4-4 突発的に光るホタル男と小さな錬金術師 - 国教会 -
「あっ、やっぱりホタルさんでしゅ……! はれ、その人は……?」
「コイツか? コイツはアンタの店のガラスを割ったバカ野郎だ。さあ、店主に謝れ」
カウンターに近付くと梱包用のヒモが目に付いたので、そいつをいただいて下っ端を完全拘束した。
その際に、ドゥリンを恫喝した肥えた方と目が合った。悪びれも反省もしていないな……。
「貴様、余計なことを……」
「それは自白か? 共犯ならアンタもまとめて、憲兵に突きだしてやっても良いぞ」
すると今度は揉め事は困る、とでも言いたそうな顔になった。
揉め事を持ち込んだくせにな。そもそもなぜドゥリンを追い出そうとするのだ。
「……ふん、知らんなそんな男」
「そんなっ、話が違いますよケテル様!」
「貴様ッ、名前を出すなと言っただろうがっ?!」
「俺を見捨てようとしたからじゃないか! 俺は好きでやったんじゃない!」
見苦しいな。名前がバレてしまってさらにうろたえたのか、ケテルが店の出口に向かって後ずさった。
悔しいがこっちはどうにもできん。俺の知りうる限り、最低の暴言しか吐いていないからな。
「覚えていろ……。教会に逆らって、ただで済むと思うな!」
「いつかどこかの演劇で聞いたようなセリフだな……。さっさと帰れケテル、ここはアンタが来る店じゃない。さらに付け加えるならば、ドゥリンは断じて魔女ではない。皇女殿下の信頼厚い、錬金術師殿だ」
「ホタルさん……っ」
こんなに愛らしいのになぜ魔女扱いなどできるのだ。
ケテルはそのまま仲間を見捨てて、俺たちの前から逃げ去っていった。
「態度はでかいが、意外と小物だったな」
「ありがとうでしゅっ、ありがとでしゅっ、ぅぅぅー、怖かったでしゅよぉ、ホタルさぁんっ……!」
俺が外のやつを制圧している間に、何を言われたのやらドゥリンは怯え切っていた。
小柄な身体をホタルさんにすり付けて、あふれる涙と鼻水を人の服で拭っていたな……。わかっている、悪気はないのだ。
ドゥリンの背中を撫でたり叩いて慰めながら、俺の方は捕まえたバカの方をどうしようかと悩んだ。
「おい、俺を解放するなら今だぞ!」
「だがな、このままノーペナルティでは、またこの店に来て同じことをするだろう、アンタ。帝都市民としてそればかりは見かねる」
憲兵に突きだしたところで、もしかしたら手が回されるかもしれない。
軍がどこまで国教会と癒着しているかも、俺は詳しく知らん。
「怖かったでしゅ……なんでこんなこと、するでしゅか……。ドゥリンの店が、酷いでしゅ……」
「俺は命令されだけだ! あの人たちに逆らえるわけがないだろ!」
口ではこう言っているが、俺はコイツも悪党だと思う。
悪人だって相手を選ぶ。こういった恫喝に善人を使うことはないだろう。くみしやすいと思われたのだ。
「黙れ。そんなことよりアンタはやったことを謝れ。可哀想だとは思わなかったのか」
「くっ……こんな小さな子がやってる店だなんて、俺は聞いてなかったんだ! ああ悪かったよっ、ケテルに逆らえなくて石を投げた! これでいいかよっ!?」
「アンタ本当に聖職者か? 謝罪になっていないぞ」
「ホタルさん、もういいでしゅ……。でも、これだけは言うでしゅ! ドゥリンは、何も悪いことしてないでしゅ! だからだから絶対絶対っ、絶対ここを出ていかないでしゅぅっっ!!」
どうもわからんのはそこだ。教会はなぜドゥリンにこんなことをするのだ。
こんな小さな店1つ潰したところで何も変わらない。
叔父上と政商ヒャマールのように、ヘズ商会を潰して交易ルートを独占しようとしたのとはわけが違う、意味不明だ。
「悪かった……。頼むから解放してくれ」
「ホタルさん、そうしてあげてくだしゃい。ホタルさんが助けてくれたから、ドゥリンは平気でしゅ。このことは、お姉さまに相談しましゅ……」
それは間違いだ。動機がわからないからこそ、コイツを突き出しておくべきだ。
やさしさや情けで悪党が心を入れ替えるなど、そんなもの幻想だ。そんな殊勝な心があったら、そもそも悪には染まらん。
「いいや泣き寝入りはお断りだ。行くぞ悪党、憲兵所まで付き合え」
「なんでだよっ、許すって言ってるぞ!?」
「ああそのようだ。だが俺が許さん。ドゥリン、ガラスの修理代は俺が出そう」
「えっ、ええーー!? なんでホタルさんが、そんな、そんなのダメでしゅっ!」
払う払わないのやり取りなど面倒だ。
俺は問答無用で銀貨10枚をカウンターに置くと、石を投げた聖職者を引っ張って店を出た。
「ダメダメッ、貰えないでしゅ! あっ待って、待ってホタルさんっ、お金置いてかれるの困りましゅっ、こんなにいらないでしゅぅー!」
「遠慮するな。世の中上手くできていてな、この程度どうということはない」
そもそもこの金は、邪竜の書に貰った手先の器用さで、拘束時にこの犯人から盗んでやったものだからな。
たんまり入っていたということは、やはりコイツは金で買われたようだ。
こうなったらもう仕方ない。
憲兵所に犯人を突きだして、姉上にパウンドケーキを買って、その日は諦めて宮殿に戻った。
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- 粛正 -
【汚れた富を300000クラウン盗め】570クラウン達成
・達成報酬 AGI+100
・『次は国教会の宝物庫でも荒らすか?』
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国教会の宝物庫だと……? 無茶苦茶を言うなジラント。
そんなことをしたら、その義賊は帝国中の全信者を敵に回すことになるぞ……。
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【邪竜の書】
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- 冒険 -
【冒険者ギルドで仕事を3つ達成しろ】
・達成報酬 EXP450/???
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- 探索 -
【帝都をもう10周しろ】
・達成報酬 VIT+100
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- 探索 -
【海運都市ナグルファルを1周しろ】1/3 達成
・達成報酬 EXP100/VIT+5
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- 事業 -
【ヘズ商会を成長させろ】
・達成報酬 DEX+100
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- 粛正 -
【悪党を5人埋めろ】残り2人
・達成報酬 EXP900/スコップLv+1
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- 粛正 -
【汚れた富を300000クラウン盗め】570クラウン達成
・達成報酬 AGI+100
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- 投資 -
【合計1万クラウン使え】1362 / 10000
・達成報酬 EXP1000/出会いの予感
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- 目次 -
【Name】アシュレイ
【Lv】12
【Exp】1375
【STR】26
【VIT】100
【DEX】90
【AGI】77
【Skill】スコップLV3
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沢山の誤字報告。それと感想ありがとうございます。
とても励みになっています。