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14-6 暗躍する者たち - 花嫁と病床 -

・病に伏せる皇帝


 死を目前にして、こんな日が訪れるとは夢にも思わなかった。

 私の命はもう残り少ない。まともに喋ることも叶わない。だがかすむ目で、未来の花嫁の姿を見ることができた。


 竜の瞳を持ってアシュレイが生まれたその日、その瞬間から、私はずっと諦めていた。

 アシュレイを夫にしたいと言い出す女など、世界のどこにも現れないだろうと……。


「陛下のお言葉です。本当に、いいのか。……ここからは私の勝手な補足ですが、ユーミル様のお気持ちが知りたいようです。アシュレイ様を愛しておられますかな?」


 ギデオン、そこまで聞けとは私は言っていないぞ。

 だが私の息子は、ギデオンの息子でもある。深いところでは私の気持ちは同じだった。


「愛してはいません。でもこれは必要なことだと思います。アシュレイ様と私が婚姻を結べば、それは何よりもの証になります。私は帝国の秩序のために、我が身を捧げるつもりです」

「確かに、そうすればアシュレイ様の権力が高まるでしょう。それがアシュレイ様とゲオルグ様が始めた、救国の組織を支えることにもなりましょう。ですが……」


 ギデオンは気乗りしていない。愛情のない婚姻に否定的なようだ。

 だが余は、この世を去る前に安心したい。愛がなかろうと、息子に妻ができるのは嬉しいものだ……。


「陛下、私は反対でございます。アシュレイ様を慕う女性は数多く、何も愛のない婚姻を結ぶ必要などございません」

「だけどアシュレイは危うい立場だわ。でもフィンブル公爵家の妻を娶れば、彼には政治的な価値が生まれるわ。暗殺するよりも、利用しようとする人間が増えるはずよ」


「アシュレイ様が応じるとは思えません! あの方は、ずっと塔に幽閉されて過ごしてきました。アシュレイ様の心はまだ、あれはまだ少年なのです……早すぎます!」


 二つの意見に私も迷った。

 婚姻を結べば、アシュレイの立場は安定する。だが強引な政略結婚が二人を不幸にする可能性もあった。


 だがそこに、あの影が現れた。影は少女の形を取って私の枕元に寄った。


「え、あ、貴女は……っ!?」

「ジラント様、ここは赤竜宮、どういうおつもりでございますかな……?」


 ジラントはギデオンの言葉に耳も貸さず、枕元に膝を突く。

 彼女にならアシュレイを任せられる。


「皇帝よ、書状にあるように取りはからえ。アシュレイにはこう言っておこう。嫌なら別の嫁を今から探せとな」

「キャラル様のことですな!」


 キャラル・ヘズの話はギデオンより聞いている。

 アシュレイを慕う娘が、遠い沿海州から帰ってきて支えようとしてくれていると。


「うむ、お前はキャラルの肩を持ちすぎだ……。まあ焚きつけておく。死ぬ前に嫁を見せてやれとな。ところでだが、ギデオンよ。ちとこちらにこい」

「なんでございますかな……」


 キャラル・ヘズ。密かにここへと呼べないものだろうか。

 アシュレイに関わる者全てをここに呼んで、息子と帝国を託したい。


「それは極秘も極秘でございますぞ……」

「だからこそ知っておきたい。後どれくらいもつのだ、この先の計画に関わる」


「……もって、あと二ヶ月。場合によっては、一ヶ月すら……」

「やはりもう時間がないか。その日より、混沌の時代の始まりだな。……皇帝よ、後のことは我が輩に任せて、安らかに余生を過ごせ。アシュレイは我が輩が必ず守る。戦いに敗れ、窮地に脅かされようとも、必ず我が輩が辺境に逃がしてやる」


 皇位を目指すのではなく、帝国の闇を払うための組織、ベルゲルミルの影。そして古の竜ジラント。彼らだけが帝国の希望だ……。

 すまないアシュレイ、私の代わりに、帝国を守ってくれ。


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