決意のプロローグ
ちょっと不可思議な世界の魔王と貴族令嬢が織りなす物語。
本日から連載開始で、初日の今日は10話アップし、明日以降も毎日必ず3話以上アップしていきます。
どうぞ暇つぶし程度のスタンスで気楽に楽しんでもらえれば幸いです。
それでは開幕。
私の16歳のバースデイ。
「……ごめんなさい、姉様」
その日。
蒼く透き通ったつぶらなその瞳に大粒の涙を乗せて、彼女はその言葉とは裏腹に、私の腹部へと怨嗟の篭ったナイフを突き立てた。
「うっ! ぁぁああああッ! ぁあぁぁあああッッ!!」
例えようもないほどの激痛に私は泣き叫ぶ。
彼女は私を確実に死に至らしめようと、更にそのナイフをぐりぐりと抉った。
私はこの痛みを知っている。
けれど痛みというものはそれが何度目であったとしても、ただひたすらに痛烈で、それに慈悲などなかった。
「ごめんなさいメイリア姉様。でも仕方がないんですわ。あなたがいると、いつまで経っても私はウィルスレイン様に愛してもらえないのだから」
腹部に致命傷を負わされ崩れ落ちる私を見下すように、私にとって世界で一番大切で、最も愛していた実の妹である彼女、ヴァネッサはそう言った。
疼くまる私の地べたは、すでに私から流れ出ているおびただしい量の出血により大きな血だまりが出来上がっている。
私の純白のドレスは、自身の鮮血によって赤く、赤く染め上げられていった。
(……いた、い)
想像を絶してはいないが、決して慣れる事のない激痛、苦痛。それに私は悶絶する。
(そんな……どう……して? ヴァネッサ……が、こん……な……)
視界が虚になり始めていき、やがて言葉を発するのも困難になってきた。
また、いつもの死が近づいてきたのである。
「うふ、ふふ、ふふふ……姉様ったら、油断していましたわね? 抜け目のない姉様ともあろうお方が……。でも、でも、これでようやく私はウィルスレイン様に愛してもらえますわぁ!」
ヴァネッサは涙を流しながらも、歓喜に打ち震えた声で空を仰いでいた。
そんな彼女に憎しみと愛おしさの両方を抱き、そして途方もない絶望と悲しみに心を埋め尽くされながら、私は薄れ行く意識の中、新たな決心を誓ったのは聖王暦にしてちょうど580年目の出来事だった――。
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