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207/225

19-12 ただの一度も選ばれることがなかった種族 2/2

 港を抜けて町を進む。入植で生まれた町というだけあって、道という道が入り組んでいて複雑だ。

 石造りの建物が都市にはひしめき、白い外壁たちが明るい荒野の日差しを反射させている。


「あ、あれ……? 今、あそこに何かいなかった……?」

「うむ、何かいるようだなっ!」


 しばらくすると大通りが見つかった。

 その通りを抜けて道を進んでゆくと、奇妙な気配が一つまた一つと増えていった。

 こうしてキャラルが気づいた頃には、既に取り囲まれていたとも言う。


「おーいっ、いるのはわかっているぞーっ、出てこーいっ!!」

「いや、出てこいと言われて、ホイホイ出てくる人はそういないでしょ……」

「とはいえ囲まれているからな、姿を現すのも時間の問題だろう」


「えっ!? 私たちって今、囲まれてるのっ!?」

「ああ。だが敵意は感じない」


 俺たちはその場にたったまま、向こうの動きを待った。

 意地が悪いぞ、ジラント。こいつらの正体を知っているというなら、そろそろアドバイスをしてくれ。


『うむ、まずはその目のレンズを外せ』


 妙な要求だった。もし竜の目を見せたら相手を警戒させてしまう。

 指示に従うべきか迷っていると、ジラントが光と共に実体を現し、石だたみの上に着地した。


「あ、ジラント様」

「現れたかっ! もう少し登場が遅かったら、挨拶代わりにこの剣を披露していたところだぞっ!」


 そう言いながらシグルーン剣のギミックに手をかけたので、俺は飛びつくようにその手を止めた。

 キャラルも同じことを考えたのか、手と手が重なっていたな。


「ご、ごめ……っ」

「いやいい、悪いのはいつだってシグルーンだ」

「それはないぞーっ、シンザァッ!?」


 しかしジラントが姿を現した以上、もう今さらだ。

 俺も要求通りにレンズを外して、今は誇りである竜の目をさらした。

 当然ながら向こうの連中は、俺の異形にヒソヒソと声を上げて驚いていた。


「む、むぅ、だがコイツら何か妙だぞ……」


 それでもシグルーンは剣から手を話さない。

 

「というか、滅亡都市メルクェルって名前なのに、なんで人間が暮らしてるの……?」

「人間? 何を言っているキャラル、コイツらは人間ではないぞ」


「へ……? じゃ、じゃあなにっ、まさかアビスの怪物!?」

「いや、アレとは感じが違うな。やたら機敏で、動きに知性を感じる」


 そろそろ種明かしをしてくれ、ジラント。

 アンタはコイツらの正体を知った上で、ここへの遠征を薦めてくれたのだろう。


「ククク……当然だ。こやつらは人間ではない。もちろん獣人でも、有角種でも、エルフでもない。……早く出てこい。このジラントが紹介してやろうというのに、肝心の貴殿らが正体を現さなければ話が進まんぞ。それにほれ見ろ、アウサルも一緒だ」


 ジラントがふわりと浮遊して、俺の両肩に後ろから手を置いて見せびらかした。


「何を勝手なことを言っている……。俺はシンザだ、先祖のようなド変人と一緒にするな」

「あっ、出てきたよ。あの、初めまし――え、ええええーーっっ?!!」


 正面の物陰から彼らの一員が姿を現した。

 その全身は鱗で覆われており、2m近い恵まれた体躯と、尻尾を持っていた。

 キャラルが驚くも無理もない。それはリザードマンと呼ばれる空想上の種族だった。


「なんだ、リザードマンか。もったいぶった割にあっけないな!」

「何言ってんのっ!? 全然あっけなくないよっ!?」


 だからジラントはレンズを外せといったのか。

 リザードマンは俺とジラントの姿に己との共通点を見つけて、次々と建物の陰から現した。


「驚イタ……。俺タチニ、少シ、似タ、ニンゲン……」

「ジラント……」

「アウサル……。チチニ、聞イタ、名前……」


 敵意はないようだが、リザードマンたちはカトラスやウォーハンマーで武装していた。

 見回してみれば誰も彼もが巨大で、鋭いその牙に艶やかな鱗も相まって、なかなか威圧感のある風体だ。


「よくみろ、ただのドラゴン人間だ。シンザとシグちゃんと変わらん」

「それって目だけでしょ!?」


 次々と後続が現れて、リザードマンたちの数は20名ほどに膨れ上がった。

 最初に姿を現したやつがリーダー格のようで、ソイツだけが俺たちの前に歩み寄ってきた。


「ニンゲン、何シニ、来タ?」

「うむ、我が輩たちは使者だ。悪いが案内を――」

「あ、シンザが光った……」


 だがすまん、ようやく邪竜の書が俺たちの到達に気づいてくれたようで、まぶしい光が俺を包み込んでいた。

 これにリザードマンたちが驚かないはずがない。


 彼らは光に弱いのか、まぶしそうに顔を覆った。なんてはた迷惑なやつなのだろうな、俺は。

 邪竜の書に目を落とすと、この強い輝き相応の結果がそこに記されていた。


――――――――――――――

- 探索 -

 【ザルツランドの西、滅亡都市メルクェルに到達しろ】(達成

 ・達成報酬 EXP1600(獲得済み) 遺物の獲得(未取得)

――――――――――――――


――――――――――――――

- 探索 -

 【領地エリンに帰還しろ】

 ・達成報酬 EXP1

――――――――――――――

 

――――――――――――――

- 目次 -

【Name】アシュレイ

【Lv】49→53

【Exp】10980→12580

【STR】120→130

【VIT】305→330

【DEX】275→281

【AGI】263→281

【Skill】スコップLV5 

    シャベルLV1

    帝国の絆LV2

    方位感覚LV1

    移動速度LV2

    穴掘り30アクティブ

『場をわきまえろ! 我が輩が喋っているときに光るでない!』

――――――――――――――


 そうは言われても、これが仕様だとアンタが言うから、こっちだって諦めているのではないか。

 新しいミッションの方はしょっぱいな……。


「すまん、俺は突然光ってしまう体質なのだ。通りすがりのホタルだと思ってくれ」


 いつもの発光が終わると、リザードマンがたちが俺に向けて顔を上げた。

 いやだが何か妙だ。一人、また一人と床に膝を突いて、示し合わせたかのように一斉にひざまずいた。


「マサカ、本当ニ、アウサル様、ナノカ……?」

「リザードマン、ノ、救世主……!」

「アウサル様……!」


 先祖は全ての種族を救ったと聞いたが、まさかそれにトカゲ人間まで含まれているとは思わない。

 しかもそいつらは世代を交代しても、先祖のことを忘れずに覚えていてくれた。


「だから違うと言っているだろう……。俺はシンザだ」

「クク、うちのシンザが迷惑をかけたな。地底で暮らすそなたたちにとっては、さぞ迷惑なホタル野郎であっただろう。……では本題だ、アザトに会いたい、我らをそなたたちの国に連れて行ってくれ」


 アザト。それが彼らの国王か何かの名前のようだ。

 俺たちにひれ伏したリザードマンたちは顔を上げ、よっぽどそのアザトとやらに俺たちを会わせたいのか、どこか誇らしげに案内を買って出てくれた。


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