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17-1 シンザッ、うち寄ってくかっ!? - きまぐれ -

前章のあらすじ


 冒険者ギルドでの大仕事を受けるために、アシュレイは兄ゲオルグに邪竜の書という秘密を明かした。

 だが兄の関心は、スキル・皇帝の円卓の座に、己が載っていないという一点だった。


 そこでゲオルグが騎士の誓いをアシュレイのスコップで行う。

 すると奇書はゲオルグを認めて、スキル・皇帝の円卓の座に彼の名を記し、大きな恩恵を与えてくれた。


 思わぬ展開となったが、こうして無事に兄の後ろ盾を得て、アシュレイはシンザとして冒険者ギルドに向かう。

 受付にてアビスオーガ討伐の依頼を受け、カチュアとシグルーン、それにいつもの飲んだくれ冒険者と共に彼らパーティは西方へと出発した。


 その道中、スキルが成長してシンザが突然光ったり、馬車が加速する事件もあった。

 かくして一行はたった5日で、目的地であるエネスの町に到着した。


 ボウガンとバリスタ、カチュアの必中の弓の援護を受けながら、シンザとシグルーンが前衛として暴れ回る。

 快進撃でアビスオーガの群れを撃破してゆくも、そこに燃える鬼とでも呼べるような、正体不明の怪物が現れた。

 それは矢どころか、シグルーンの剣すら受け付けない強敵だ。


 だがシンザが陥落を水路に繋げて水場を作り、シグルーンが怪力で敵をそこに突き落とすと、燃える鬼は炭化した人型の残骸と化していた。


 シンザたちが知ることのない真実――

 その鬼は人間だった。復讐を近い、アビスの白騎士と出会い、自ら燃える鬼となることを望んだ。


 アビスは神すらも怪物に変える恐ろしい力を持っている。

 復讐に燃える鬼が最後に見たのは、黒い一角を持った戦乙女だった。


――――――――――――

 有角種の里へ

  シグルーンの里帰り

――――――――――――


16-1 シンザッ、うち寄ってくかっ!?


 辺境の者の大半は、一生その地を離れることがない。

 彼らの生活は彼らの世界で自己完結しており、何か特別な事情がなければ、生まれ育った土地を離れることなどまずないのだ。


 よって辺境民の旅人に対する感情は多種多様だ。

 あのコリン村のように、客人に期待を込めて歓迎する土地もあれば、流れ者は厄介者だと見なして、強い警戒を向ける土地もまたある。


 この町はやや排他的だった。飯が美味いと評判の酒場に俺たちが入ると、先客たちは俺たちに絡んではこなかったが、遠巻きに警戒の目線を向けてきていた。


 実はギルドの冒険者連中と別れた。

 その発端はもちろん、いつだって行動の読めないあの女豪傑、シグルーンの気まぐれからだ。



 ◆

 ◇

 ◆

 ◇

 ◆



「おお、そうだ。せっかくここまできたんだ、うちの里に寄っていかんか?」


 あの燃える鬼を倒して、俺たちは現地のギルドに報告を入れた。

 どうやら帝都のギルドだけが特殊なようでな、こちらの支部には、あの荒っぽい酒場は併設されていなかった。


 そしてシグルーンは報告を終えたその軒先で、思わぬことを言い出した。


「まさかそれは、有角種の里のことか?」

「何を当たり前のことを言っている。拙者のこの角が見えんのか?」


 コツコツとその黒い一角を小突いて、シグルーンが豪快に笑う。

 それはあまりに急な話だった。


「シグルーン様の実家って、ここから近いの?」

「うむ、近いといえば近い。遠いと言えば遠い。とにかく二人をうちの故郷に案内したいぞ。……おおそうだっ、お前らもどうだっ!?」


 シグルーンの元気な笑顔とは反対に、おっさん冒険者たちの表情は渋かった。

 何を言ってるんだお前はと、態度だけで論外なのがわかった。


「お前の出身地ってあの最果てだろ!?」

「全然近くねぇだろがっ、このドアホがッ!」

「んなド辺境オブド辺境の、おまけに超危険地帯まで、誰が好き好んで付き合うかよっ!」

「おいシンザ、断れ! 生きて帰れるかもわからんぜ!?」


 以上の総ツッコミで、だいたいの事情が把握できた。

 だがこれはチャンスだ。有角種といえば高い魔力を持つ知恵者たちとして有名だ。俺たちの味方に引き入れたい。


「わかった、付き合おう」

「えっええっ、い、行くのっ!?」

「わははっ、そうこなくてはなっ! さあいざゆかんっ、最果ての我が実家へ!」


 一ヶ月以内に戻ればいいのだ。

 有角種の知恵を得ることができれば、俺たちベルゲルミルの影は大きな力を得ることになる。


「お前もお前で大したイカレ野郎だな……。そいじゃ、ここでお別れだな」

「あーあ、いいやつだったのになぁ……あばよ、シンザ」

「最果てはマジでヤベェらしいからよ、気を付けろよ?」

「生きて帰ってきたら、おっさんたちが一杯奢ってやるよ。じゃあな!」


 そこで冒険者のおっさんたちと別れた。

 経費を引いた分の報酬を、後で帝都に戻った際に受け取ることに決まり、俺とシグルーンとカチュアは、最果ての世界を新たな目的地とした。


 有角種とのコネクションを得る意味は大きい。

 ただし有角種の里である最果ての世界に行くには、最果ての荒野と呼ばれる、恐ろしい砂漠を越えなくてはならないそうだ。


 乗り合い馬車に飛び乗って、ギルドのある大都市から西へと向かった。

 二倍に加速する馬たちに、御者も乗客もずいぶんと驚いていたようだが、そこは知らぬ存ぜぬ我関せぬで通した。


今回文字数少なめですが、以降3話にかけて文字数多めになります。

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