七話
駄文です。
「それであなたが産まれたってことよ。………分かってる?」
リアのいる格子部屋で彼女が産まれるまでの経緯を話し終えたエルは、先程からつまらなさそうに髪を弄ってくるリアに苦笑しながら声をかけた。
それを聞いたリアは首を横に振った。___分からないらしい。
それを見たエルは更に苦笑を深め、内心ではほくそ微笑んだ。彼女はリアに異常なまでの愛情を抱いている。そんな彼女にとって、自らの母が神に罪人だと断定された事を悲観するリアを見ることは何よりもつまらない事だ。
その為に、話の残虐性が伝わらない為に、エルは自らの半生を費やしてきた。
リアには、教育が施されていない。
エルがリアと初めて接触してから約7年。不確定要素が多すぎて文字も書けないほど半端な知識しか与えられていなかったその頃から、彼女の知識は殆ど増えていない。それこそ少し話せる様になった位だ。勿論これはエルの仕業である。
故に、リアには文字を使って意見を伝えることも出来ないし、道徳心も欠けている。
研究所の管理者側は、『道徳心があると利用しにくいが、言語の書き取りなら教えても良い』と現状を一部承認しているが、一部否定しているため今のエルはそれをのらりくらりと躱している。
彼女にとっては、知識がない事が重要なのである。
「リアは、そのままでいた方が可愛いよ」
「………?」
「いや、分からなくていいからね」
言葉の意味を理解していないリアに、魔女からリア自身が産まれたことだけを伝え、彼女の髪を数回撫でてからエルはそこを後にした。
エルが居なくなった部屋は、完全な無音で満ちていた。
ただ一人音を自ら発しようと出来るリアも床に敷かれたマットに横たわり、天井をぼんやりと見つめている。
エルが居ない空間はリアにとっては何の意味もない。7年前から傍にいたエルは、何も無いリアにとって唯一の存在する理由だからだ。エルが居る時のみ、リアは生きている。そう言っても過言ではない。
エルが居ない時、リアが取る行動と言えば睡眠をとること、今までのエルとの触れ合いを振り返ることだけだ。それは人の有無にも左右されない。
リアはエルに依存している。それは何よりも狂気的で、王に心酔していた魔女のそれよりも根深い。たとえエルが彼女を裏切ったとしても、依存し続けるだろう。
ただの人間が酸素なしに生きることを知らないように、リアにはエルが居ない生活が分からない。それだけがリアが知っている生き方で、一番の幸せだから、今のリアはとても幸せなのだ。
誰も介入することの出来ない、二人だけの幸せなのだ。
週1投稿なのに短いのどうにかしたい。