桜吹雪の舞うなか
桜吹雪の舞う頃
いつからかはわからない。気がついたらいつでもあいつが隣にいた。あいつとは昔からの幼馴染。同じチームでサッカーをして過ごす毎日。汗水垂らして練習して、都大会ベスト4に入れた時はとても嬉しかった。友達としての楽しい日々。でも過ごす時間が長くなるほどこの胸の痛みは増していく。最初から気がついていた、この感情があいつに友達以上の関係を求めていることを。そして今日で僕らは高校を卒業する。別れを惜しむ声があちこちで聞こえるなか、今まで溜めてきたこの感情と決別するために俺はあいつのいるとこへと向かう。
「なぁ、話したいことがあるんだがいいか?」
「どうしたの?そんなに改まっちゃって。」
「スゲー言いにくいことなんだけど、俺な、お前のことがこの3年間ずっと好きだったんだ。」
「え?どういうこと?、、、、、」
予想していた反応だった。最初から知っていた。この恋が実らないことも、今までの関係をぶち壊すことになるのも。全部最初からわかってた。
「いいんだ、、、、思いっきり軽蔑してくれ。何も求めないから。」
あいつは俯いたまま何も言わなかった。表情は見えなかった。
「じゃあな、ごめんな。最後にこんなこと言って。お前とサッカーをする毎日はとっても楽しかった。一生忘れない。きっともう会うことはないよ。卒業おめでとう。」
いいんだ、これでいいんだ。最初から決まっていたことだろ、もう諦めろ。そう心の中で言い聞かせつつ、俺は右回りをして歩き出した。その時だった、背中を掴まれて体をひっくり返されて頬にビンタが飛んできた。
「な、何すんだよ‼︎今更なんだよ。」
「ふざけんな‼︎何1人で早合点してさようならしちゃってるの?何自分だけずっと苦しんでました、みたいな感じ出しちゃってるの?お前だけじゃないんだよ‼︎」
そう言ったあいつの顔は真っ赤に染まった頰に涙が流れていた。
「え?それってつまり、、、え?」
「最初から最後まで言わせるんじゃねーよ‼︎俺もお前が好きなんだって言ってんだろ‼︎」
そうあいつが言ったとき、俺は躊躇なくあいつを抱きしめていた。俺らは泣きながら抱き合った。あいつの体温が体に伝わってきたとき、これが夢じゃないと気がついた。
「もうどこにもいかないでね、お願いだから。」
泣きながらあいつは言ってきた。
「もちろんだ。もう離す気なんてねーよ。」
改めてお互いを強く抱き合った。そのとき、ちょうど風が吹いてきて、桜吹雪が舞った。初めてしたあいつとのキスは桜の匂いがした。