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16-1 ゲオルグ兄上と奇跡の種明かし - 円卓と将軍 -

「これがお前の成長のからくりか、納得だ。いや、書の要求はさておき、これは、素晴らしい物だな!」

「兄上……? いや、それは――俺の想定していた感想とはだいぶ異なるぞ……。もう怒っていないのか……?」


 どちらかというそれは、どことなく子供のようなはしゃぎ方にすら見えた。

 兄上には似合わない、ワクワクとした気持ちが伝わってきてしまった。


「武人である俺からすれば、この書は憧れた。心底、お前が羨ましい。要するにこのノルマを達成すればするほどに、お前は飛躍的に強くなれるのだろうっ!?」

「ああ、そうだが――帝国の将軍ともあろうものが、少しはしゃぎすぎではないか……? こんな兄上を見たのは、一緒に庭園を駆け回ったあの頃以来だぞ……」


「アシュレイ!」

「な、なんだ兄上……」


「この皇帝の円卓エンペラーオブラウンドに、なぜ俺がいないのだっ!? これに俺を入れてくれ、これがあのカチュアを百発百中の射手にしたのだろうっ!? プィスがよくて、なぜ俺がここにいない! 俺はお前にとって、その程度の相手だったのか!?」


 いや、入れてくれと言われてもな……。

 この書は俺の自由にはならないようだぞ。正直、そう言われても困るぞ、兄上……。


「それは兄上が、帝国の将軍で、俺から見て一番目上の存在だからではないだろうか……」

「そんな、理不尽にもほどがあるではないか……。俺はお前に未来を感じた。お前ならもしやと思っている。俺は皇帝の器ではないが、お前ならばと――」


「いや待て兄上。感情任せに闇討ちをする皇帝がいてたまるか。アンタこそが適任だ」


 俺がこう思っているからこそ、兄上がこの項目に加わらないのだろうか。

 いや、だがそうなると、ドゥリンやシグルーンはなぜここに入っているのか……。

 特にシグルーンが謎だな……。


「武人として、俺はこの恩恵が欲しい。お前のための円卓に座したいと思っている」

「いや、兄上がこれ以上強くなったら、俺が追いつけなくて困るぞ」


「何を言う。既に俺よりお前の方がずっと強いだろう」

「そんなはずはない。俺はただの体力バカだ、兄上ほど実践経験豊富ではない。試合をすれば、俺が出したボロを兄上が突く姿が見える」


 というよりもだな、兄上に遠征の許可と後押しを得るのが本題で、兄上をここに加えるのが目的ではなかったのだが……。

 兄上の関心は、完全に皇帝の円卓に偏っていたようだった……。


「ずるいな……ずるいぞ、プィスめ……。俺を差し置いて、こんな羨ましい座に位置するとはな……。妬ましさすら覚える……」

「頼む。元通りの兄上に戻ってくれ……」


 兄上は何度も何度も、邪竜の書にある円卓の空欄に指でなぞり続けた。

 気持ちは俺だって嬉しい。だが帝国の将軍である兄上が、俺みたいな自由人の配下だなんてアベコベだろう。


「おおそうだ、ならばこうしたらどうだ? 初代皇帝のスコップを貸せ」

「……兄上。嫌な予感がするので、その要求を断ってはダメだろうか?」


 兄上が立ち上がり、こちらに寄ってきたかかと思えば、乱暴に黒いスコップを俺から奪い取った。

 そして何をするかと思えば、止めろ、冗談はよしてくれ、兄上……。

 年長のプライドはどこにいったのだ……。


「今日より俺の力は、お前の力だ。だからどうか頼む、俺を将軍ではなく、お前に仕える騎士の一人として認めて、ここに加えてくれ」


 兄上は、騎士の誓いをスコップでやってくれた。

 すまん兄上、これは、とんでもなくシュールだ……。剣でやるとバッチリ決まるやり取りも、ただただシュールでトンチンカンだ……。


 だというのに、兄上は微動だにせず俺の行動を待っていた。

 こうなっては仕方がないので、無気力にスコップで兄上の両肩で軽く叩き、茶番に付き合っておいた。


 こんな他愛ない儀式で、邪竜の書が兄上を強化してくれたらそれはそれで儲けものだ。だが奇跡は起きないから奇跡と呼ばれている。

 ところが青白い光が俺たちの横顔を照らすので、ふと隣に振り返れば、書斎の上で奇書が光を放っていた。


「な、なん、だと……?」


 兄上が飛びつくように拾い上げて本を開いた。

 どうやら2カ所だけ、特に強い光を放つページがあるようだ。


「おおっ、なんと神秘的な光だ! これは……やったぞっ、見てくれアシュレイッ、俺も皇帝の円卓に載ったぞ!!」

「嘘だろう……」


「本当だ! ほら見てくれっ、これで俺もお前の仲間だな!!」


――――――――――――――――――――――――――――

- エンペラーオブラウンド -


N01.冒険者黒角のシグルーン

N02.帝国の将軍ゲオルグ・グノース・ウルゴス

N03.――――――

N04.宮廷錬金術師ドゥリン・アンドヴァラナウト

N05.――――――

N06.――――――

N07.提督キャラル・ヘズ

N08.――――――

N09.――――――

N10.射手カチュア

N11.執政官プィス

N12.――――――

――――――――――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――――――――――

NO.02 帝国の将軍ゲオルグ・グノース・ウルゴス


【絆Lv】4

【成長限界】+125%

【実績効果1】アシュレイと行動時、全ての能力が2倍

【実績効果2】統率LV+1 馬術LV+1

【実績効果3】アシュレイのSTR10%分のボーナス

【実績効果4】絶対に落馬しない

【実績効果5】配下の忠誠心+20

【実績効果6】全ての能力が1.3倍(未獲得)

【次のLvup】まだまだ

【対象のLv】87/125

【信頼度】アシュレイを弟として溺愛している

――――――――――――――――――――――――――――


 しかし溺愛、か……。知ってはいたが、こうして文字としてさらけ出されると、嬉しいというより気恥ずかしいな……。

 忠誠心+20というのは、基準がよくわからない。


 兄上が裏切られるのは不快なので、喜ばしいことなのだろうが……。

 溺愛、溺愛か……。


「なぜ黙っている。喜べ!」

「いや、だがここに、溺愛していると記されているぞ……」


「何も間違っていないな。むしろ何を恥ずかしがる必要がある。俺とアトミナは、お前のことを溺愛している。出会ったあの日から、弟であるお前を守りたいと思い続けてきた。アシュレイ、俺たちがお前を愛していないはずがないだろう」

「そうか、愛か。とんでもなく恥ずかしいことを、よくも抜けぬけと言い放ってくれるものだ……」


 ゲオルグ兄上が士官学校に入った頃、アトミナ姉上はゲオルグが落馬するのではないかと、たびたび不安を口にしていた。

 それがなくなったというのは喜ばしいことだ。


 落ち着いて現状を把握し直してみれば、帝国最強の男がさらに強くなったということだ。

 これならばヨルドの思い通りにはならないだろう。


「早速効果を試したいな。どうだ、久々に手合わせしないか?」

「断る。何が悲しくて、超強化してしまった兄上にしごかれなければならない。それより提案がある。このページのここだ、これをやりたい。シグルーンとカチュアを連れて行くので、そのつもりでいてくれ」


――――――――――――――

- 冒険 -

 【冒険者ギルドで1万クラウン以上の仕事をこなせ】

 ・達成報酬 EXP600/[帝国の絆LV+1]

――――――――――――――


 ページを開いて指さすと、兄上は俺に向けて少年の笑みを浮かべた。

 そうだ。これを獲得すれば、兄上がさらに強くなって、俺からさらに遠ざかるというわけだ。


「お前の行動を滅茶苦茶だと思い続けてきたが、合理的な判断だ。わかった、一ヶ月以内に戻れ、それ以上はまずい。必ず一ヶ月以内に帰ってこい」

「わかった、そこまでの長旅にはならないはずだ。必ず戻る」


 さあ、これからシグルーンとカチュアと合流して、久々の冒険者ギルドに向かおう。


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ダブルフェイスの転生賢者
― 新着の感想 ―
[一言] ゲオルグが残念なことに……w
[一言] やらかしやがったw
[気になる点] 「そこまでの長旅にはならないはず」 どうしてもフラグ臭がぷんぷんするんですが……ww
感想一覧
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