6-3 救出作戦 - 離宮を喰らったドブネズミ -
「はわ、お外は夜だったでしゅか……。ん、お月様まぶし……」
こうして地下隧道を抜けると、当然ながら釣り小屋の隣に繋がった。
その穴ぐらからドゥリンがまぶしそうにヒョッコリ顔を出すと、そのときをアトミナ姉上と爺が今か今かと待ちかまえていた。
「ドゥリンちゃんっっ!!」
「はへ……はわっ!?」
その後に起こったことなど月並みだ。
愛情深い姉上に、ドゥリンはすっぽりと抱き締められた。すると緊張が途切れたのだろう、ドゥリンの瞳が潤んで、大粒の涙がこぼれていた。
「アトミナお姉さま……ドゥリン、ドゥリン、何もしてないのに……怖かったでしゅ……。怖いオバちゃんがドゥリンに、酷いこと言って……ぅぅぅぅ……もう帝都はイヤでしゅお姉さまぁぁ……っっ!!」
「ドゥリンちゃん、ごめんなさい……。なかなか助けてあげられなくて、ごめんなさい……」
後は大泣きだ。もう23のはずの姉上の方までな……。
さらにそれを見て、爺がもらい泣きしていたのも俺は見逃さなかった。
どういつもこいつも情が豊かだな。
まあいい。姉上の意識がこちらに向く前に、謎のホタルさんは再び穴底に戻った。
地獄の扉、ではなく神罰の門を開かなければならない。
しかしよくよく考えてみると、こうなると仮装の意味がなかったな。
水を差すのも悪いので何も言わずに引き返した。
離宮の底に再び舞い戻り、もう一つの地下隧道を進む。
これは湖の底へと続く地獄行きの道だ。最奥の岩盤をこの鋼鉄のスコップで堀り砕けば、離宮の底に湖水が流れ込むことになる。
それが地上の建築物に、嫌がらせという言葉では生ぬるい、深刻な影響を与えるだろう。
要するに建物の地盤をメチャクチャにしてやるのだ。少し傾く程度ならまだマシな結果だろうな。
やがて俺は神罰の門の前に到着した。
既に一度コリン村でやっていることだ。ここをぶち破れば、さぞかし俺の身も愉快なことになるだろう。
「叔母上、ドゥリンをあれだけ泣かせたツケを払ってもらおうか」
だが相手は越えてはならん一線を越えた。
父上が罰せないというなら、代わりに俺がアンタに天罰を下そう。邪竜ジラントの名の下に。
アンタの嫌う薄汚いドブネズミに、屋敷の地盤を食い荒らされるといい。
『やれ、アシュレイ! 帝国に巣くう害虫どもに、我らの天罰を下せ!』
ジラントの許しも下った。邪竜の使徒はスコップを突き刺して、岩盤に大きなヒビを入れた。
たちまち水圧のかかった湖水が岩の隙間より吹き出す。
「これは、ヤバいかもしれんな……」
やり過ぎたのかもしれん。怒り任せに岩盤を破壊した俺は、可能な限りの全力疾走で地下隧道を走り抜けるはめになった。
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◇
◆
これで進入路が向こうにバレたところで、内部はもう水浸しだ。
俺たちの足跡を追うことはもうできない。
「シンザ様っ、急にいなくなったと思えばこれは何事でございますかっ!?」
「ふぅ……ちょっとな」
膝まで増水した地下道を走り抜けてきた。
ヤバくなったら頭上を掘れば良いとはいえ、なかなかのスリルだった。水浸しの地中より現れたドブネズミさんに、みんな驚いていたな。
「なぜっ、水があふれてきているのでございますか!?」
「湖に繋げてきたからだ」
「ぷっ……」
あきれた凶行に爺が困り果てているところに、アトミナ姉上の口が空気を吹いた。
俺と目が合うと、どうも我慢できなくなったようだ。
「あはははっ! なによアシュレイッ、その顔! もしかして変装のつもり!? バカね、全然似合わないわっ、そんな人っ、いるわけないじゃないっ、アハハハハッ!」
俺のヒゲとメガネがまるで似合わないと、姉上に大爆笑された。
気に入っていたのに酷いな。そんなに似合わないのか……? だがそれより姉上――
「姉上、その名は――」
「あら、何かまずかったのかしら私……?」
ああ、まずいに決まっている。
俺は謎のホタルさんであり、ただのシンザでいたいのだ。
「はっ、はわわわわっ、ホタルさんが、アシュレイ様だったでしゅかっ!? あ、アトミナお姉さまの、弟さん! はわっ、はわわわぁーっ!?」
ドゥリンが俺から後ずさった。驚きのあまり口をおおって、それからなぜか木陰に隠れて首だけ出した。
さっきのチューなら気にするな。見れば少し内出血して、人に見せられん痕になっているが、気にするな。
「あら……ごめんなさいアシュレイ、私つい、安心しちゃって……。私がバラしちゃったみたいね、ふふふっ」
「どうせ姉上がいつかバラしたのだ、今さらかまわん。それより逃げよう」
泥まみれの膝から下を湖で洗いながら、安心している場合ではないと仲間に警告した。
朝になれば全てが発覚する。それまでにドゥ叔母上の領地を離れたい。そのためにわざわざ俺は姉上をここに呼んだのだ。
「ど、どこにでしゅか……?」
「姉上の嫁ぎ先。アイオン公爵領だ」
助け出したがドゥリンの状況はあまり良くない。
こじつけられた冤罪は、ちょっとやそっとでは拭えないだろう。
ならば姉上と義兄アイオン公爵に守ってもらい、どうにもならなければ国外逃亡させる他になかった。
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- 義賊 -
【ドゥリン・アンドヴァラナウトを盗め】達成
・達成報酬 EXP500 スコップLV0.5(取得済み
・『良くやった。錬金術師ドゥリンは必ずやそなたの力になろう。ドゥリンの今の笑顔を見て誇れ、そなたはそなたにしか出来ぬことをしたのだ』
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- 目次 -
【Name】アシュレイ
【Lv】16→20
【Exp】1870→1890→2390
【STR】41→43
【VIT】110→120
【DEX】99→108
【AGI】82→88
【Skill】スコップLV3.5 → LV4
シャベルLV1
『遅効性の毒となって、あの離宮は日に日に崩れてゆくだろう。だが人生を狂わされた代償としてはあまりに軽過ぎる。報復の手を緩めるなよ、アシュレイ』
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さてな。俺はドゥリンを悪の手から守りたいだけだ。叔母上への過剰報復が目的ではない。
それに結局、叔母上が何を考えてドゥリンをさらったのかもわからん以上、万全を期したいだろう、ジラントよ。
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【邪竜の書】
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- 冒険 -
【冒険者ギルドで仕事を3つ達成しろ】1/3達成
・達成報酬 EXP450/???
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- 探索 -
【帝都をもう10周しろ】
・達成報酬 VIT+100
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- 探索 -
【海運都市ナグルファルを1周しろ】1/3
・達成報酬 EXP100/VIT+5
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- 事業 -
【ヘズ商会を成長させろ】
・達成報酬 DEX+100
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- 粛正 -
【悪党を5人埋めろ】残り2人
・達成報酬 EXP900/スコップLv+1
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- 粛正 -
【汚れた富を300000クラウン盗め】570 / 300000
・達成報酬 AGI+100
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- 投資 -
【合計1万クラウン使え】1806/ 10000
・達成報酬 EXP1000/出会いの予感
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