はじまりの村の武器屋の品揃えがあまりに良すぎるので、全部買うまでスライムを狩り続けてみた。
王様から渡された支度金50Gをどうするか、はじまりの村の武器屋を覗いてから考えることにした。
「いらっしゃい。武器は装備しないと意味が無いぞ」
お決まりの台詞で俺達を出迎えた店主。店に並んだ武器は角材と棍棒だけだった。
角材 10G
棍棒 30G
俺と戦士のジョージで角材を買い、早速村の外で腕試しと行こうではないか。もしダメなら残りの30Gで棍棒を買おう。
「おあつらえ向きなスライムだ!」
草むらからスライムが一匹飛び出した。俺とジョージが角材でボコボコとスライムを叩く。女僧侶のエリカは頭を押さえて防御の構えを取っている。
──スライムに1のダメージ!
──スライムに1のダメージ!
流石は魔物。角材で殴り付けても僅かなダメージしか与えられない。殴られ怒り心頭に発したスライムがジョージに襲い掛かった!
──ジョージに4のダメージ!
「いでぇぇぇぇ!!!!」
角材で殴られた四倍の痛みを訴えたジョージ。多分後二回同じ攻撃を受けたら昇天してしまいそうだ。流石に防具無しはキツい。
──スライムに1のダメージ!
──スライムに1のダメージ!
──スライムをやっつけた!
角材でボコボコに殴り付け、ようやく一匹を倒した。スライムが落とした1Gを袋に入れ、次なる獲物を探す。
──オレンジスライムが現れた!
「色違いでござる!!」
ジョージが先制攻撃でオレンジスライムに殴りかかる。
──オレンジスライムにダメージを与えられない!
「ぷにっぷにでござるぞ!?」
ジョージの角材が跳ね返され、オレンジスライムにダメージを与えることが出来ない。
──ジョージに6のダメージ!
「うぎゃぁぁぁぁ!!!!」
「撤収ーーーー!!!!」
俺達は逃げ出した。
──しかし回り込まれてしまった!
──ジョージに5のダメージ!
──ジョージは息絶えた!
「ジョージィィィィ!!!!」
俺達はジョージの亡骸を抱えながら逃げ出した。そして苦い敗戦から多くのことを学んだ。
先ずは棍棒を買うことにした。
「いらっしゃい。武器は装備しないと意味が無いぞ」
トゲトゲの付いた棍棒ならスライムにもダメージが入るだろう。
角材 10G
棍棒 30G
竹槍 50G
「……ん?」
先程は無かった気がした武器が新たに増えていた。持ち手の部分に【新商品】の札が貼ってあるので間違いないだろう。先の鋭い竹槍で貫いたならスライムといえどもイチコロだろうな。
「……オヤジ、コレを買い取ってくれ」
俺は角材を二つ武器屋のオヤジに手渡した。一つは勿論ジョージの物だ。
「二つで10Gだがいいかな?」
後9G足りないな……。
「コレも買い取ってくれ」
俺はジョージの着ていた布の服をオヤジに手渡した。
「10Gだがいいかな?」
ジョージの亡骸は追い剥ぎに遭ったかの如く何も着ていない。すまんジョージ。後で買ってやるよ。
ようやく50Gになったので竹槍を買った。
「ありがとよ!」
竹槍を装備した俺は、早速試し突きがしたくて村の外へと飛び出した。
「おあつらえ向きなスライムだ!」
またも草むらからスライムが一匹飛び出した。俺は竹槍を構えスライムを迎え撃つ。女僧侶のエリカは頭を押さえて防御の構えを取っている。
──スライムに5のダメージ!
──スライムをやっつけた!
「……竹槍パネェ…………」
先程まで苦戦を強いられたスライムを一撃で葬り去る威力を秘めた竹槍に、俺は興奮しつつあった。
「これならいける!」
俺はジョージの弔い合戦としてオレンジスライムに戦いを挑んだ!
──オレンジスライムに5のダメージ!
──オレンジスライムをやっつけた!
「うほぉぉぉぉ!!!!」
呆気無くジョージの仇を討つことに成功した俺は、オレンジスライムが落とした2Gを拾いジョージの亡骸に親指を立てた。
そして次々とスライム達を貫き、レベルが上がってお金も貯まり始めた。
「おっと! 見たことの無い、グリーンスライムが出たぞ!?」
──グリーンスライムに2のダメージ!
くっ、流石に一人じゃ辛そうだ!
俺とエリカは逃げ出した!
「どれ、そろそろジョージの装備を買い直すか……」
はじまりの村の武器屋へと向かいオヤジと顔を合わす。
「いらっしゃい。武器は装備しないと意味が無いぞ」
ジョージにも竹槍を買ってやらないとな。蘇生した時に驚くだろうな。
角材 10G
棍棒 30G
竹槍 50G
銅剣 140G
「……ん?」
先程は無かった気がした武器が新たに増えていた。持ち手の部分に【新商品】の札が貼ってあるので間違いないだろう。金属製の剣を振り下ろしたなら、スライムといえどもイチコロだろうな。
「オヤジ、コレを買い取ってくれ」
数多のスライムを突いたヌルヌルの竹槍を下取りに出し、俺は銅剣を購入した。銅剣を装備した俺は早速試し斬りがしたくて村の外へと出て行った。
「おあつらえ向きのグリーンスライムだ!」
──グリーンスライムに10のダメージ!
──グリーンスライムをやっつけた!
「んほぉぉぉぉ!!!!」
あまりの衝撃にアドレナリンが爆発! 落とした5Gを拾い上げ、更なる稼ぎに拍車が掛かった!
「流石にそろそろジョージをなんとかしないとな……」
蘇生の前にジョージに服を着させるために防具屋に訪れた。
「いらっしゃい。防具は装備しないと意味が無いよ」
武器屋のオヤジと似たような台詞を述べる店主のオバチャン。もしかして夫婦か?
布の服 20G
皮の服 50G
チャイナ服 200G
俺は無言でチャイナ服を買った。
「ふぇぇ!?」
戸惑うエリカだったが、防御力には変えられないと、渋々チャイナ服に袖を通した。
グリーンスライムの攻撃を余裕で受け止めるチャイナ服に若干の脅威を覚えつつ、俺はひたすらにスライムを狩り続けた。
「いらっしゃい。武器は装備しないと意味が無いぞ」
いい加減ジョージに装備を買ってやらないとな。蘇生した時に何を言われるか分からんぞ。
角材 10G
棍棒 30G
竹槍 50G
銅剣 140G
鋼剣 500G
「……ん?」
先程は無かった気がした武器が新たに増えていた。持ち手の部分に【新商品】の札が貼ってあるので間違いないだろう。鋭い金属製の剣を振り下ろしたなら、スライムといえどもイチコロだろうな。
「オヤジ、コレを買い取ってくれ」
数多のスライムを斬ったヌルヌルの銅剣を下取りに出し、俺は鋼剣を購入した。鋼剣を装備した俺は早速試し流し斬りがしたくて村の外へと出て行った。
「おあつらえ向きのグリーンスライムだ!」
──グリーンスライムに32のダメージ!
──グリーンスライムをやっつけた!
「ふぁっ!?」
力を入れずとも真っ二つに切れたスライムに変な声を発してしまったが、どうやら切れ味は本物のようだ。
しかしジョージの分も鋼剣を買うとなると、此処らのスライム達じゃ時間が掛かる。俺とエリカははじまりの村から少し離れた荒野へとやって来た。
「おあつらえ向きのクラゲスライムだ!」
──クラゲスライムに35のダメージ!
──クラゲスライムをやっつけた!
「強すぎぃぃぃぃ!!!!」
チャイナを盾にして後ろから斬りつける作戦でひたすら小銭を稼いでゆく。
レベルも上がり、体力も上がって死亡率が減った。
小銭の重みを袋に感じつつ、俺達は村へと戻った。
角材 10G
棍棒 30G
竹槍 50G
銅剣 140G
鋼剣 500G
伝説の剣 10000000G
「──!?」
ふらっと訪れた武器屋で思わずおったまげた。
持ち手に【新商品】の札が見える。間違いない。
俺達は顔を見合わせ、スライム狩りを決めた。
待ってろジョージ。コイツを買ったらお前を生き返らせてやるからな……!!