八話
新キャラ登場!
「エリュアーレ博士!!」
「?………どうかしたの?ユフィ」
研究所を歩いていたらふと後ろから聞こえた可愛らしい少女の声に反応したエルは、微笑みながら振り向いた。
そこには肩口で切り揃えた茶髪をした十歳程の無邪気そうな少女が、白と青の可愛らしいワンピースを着て嬉しそうに立っていた。市街地に居ても誰も気にしなさそうな外見だ。
「私ね、新しい魔法使えたんだ!!」
「へえ、それは凄いね。それで、どんなのが使えたの?」
「水を自由に動かせるやつ使って、的に弾を当てるやつ!」
不器用な表現で自分の功績を伝えてから、もう待てないと見えない尻尾を振り回しながら自らの頭を差し出すユフィに、エルは笑いながら頭を撫でてやった。
満足げにするこの少女は、魔女から産まれた希少な人間である。ユフィが魔法を使えるように、他の数少ない人間のきょうだいも魔法が使える。
今、この子ときょうだいは研究所によって保護、もとい観察されているが、この子達は紛れもない人間であるため、上層部では研究する用に数名残し、他は外で育てたら良いのではないかとの意見も出ていた。
しかし、魔法が使える人間は魔女の子供以外だと十万人に一人の割合。五十億人の人間が居るこの星ではわずか5千人程しか存在しない。
とても希少なチカラ。数十年前はそれが神格化された事もあったが、今となってはただの得体の知れない不気味な存在となっている。
その為に、魔法が使える人間は酷い迫害を受けている。
結局、研究所はストレスで暴走するかもしれない彼等を施設内で保護し、全ての子供を観察することにした。
未だに、魔女が何故人間の子供を産めるのか解っていない。
神のほんの少しの慈悲とも
産んだ子供が迫害される絶望を味わせるためとも
勇者の影響とも言われているが、真実は分からない。
ただ分かるのは、勇者がいた時代、迫害されていなかった魔法が迫害されていて、
「お母さん、いつ会えるのかな?」
魔女が子供を異端扱いされていると知っても、何とも思わなかったことだけだった。
暗い部屋に、一人の人間が座っている。その人間は、少女と女性の狭間のような容姿をしていて、蹲ったまま何もしていない。
いや、ブツブツと何かを呟いている。ただ、それは、
「え、そんな子供だったんだ………」
「うん、そこまで可愛げなかったけど」
「あはは、君の子供の頃、見たかったな」
恋人同士が仲睦まじく会話するような、不気味な言葉だった。
彼女の体は、殆どが至って普通だ。しかし、彼女の子供を産むための器官は歪に裂け、絶え間なく血を流している。平凡でないものを、産んだのは確かだった。
それでも、彼女は囁いている。それが、此処に無いように、痛みを感じないように、一人、或いは二人だけの会話を続ける。その姿は、何かの呪いを受けたようだった。
二本投稿出来そう。四連休万歳
出来なさそうなので登場人物紹介書きます。申し訳ありません……