紹介で大口を叩いた者と既存のレギュラーメンバーで試合をすることになった。何があってこうなったのか全く理解できないが、土御門らへんが手を回したのではないかと俺の人並外れて当たる直感が告げている。
いつも通り部室で体操服に着替え、ウォーキングシューズの紐をキュッと締める。他の1年は既に各々がシャツやサッカーシューズを持参しており未だに初期装備の俺だけ服装で浮いている。しかも誰も俺の靴がウォーキングシューズだと気付いていないのか指摘してくる様子はない。……これはアピールが足りてないのか。
そしていつも通りサッカーコートまでドリブルで向かい、リフティングの精度を高める。最近、といっても一週間しか経ってないが、肩や腰で一度ボールを受け止めてみたり踵だけでリフティングしてみたりしている。なんだかんだで同じ先輩の真似をしているだけでは上限が見えてきたので、別の人の観察や自分でも難しそうな技を考える必要が出てきたな……。
特に面白みのないキャプテンの挨拶を終え、アップと1対1、そしてシュート練習をこなす。そしていつもの試合の時間がやって来た。
「えー、色々あって今日はレギュラーと選出されたメンバーで戦ってもらいます。結果如何によってはレギュラー入りなどが決まるので、レギュラー陣や選ばれた人は各々自分の出来ることを精一杯頑張ってください。それではこれから選手を発表します。」
「色々あって」の所で土御門がチャラそうな笑顔(偏見)を浮かべていたが、気にしないでおく。前世含む根っからの日本人気質だから仕方ないね。面倒くさそうなことには極力関わらないで、最大限の利益を享受するのが理想。
レギュラー陣はいつも見ているメンバー。そして注目の選抜メンバーはというと。
FW:11番 火暮 真(1年)・10番 田辺 誠十郎(3年)・9番 吉岡 勉(3年)
MF:8番 土御門 辰馬(1年)・7番 石川 颯太(3年)・6番 国松 聡(2年)
DF:5番 佐藤 大地(1年)・4番 山下 徹(2年)・3番 渡辺 一郎(2年)・2番 飛鳥 薫(3年)
GK:1番 葉隠 和義(1年)
なんか全ポジションに1年が混じってるな。やっぱり土御門が裏で色々画策したような気配を感じるぞ……。まあ俺もキーパーに選ばれたから全然良いんだけどね!
それぞれのポジションでメンバーが集まり小会議をしている。俺は仮入部の時のようにキーパーグローブの装着で1人BJごっこでもやろうかと思ったが、部活全体がヒリヒリした空気感だったのでやめておいた。
結局どういう風に纏まったのかは分からないが、試合が始まった。それぞれのポジションは本で読んだ4-3-3の基本通り、両ウィングとセンターフォワード、両インサイドハーフとボランチ、両ウィングバックとセンターバック2人。まあどんな陣形でも俺には関係ない。どうせ来たボールは全部止めるだけだし。
キックオフはレギュラー陣から。相手キーパーの林先輩から鼓舞するような仕草が見えたがちょっと早すぎないか。敵FWから木谷キャプテンへボールが渡り、中盤でキープしている。てっきりいつもの試合のように前線で攻め続ける試合展開かと思ったが、うちのボランチが良い具合にプレッシャーを懸けつつDF陣がパスコースを埋めているので全く試合が動かない。
いつまでこの均衡が続くかと思った矢先、飛鳥先輩が零れた球にしっかりと反応して体を入れながらボールを奪った。そして近くに居た土御門にパスをした。てっきりうちもゆっくりとした攻めで展開すると思っていたのだが、ボールを持った土御門は個人技で前線まで上がり、DFの裏側に回った火暮にキラーパスを送った。強烈な勢いにこのままでは追い付かないと悟った火暮のとった行動はダイビングヘッドで直接ゴールを狙うものだった。
林先輩はダイビングヘッドなど微塵も予測していなかったようで一瞬反応が遅れたが、幸いにしてコースが甘かったので足を伸ばして何とか弾き得点を防いだ。しかしボールはラインを割り、コーナーキックで試合が再開した。




