8-9 皇帝の命尽きるまでここに誓う
その翌日から俺は帝都をグルグルとただ回ることにした。
ただ黙々と朝から歩いては、日没に合わせて宮殿に戻る生活を飽きもせず続けた。
力だ。力が必要だ。残された時間は残り少ない。
父上が他界する前に奇書が示した挑戦を達成したかった。
毎日をただ帝都を歩くだけに使って、見識を広げながら帝国を食い歩いた。
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- 探索 -
【帝都をもう10周しろ】7/10週達成
・達成報酬 VIT+100
・『稼いだクラウンの大半が飲食費に消えてゆく姿は、何かもったいないような気分にさせられるな……。アシュレイ、どんな食い意地だ』
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だがその日課は7周目で一時中断させられることになった。
再び皇帝、いや父上からの呼び出しがかかったのだ。
しかし俺は何かに集中すると他に目が行かなくなるたちでな、正直億劫でしかなく、誘いをすっぽかしたくなった。
「準備はいいな、アシュレイ」
「ああ、気が重いが仕方ない。ゲオルグ兄上の怒りだけは二番目に買いたくない」
夕過ぎ、ゲオルグという厄介な保護者が俺を迎えにきた。
兄上も譲るところと譲らないことに分かれている。すっぽかすのは賢明ではなかった。
「一番はアトミナか。同感だな」
「そうだ。姉上に泣かれると、自分が極悪人になったような気分になるからな」
「ああ……。アトミナは独特のカリスマを持っているな。あのやさしさゆえか……」
ゲオルグと一緒に、俺は再び父上の眠る赤竜宮の寝所を訪れた。
今回は爺もいない。俺と、ゲオルグと、父上だけだ。
暗い寝室の中、ゲオルグ兄上が枕元に膝を突き父上に挨拶を始めた。
「お身体はどうですか、父上。アシュレイが逃げ出すといけませんので、こうして引っ張ってきました。アシュレイ、こっちへ」
やむなく俺もゲオルグの隣で膝を落とした。
ゲオルグに向けられていた目がノロノロと俺に向けられる。
それからゲオルグは立ち上がって後ろに下がり、俺と父上を遠くから見つめることにしたようだった。
「アシュレイ、もう一度父上の頼みを聞いてやってくれ」
「それは……」
今日は疲れているのだろうか。
父上は一言も口を開かない。ゲオルグを信頼して、全てを任せているようだった。
「アトミナもドゥリンも同じ願いだ。お前は優れた男だ。もっと認められるべきだ。覚悟を決めろ、アシュレイ……!」
ゲオルグに振り返り、もう一度父上に目を向ける。
己が死に逝く痛みの中にあるというのに、父上は俺を心配してなのか、うっすらと涙を浮かべていた。
エリンを領地とし、第七皇位継承者となれば、俺が救われると本気で彼らは思っている。
それほどまでに俺の立場は絶望的でもあった。
「わかった。受け取ろう。ただし、アンタが死んだら俺は高飛びする。全てそれまでの話だ。下らん権力争いに加わる気はないからな……」
帝国は腐っている。
だが俺が領主となれば、父上が崩御する日までの期限付きだが、あの地から悪を排除することもできるだろう。
「ぉぉ……アシュ、レ、イ……」
やはり体調がすぐれないようだ。父上はそれしか言わない。
だがこれこそが救いの道だと信じて止まないのか、ようやく父上は安堵して安らかな顔をした。
「それと……父上。俺も父上に辛く当たっていた。そのことは、大人げなかったと思う。父上は、俺が思い込んでいるような人間ではなかった。父上は、皇帝として、己のやるべきことをやってきた。親としては知らんが、アンタはこの国で最も立派な人間だ。アンタのおかげで、俺は今日まで生きてこられた。アンタがこの国の皇帝で、俺は良かったと思っている。……皇帝アウサレウス57世、いやフェルディナンド父上。アンタは偉大なる名君だった」
すると何を思ったのか、父上が身を起こそうとしたのでゲオルグが駆け寄った。
何やら父上の背中を支えて、ゲオルグが俺を見る。
「アシュレイ、父上は――お前を抱き締めてやれなかったことを、ずっと悔やんでいた。お前が父上を許すというなら、どうか頼む……」
この期に及んで拒めるわけもない。ゲオルグに誘われて、俺は病床の父上を抱き締めた。
軽い。こんなに軽い身体に、皇帝の重責を背負ってきたのか。つい今すぐ、全ての役目を代わってやりたい気持ちに駆られた。
それはゲオルグだって同じはずだ。
狂おしいくらいに、重責を代わってやりたいと願いつつも、継承権という壁に苦しんでいるはずだ。
「ゲオルグ……アシュレイ……。力を、合わせて……この、帝国を……混迷、から、守って……くれ……」
父上は人生を皇帝という大帝国の器に捧げた。
悔しいが俺は父上という人間を理解してしまった。
父上は確かに異形の息子から逃げた。
だが、その生涯を皇帝として貫いた。父が、皇帝陛下が、帝国を守れと俺たちに命じる。
ならば決意せざるを得なかった。
俺は父上の寿命尽きるまで、残り少ないこの期間を、悪を屠るために使おう。
崩御後のゴタゴタに加わる気はない。
だがそれまでに可能な限りの悪を滅ぼして、俺はこの帝国を去ろう。
俺はアシュレイ、皇帝家の闇だ。闇は闇として、闇のやり方で帝国の悪を屠る。
皇帝の命尽きるまで、鬼となって悪を屠るとここに誓おう。
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【邪竜の書】
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- 冒険 -
【冒険者ギルドで1万クラウン以上の仕事をこなせ】
・達成報酬 EXP600/[帝国の絆LV+1]
・『良い機会だろう、冒険者仲間を増やせ』
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- 探索 -
【帝都をもう10周しろ】7 /10週達成
・達成報酬 VIT+100
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- 開拓 -
【エリンを開墾しろ】
・達成報酬 耕作LV+1
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- 開拓 -
【エリンの安全を1000討伐度、確保せよ】
・討伐度750/1000
・達成報酬 EXP200/エリンの民の人心
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- 事業 -
【ヘズ商会を成長させろ】
・達成報酬 DEX+100
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- 粛正 -
【悪党を5人埋めろ】残り2人
・達成報酬 EXP900/スコップLv+1
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- 粛正 -
【汚れた富を300000クラウン盗め】570 / 300000
・達成報酬 AGI+100
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- 投資 -
【合計1万クラウン使え】2277/ 10000
・達成報酬 EXP1000/出会いの予感
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- 目次 -
【Name】アシュレイ
【Lv】25
【Exp】3185
【STR】50
【VIT】138
【DEX】117
【AGI】100
【Skill】スコップLV4
シャベルLV1
帝国の絆LV1
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