8-7 海運都市ナグルファルでのやり残し - 旅路と同行者 -
エリンの里に保護した子供を送ると、泊めてくれるという話になったので一泊ご厄介になった。
翌朝になると子供の救出と、アビスハウンド討伐を再び感謝されて、予定通り海運都市ナグルファルに向かった。
「まあアビスハウンドの一人食いは水に流そう。狩りとはそういうものだからなっ! それはそうとシンザーッ、一緒に旅ができるなんて拙者は嬉しいぞー♪」
なぜかシグルーンがくっついてきたがな……。
「なんで付いてくるんだ……」
「なぜと言われてもな! まあ報告は帝都だが、ナグルファルの支部で新しい仕事を受けて、帝都でまとめて報告することもできるのだぞー?」
「では偶然か」
「いや、シンザと一緒にいたかったから予定を変えたのだ。ところでシンザ、悪党を倒すというなら拙者も手伝うぞ! クフフッ、これでも口は堅い方だ、任せろ!」
口の堅いやつは、そもそも街道のド真ん中でそんな発言をしないと俺は思うぞ……。
ただ予定を変えて付き合ってくれるところには、俺も喜びを覚えなくもなかった。
ここだけの話、俺は友達がかなり少ないからな……。
だからキャラルやドゥリンとの出会いは内心――いや、なんでもない。
「黙ってないで誰を成敗するかくらい言え!」
「違う。ナグルファルをグルリと回りたいのだ。2/3周な」
「ふむふむ。そしてその後、誰を成敗するのだぁ?」
「回って終わりだ。疲れたら飯の美味い宿にでも泊まる」
「ほほーぉ、つまり観光かぁ! いいではないか!」
「観光……まあそんなところか」
シグルーンのこの馴れ馴れしさは見習うべきだろうか。
武勇と行動力だけは目を見張るものがある。有角種という帝国では珍しい種族であるのに、常に堂々としているところも含めてだ。
「わかった、やはり一緒に行く」
「なぜだ」
「面白そうだからに決まってるぞ。まあ安心しろ、飽きたら好きに姿をくらますから、それまで付きまとってやるからなぁ~♪」
俺の意思などお構いなしに、勝手にそういうことになっていた……。
「ならなんで俺がそんなに気に入ったんだ……」
「うん、そうだなぁ……。ただ強いだけなら、拙者は好意ではなく、対抗心をもって斬りかかっていたかもしれんなっ! 今だってそうしたい感情はあるぞ、フハハハッ、一戦どうだ?」
「ゲオルグとアンタだけはゴメンだ……」
「しかしな、一番はお前の中で燃える義侠心よ! その危うさと気高さに拙者は惚れた! お前は強く、そして美しい! まるで研ぎ澄まされた刃のようだ! ゆえに、拙者はお前に付きまとうのだぁーっ!」
理屈の半分以上がよくわからん。
ただ研がれた刃のような脆さと鋭さを好むところは、いかにも戦闘狂のシグルーンらしいのだろうか。
淡い緑の髪と一角の角を持つ女豪傑は、もう止めてくれと俺が言ってもけして黙らず、ナグルファルへの道を騒がしく愉快にしてくれた……。
分割の都合上、短いエピソードが発生しますが、どうかご容赦下さい。
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