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19-15 本土にて――

・エリンの政務官プィス


 私はこの仕事に誇りを持っている。

 お美しいアトミナ皇女様を補佐しながら、ドゥリンちゃんとイチャイチャするところを盗み見るのは、生き甲斐と言ってもいい。


 ゲオルグ様の猛々しいお姿と、少しとぼけたアシュレイ様のやり取りも素晴らしい。

 なおかつ、私の働きがエリンを繁栄に導く。これ以上やりがいのある仕事があるだろうか。


 ――ただ、最近は我慢ならない役者がこの平和なエリンを騒がせていた。


「そうは言われましても叔母様、ここの領主はアシュレイです。私たちはその代理をしているだけです」

「ジュリアスとヨルドが攻めてくるというのに、アアタたち、何を他人事みたいなこといっているのよっ!?」


 一昨日と昨日に続いて、ドゥーネイル祭司長が今日も現れた……。

 オペラの役者じゃあるまいし、同じ言葉を毎日毎日……もう気が変になりそうだ……。


「ですから祭司長様、アシュレイ様の許可がなければ……」

「下郎は口をはさまないでちょうだいっ! そもそもアアタッ、ジュリアス側の立場じゃない!」


「もしかしてそれ、私の実家の話ですか? ええまあ、過去の政争に破れ、不当な立場に追いやられていた勢力のほぼ全てが、ジュリアス皇子たちに付くでしょうね」

「キィィィィーッッ、冷静に何抜かしてるのよっ! アアタ状況がわかってないおバカさんなのっ!?」


 気持ちの上ではジュリアス側を応援したいところだ。

 アシュレイ様やゲオルグ様に気に入られなかったら、私は民間で働く他になかっただろう。


「ですが私、これでもアシュレイ様の大ファンでして、この仕事にやりがいを持っておりますのでご安心を」

「そう言いながら立場が悪くなったら裏切るんじゃないでしょうね!?」

「叔母様、それはプィスに失礼です、撤回して下さい」


 エリンでの仕事は楽しい。

 けれどこのババァは苦痛だ……。

 美しくない。汚い。容姿ではなく、心根が汚い。人間の底が浅過ぎる……。あまりに美しくない……。アトミナ様と同じ血筋とはとても思えない……。


「だまらっしゃい! い、今さら敗北者どもが逆襲なんて、頭が高いのよっ! とにかくうちに戦力をよこしなさいよっ!」

「はぁっ……。ですから叔母様、アシュレイが戻ってからでないとそれはできません」


 このババァはモラクと組んでいる。国教会の力を使って、既にジュリアスとヨルドを教敵に指定している。

 もしもこの戦いに負ければ、いかに皇族といえど処刑は免れないだろう。


 もはや開戦は避けようもなく、帝都南部の大平野にて早くも陣取り合戦が始まっていた。

 そこに各勢力の本体が合流すれば、後はぶつかり合うだけだ。


 ジュリアス側の軍は彼らの予想を超えて兵力を増やしている上に、盾にするつもりの帝国第一軍が、ゲオルグ様が参戦を拒んでいる。

 仲間を増やそうと、彼らは躍起になっていた。


 ちなみに皇太子は彼らの手の内にある。

 ジュリアスとヨルドに刃を向けるついでに、軟禁してしまったそうだ。


 持ち主の望む夢を見せる秘宝、デミウルゴスの涙を取り返した以上、世俗のことはもうどうでもいいのかもしれない。


「帝国の有事に何を言っているのよっ!? もしあのキチガイのジュリアスが皇帝になったら、大変なことになるじゃないのよ、んもうっ!」

「知りませんよそんなの……。宮廷で刃を抜いた貴方たちだって、大概でしょうに……」


「あたしは祭司長よ! アアタ、あたしに意見する気っ!?」

「叔母様がプィスに失礼なことを言うからよ……。それに元はと言えば全て、叔母様とモラク叔父様が二人を殺そうとしたからこうなったんじゃない……」


「知らないわよっ、取り逃がしたモラクたちが悪いのよっ!」


 このままでは帝国人同士で殺し合うことになる。

 前皇帝が押さえ込んでいた全てが爆発して、最悪は決着が付かずに、この帝国が諸侯ごとに分裂するだろう……。


 そうなれば周辺諸国もただでは済まない。

 群雄割拠に巻き込まれて、世界中で血が流れる。

 もしも野心家のヨルドとジュリアスが皇帝となれば、侵略戦争を始めるかもしれない。


「なんでこんな大事なときに、あの薄汚いバカはいないのよぉっ!! 今どこにいるのよっ!!」

「それがわかったらゲオルグも私も苦労してないわ。それにアシュレイは汚くなんてないわ。アシュレイの心は誰よりも綺麗よ。そこは危うくて、気が気じゃないくらい……」


「アレは母親殺しの悪魔よっ!! あの蛇の目を見ればわかるわ!」

「その悪魔の力を貸りようとしているのは、どこのどなたですか……」


 アシュレイ様、このババァの応対はもう嫌です……。

 早く帰ってきて、ノーを突きつけて下さい……。

 ただでさえ、既に南で小競り合いが始まっているのですから……。



 ☆

 ★

 ☆

 ★

 ☆



【邪竜の書】


――――――――――――――

- 冒険 -

 【冒険者ランク・方解石(カルサイト)に昇格しろ】

 ・達成報酬 EXP1200

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- 冒険 -

 【冒険者ギルドで仕事を受けろ。ただし任務地は帝国外のものとする】

 ・達成報酬 発掘LV+1 EXP500

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- 探索 -

 【帝国を2500km歩け】959→1012/2500km達成

 ・達成報酬 移動速度LV3(全ての移動速度+50%)

『今回の旅は帝国外でのことだった。致し方あるまい』

――――――――――――――


――――――――――――――

- 探索 -

 【領地エリンに帰還しろ】

 ・達成報酬 EXP1

――――――――――――――


――――――――――――――

- 開拓 -

 【エリンを自由に発展させよ】

 ・発展度24800→38900/50000

 ・達成報酬 EXP1000/最強の人造兵器

『有角種どもが水車と水門を築いてくれた。また多くの避難民がやってきたようだ。下手をすれば、帝都が戦場になりかねない状況だ。それはそれとして、我が輩たちが帰還し、ヘズ商会が稼いだ莫大な資金がエリンに流れれば、ついにこのミッションが達成される日がくるかもしれんな』

――――――――――――――


――――――――――――――

- 開拓 -

 【地下帝国ア・ジールを復活させろ】

 ・達成報酬 EXP5000/花園と沃野

『早く見たい。早く蘇らせてくれ。早く……。あの地が暗闇に包まれた日、我が輩は故郷を失ったのだ。早く……』

――――――――――――――


――――――――――――――

- 事業 -

 【ヘズ商会を大型船10隻を有する大商戦団にしろ】9/10隻達成

 ・達成報酬 船団の航行速度+50%

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――――――――――――――

- 粛正 -

 【悪党を7人埋めろ】残り3人

 ・達成報酬 EXP1100/スコップLV+1

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――――――――――――――

- 粛正 -

 【汚れた富を100万クラウン盗め】 986000/ 1000000

 ・達成報酬 空間探知LV+1

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- 投資 -

 【合計1万クラウン使え】9940→9998/ 10000

 ・達成報酬 EXP1000/出会いの予感

『おい……わざとやってのではないだろうな!? 今すぐ使え!』

――――――――――――――

 

――――――――――――――

- 目次 -

【Name】アシュレイ

【Lv】53

【Exp】12580→12620

【STR】130

【VIT】330

【DEX】281

【AGI】281

【Skill】スコップLV5 

    シャベルLV1

    帝国の絆LV2

    方位感覚LV1

    移動速度LV2

    穴掘り30アクティブ

『おほんっ……。何にしてもまずは地下帝国の復活からだ。情勢を見ながら、エリンとあの地に軍勢をかき集め、我が輩たちが漁夫の利を得るぞ。そなたも思うところはあるだろうが、今は中立を保て。ゲオルグとプィスも同じ手を薦めるはずだ』

――――――――――――――


 ジラント、アンタの私情が含まれているような気もするが、それもまた今さらか。

 俺だって早くアンタの故郷が見たい。


 情勢に大きな問題がなければ、すぐに向かおう。

 反逆の地下帝国ア・ジールがあったあの忘れられた地へ。


 それが光り輝く太陽を俺たちに譲ってくれたアザト夫妻への恩返しだ。

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