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18-9 誰が為に鐘は鳴る

 目を開けると真っ青に輝く空と、大きく発達した夏雲が浮かんでいた。

 ここはあの楽園だ。あのジラントが住まう、この世ならざる別の世界だった。


「ん、いないな……」


 いつもの湖に向かってジラントの姿を探したが、そこには赤い円卓が見つかっただけだ。

 ジラント不在の楽園か。奇妙なこともあるのだなと、俺は岸に腰を下ろして、美しいこの世界を眺めた。


 ここは有角種の聖域に少し似ている。

 ジラントはずっとこの場所で、一人で生きてきたのだろうか。

 ここで孤独に外の世界を見るしかない人生は、さぞ寂しいことだろうな。


「アシュレイ……」


 光り輝く水面を眺めていると、ジラントのものではない、男の声が響いた。

 ここは俺とジラントだけの聖域だと思っていた。

 一瞬、不快な感情を抱いたが、後ろを振り返るとそんなものは消えていた。


「なぜアンタがここにいる……。父上」


 そこに、病床から立ち上がれぬはずの皇帝がいた。

 それがこちらに歩いてきて、俺の両肩を包み込んでいた……。何がなんだかわからんが、ただ身が震えた。


「なぜだ……。なぜアンタがここにいる……」

「ジラントが情けをくれたのだ。私の心残りをくみ取って、最期の機会を作ってくれた」


 これで確定だな。ジラントは父上と繋がっていた。

 エリンの地。俺の継承権。全てジラントが糸を引いていた。

 ため息しか出てこない。


「アシュレイよ、顔を上げよ」


 言われて俺は足下を見ていることに気づいた。

 ジラントは姿を現さない。俺は恐る恐る実の父親に目を向けた。彼はやさしく笑っていた。


 俺を苦しそうに見つめ、疎んでいたあの頃が嘘のような、やさしい微笑みだった。


「私は幸せ者だ。こうして、お前に別れの言葉を言えるのだから」

「どういう意味だ……別れだと……」


「ジラントと、ギデオンから全て聞いている。結社ベルゲルミルの影か……新しい希望の誕生を祝福しよう。お前たちが未来を守ってくれるならば、私の心は安らかだ」


 人は認めがたい現実に直面すると、何も見えなくなるようだ。

 頭が回らない。父上の言葉の一つ一つが現実を突きつけたが、俺自身が答えを拒んだ。


「アシュレイ、どうか帝国を頼む」

「ああ……。最後までは面倒見れんが、引き際を見極めつつ、悪足がきだけはしてみよう……」


「では、もう一つ頼んでもいいな?」

「なんだ……」


「私の遺品を、お前の母、ユーリアの墓に届けてくれ。同じ墓に眠ることはできないが、せめて形見だけでも、届けてやってほしい……」

「わかった……」


 死ぬのか……?

 最期とはそういう意味なのか……?

 最期の時だからこそ、ジラントはここに父上を通したのか……?


「アシュレイ、私の死を嘆くな。私は己の生に満足している。私は不幸ではない。そして私の死を発端に、全てが動き出す。お前たちが嘆いている時間はない」

「それはまた、父上らしい言葉だ……。わかった、アンタが死んでも俺は嘆かない。やるべきことを優先して、全てが終わってから泣こう」


 子供のように死ぬなと叫んでも、父上の死は安らかとはならんだろう。

 惜しまれれば惜しまれるほど、苦しむことになる。だから堪えた。


「そうか、強い子に育ったな……。ギデオンにお前を任せてよかった。ギデオンのやつをよろしく頼むぞ……」

「ああ、言われなくとも爺には長生きしてもらう。そうそうアンタのところに行かせはせん」


 しばらく前まで、俺は父上を憎んですらいたのに今はこんなに苦しい。

 父上が死ねば、兄弟たちが動き出す。最低の暗雲が帝国を包むだろう。だが今は、父上と己のことで頭がいっぱいだ。


「悪い人生ではなかった……ああ、これでやっと会えるのだ……」


 涙を流すまいと堪えた。しかしそれは無理だったようだ。

 だから代わりに笑った。俺は死を嘆いてなどいない。


「私なりにがんばったよ、天国で私を褒めてくれ、ユーリア……」


 父上は楽園から消えた。

 入れ替わりでジラントが現れて、へたり込んだ俺を背中から抱いてくれた。


「よくぞ堪えた。今だけは我が輩の胸で泣くことを許そう」

「必要ない。それよりこれからのことを考えよう。それが秩序に身を捧げた男の願いだ」


 その晩、ア・ジール帝国の皇帝が崩御した。

 報が帝国中を駆けめぐり、止まぬ鐘が俺たちを夜の眠りから目覚めさせた。


 誰が為に鐘は鳴る。

 一つの時代が終わり、未来の見えない混沌の時代が始まった。


 鐘はいつまでもいつまでも鳴り響き、帝国の秩序を孤独に守り続けてきた男の死を、俺たちに告げるのだった。


 皇帝が死んだ。もう後には戻れない。今日より新しい世界が始まる。



 ☆

 ★

 ☆

 ★

 ☆



【邪竜の書】


――――――――――――――

- 冒険 -

 【冒険者ランク・方解石(カルサイト)に昇格しろ】

 ・達成報酬 EXP1200

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- 冒険 -

 【冒険者ギルドで仕事を受けろ。ただし任務地は帝国外のものとする】

 ・達成報酬 発掘LV+1 EXP500

――――――――――――――


――――――――――――――

- 探索 -

 【帝国を2500km歩け】947→959/2500km達成

 ・達成報酬 移動速度LV3(全ての移動速度+50%)

――――――――――――――


――――――――――――――

- 探索 -

 【沿海州の玄関口、ザルツランドに到達しろ】

 ・達成報酬 EXP10

――――――――――――――


――――――――――――――

- 探索 -

 【沿海州の最果て、ポート・アケに到達しろ】

 ・達成報酬 なし

『沿海州行きの約束は中止だな……。そう落ち込むな、キャラルも理解してくれる』

――――――――――――――


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- 開拓 -

 【エリンを自由に発展させよ】

 ・発展度23770→24800/50000

 ・達成報酬 EXP1000/最強の人造兵器

『基盤の構築は仲間に任せ、そなたはそなたにしかできないことをやれ』

――――――――――――――


――――――――――――――

- 事業 -

 【ヘズ商会を大型船10隻を有する大商戦団にしろ】7→9/10隻達成

 ・達成報酬 船団の航行速度+50%

『もう一隻買い足したいところだが、政情次第では流通も滞る。焦ることはない』

――――――――――――――


――――――――――――――

- 粛正 -

 【悪党を7人埋めろ】残り3人

 ・達成報酬 EXP1100/スコップLV+1

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――――――――――――――

- 粛正 -

 【汚れた富を100万クラウン盗め】 986000/ 1000000

 ・達成報酬 空間探知LV+1

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- 投資 -

 【合計1万クラウン使え】8895→9940/ 10000

 ・達成報酬 EXP1000/出会いの予感

『後少しだ、もっと浪費しろ!』

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- 目次 -

【Name】アシュレイ

【Lv】48

【Exp】10735→10770

【STR】118

【VIT】302

【DEX】273

【AGI】260

【Skill】スコップLV5 

    シャベルLV1

    帝国の絆LV2

    方位感覚LV1

    移動速度LV2

    穴掘り30アクティブ

『そなたは父親譲りの鋼の精神を持つ男だ。新しき時代に怯え震える者たちには、そなたとゲオルグの姿に必ず希望を抱く。よって、泣き言は我が輩にだけ漏らせ。人に弱さを見せるな。我が輩が全て受け止めてやる』

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