四話
男が出て来ますが、百合の間には入りませんのでご安心を。
事が終わった後、エルは再び無機質な瞳になったリアの喉に手を翳し、二言三言呟いた。
するとリアは声がまた出なくなった。
「さ、もう部屋に戻ろうか」
手を引かれながら言われるとリアは__声が出ないから当然だが__無言でエルの後に続いて部屋を出た。
リアを格子部屋に入れた後、エルは先程出てきた扉を開いた。しかしそこにあったのは部屋ではなく、清潔感のある白い廊下だった。
「早くリアの可愛い所を書き留めなきゃ………」
エルは誰に言う訳でもなく一人興奮した様子で言うと、軽い足取りで歩き始めたが_____
「おい、エリュアーレ!!」
背後から聞こえた男の怒声に引き留められた。
その声を聞いたエルは大袈裟に肩をすくめながら振り向いた。
「アル〜、どうした?また何か文句あるの?」
アルと呼ばれた、どこかエルに似ている男はそんなエルの態度に、声を荒げながら詰め寄った。
「どうした?ではない!貴様!何時になったら彼女に真実を教える!?」
「真実ってなんのこと?」
それでも飄々としたエルに、彼は更に激怒する。
「とぼけるな!呪いのことだ!何時まで祝福だと偽っている!?」
「ああ、あれね。別に嘘じゃないから」
エルの顔が狂気に染まり、アルはたじろいだ。
「だってリアは私の喜ぶ事が出来るし、私もリアに悦んでもらうこともするよ?それが祝福じゃなくて何ていうの?」
「………クソッ。
もういい、彼女には魔女の末裔だとだけ伝えておけ………お前には常識が備わって無いようだからな」
恍惚とした表情で狂ったことを言ったエルに悪態をつき要点を伝えてから、アルは苛立った様子で他の扉へ消えていった。
「はいはい。わかりましたよ」
そう呟き、エルも扉を開けた。
______実験報告書______
対象:R−A1
実験者:エリュアーレ・グラウジェント
殲滅数:13匹
13匹の失敗作を放った後、R−A1を対象とし捕食。その際、失敗作の挙動は平均的に見て素早かった。
捕食行動は5分42秒に渡り続き、規定の部位まで捕食した後R−A1前は例通り肉の蔓を伸ばし、失敗作の脳を対象とし刺殺、脳を取り出した。
4.5秒後、全ての失敗作が生命機能を完全に停止。脳を取り出した蔓はR−A1の口元に移動。そのままR−A1は脳の捕食を開始、肉体の回復に移行した。
全ての脳を捕食した後R−A1の肉体は回復、意識を手放した。
これにより、実験は終了となった。