14-6 暗躍する者たち - デミウルゴスの涙 -
・ゲオルグ
アシュレイがまた姿を消したかと思えば、フィンブル公爵家を味方に付けて帰ってきた。
俺の弟はどこまで破天荒なのだろう。
たくましく成長してくれたことは嬉しいが、あれはシグルーンのような、常人には扱いきれない種類の人材だ。
俺は俺なりに、将軍としての仕事をこなしながら、エリンの兵の練兵や、組織の運営に力を傾けた。そんな折のことだ。
「やぁゲオルグ。いい天気だねぇ……曇ってるけど、どんよりしたいい天気だ。そう思うだろう?」
「ごぶさたしております、ジュリアス兄上。何かご用でしょうか」
書斎に戻り政務を進めていると、そこに次男ジュリアスが現れた。
勝手に入ってきて、俺の座る書斎に尻を乗せていた。話の内容は予想がついた。また勧誘だろう。
「君、妙なことをしているそうじゃないか」
「妙とは?」
「それがさぁ、君がクーデターを企てようとしていると聞いたんだよ。だから僕は言ってやったね、ゲオルグは、野心で動く男じゃない。ってさぁ? そうだろう、ゲオルグゥー?」
食えないやつだ。こちらの動きをもうつかんでいた。
エリンであれだけのバカ騒ぎをしたのだから、遅かれ早かれこうなるとは想定していた。問題はない。
「はい、皇帝の座に興味はありません。私は皇族である前に将軍、帝国の秩序を守るのが責務です」
「そうだね、僕はその言葉を信じているよ。他の連中がどう思うかは知らないけどね……」
「ならば俺からも兄上に聞こう。ジュリアス兄上とヨルドが、アビスの怪物と接触していたと、アシュレイが俺に報告してきた。それは本当か?」
「まさか」
「ならばこっちも、まさか、だ」
いつだって饒舌なジュリアスが一言だけで済ませた。
隠す気もないようだった。事実、指摘されたからといって、政治的にどうということはない。
「ゲオルグ、皇太子側に付くのは止めた方がいいよ。あれはもうダメだ」
数日前から皇太子が部屋に引きこもって、父上の政務の補佐をしなくなった。そのことで混乱が始まっている。
この状態が続けば、上の許可を省略して、勝手な行動する連中が増えてゆくだろう。かなりまずい傾向だった。
「ジュリアス兄上、皇太子に何をした?」
「まさか。僕は何もしてないよ。でも困ったね。父上が崩御しようという時に、世継ぎが心の病にかかるだなんてね……。さぞ荒れるだろうね、彼を後継者を認める者が、どれだけ出るのやら、ははははは!」
「なんてことを……」
「僕を失望させないでくれよぉ、ゲオルグゥ~? 僕が一番、この帝国を統治できる人間なんだ。僕こそが皇帝に相応しい……そう思うよなぁ? マァマァがそう言うんだからさぁ……?」
ジュリアスが何かをした。
そのせいで皇太子は自室に引きこもって、眠って過ごすばかりになった。
ヤツはそれを隠そうともせず、逆手に取って俺への威圧材料にしていた。
「勝手に争え。俺たちは帝位に興味などない。秩序と民を守り抜くのみだ」
「ゲオルグゥ、君とアシュレイのさぁ、そういうバカで使いやすいところが好きだよ。何せ好き好んで、人の尻拭いをしてくれる奇特な連中だからね……そういう人間が絶えたら、この国は終わりだ」
あと二ヶ月。いや、一ヶ月ないかもしれないと医者は言っていた。
あと一ヶ月で、どれだけ俺たちは準備を整えることができるのだろうか……。
アシュレイ、今となっては、お前のメチャクチャが頼みの綱だ……。
どうにかひっくり返してくれ。その全てを貫くスコップで。
「ただ、ヨルドは君たちを恐れていたなぁ……。君を斬りたいとも言っていた。気をつけなよ、ザックリやられても知らないからね……」
「心配は嬉しいが、ヨルドなど取るに足らん」
魔霊銀の剣の完成が待ち遠しい。
「くれぐれもあんな小者に負けないでくれよ」
ジュリアス兄上は勝利を確信した笑いを浮かべて、俺の書斎からやっと消えてくれた。
アレが皇帝に相応しいとは、俺には到底思えんな……。
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【邪竜の書】
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- 冒険 -
【冒険者ギルドで1万クラウン以上の仕事をこなせ】
・達成報酬 EXP600/[帝国の絆LV+1
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- 探索 -
【帝国を1000km歩け】368/1000km達成
・達成報酬 移動速度LV2(さらに全ての移動速度+50%)
『行ったりきたりでだいぶ稼げたな。だが臭いが問題だ、早く風呂に入って洗濯をしろ』
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- 開拓 -
【エリンを自由に発展させよ】
・発展度3200→3900/50000
・達成報酬 EXP1000/最強の人造兵器
『獣人の精鋭は練兵と開拓に加わってくれている。そなたもキャラルが提案した、港を早く整備して貢献しろ』
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- 事業 -
【ヘズ商会を大型船10隻を有する大商戦団にしろ】
・達成報酬 船団の航行速度+50%
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- 粛正 -
【悪党を7人埋めろ】残り3人
・達成報酬 EXP1100/スコップLV+1
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- 粛正 -
【汚れた富を100万クラウン盗め】 262000/ 1000000
・達成報酬 空間探知LV+1
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- 投資 -
【合計1万クラウン使え】6458→6650/ 10000
・達成報酬 EXP1000/出会いの予感
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- 目次 -
【Name】アシュレイ
【Lv】41→42
【Exp】7890→7990
【STR】103→105
【VIT】281→284
【DEX】255→258
【AGI】235→240
【Skill】スコップLV5
シャベルLV1
帝国の絆LV1
方位感覚LV1
移動速度LV1
穴掘り30倍
『時間はもう残り少ない。やるべきことをやっておけ、じきにスキルアップどころではなくなるぞ。それと――今度この我が輩が、おすすめの恋愛小説を直々に朗読してやろう。胸がキュンキュンとするやつだ』
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ジラント、アンタの行動が本格的に読めなくなってきたぞ。
そんな恥ずかしい荒行をしてまで、アンタは俺に何をしたいんだ……。
予言しよう。その試みはほんの数ページで、互いに堪えられなくなる結果が見えているぞ……。




