表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

終わるのか

作者: odayaka



 僕が死んだら世界は終わってしまうのに。


 欄干に体を預けて、彼はぽつりと呟いた。

 月のきれいな夜、直ぐに雨になりそうなほど瑞々しい空気の中で。

 ハイビームが時折通り過ぎる以外は無機質な国道で。

 僕は彼の隣で冷めた缶コーヒーを啜っていた。


 終わらないだろうな、と思ったけれど。

 本当に終わるのかもな、と次いで考えた。


 僕が死んだら、少なくとも、僕の世界は終わるだろう。

 魂だけが残って、この世界を見続けるなんてことは絶対に出来ない。

 観測できるのは生きている間だけ。そんなことがたまらなく恐ろしかった。


 ――死にたくなる気持ちは分かるけれど死ねる人の気持ちは、分からない。



 橋の下を流れる川は、今は、暗闇の中に隠れているから。

 脛まで届かない程度の水量でも、それと分からないで飛び込んでしまうかもしれない。

 僕は、隣の彼を見つめた。

 彼は、俯いている。

 震える声音で、何かをずっと口にしている。

 僕には届かない声量で。



 死ぬなよ。


 僕は、それだけを言った。

 何の慰めの言葉も口には出来ず、これから良いことがあるさ、とも言えず。

 気持ちは分かるよ、なんて常套句も言えず。

 君よりも苦しんでいる人なんて幾らでもいる、なんてことも言えず。

 生きてくれ、なんてことも言えないまま。

 僕は心底、残酷な言葉を振り絞るばかりだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ