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14-1 霧の巨人ベルゲルミル - 祝い酒と会議の始まり -

前章のあらすじ


 帝都へと帰ると、旅に同行したカチュアを兄ゲオルグに紹介することになった。

 そこでアシュレイはカチュアを騙し、白竜宮での晩餐会に連れ込むことに成功する。


 動揺するカチュアを肴に、賑やかなひとときが過ぎてゆく。

 カチュアはアトミナからは素朴な愛らしさを、ゲオルグからは弓の腕を気に入られた。


 またアシュレイは兄に旅先で得た重大事案を伝えた。次男ジュリアスと四男ヨルドがアビスと通じている疑いと、ヨルドが魔剣を手にしたことだ。

 ところがそこに急報が入る。なんとエリンに500名の獣人精鋭が現れて、アシュレイの配下に入りたいと口々に主張したのだ。


 翌日、アシュレイたちがエリンに向かうと、その地にはキャラル・ヘズとシグルーンを含む、これまでの懐かしい顔ぶれが集結していた。

 シグルーンたち曰く、獣人の国カーハの王は、アシュレイ皇子という新しい可能性に希望を見出して、彼にかけることにしたという。


 するとアシュレイではなく、兄のゲオルグがこの展開に深く感動した。

 彼はカーハ王と同じく、アシュレイに希望の芽を見出し、将軍という身にありながら、カーハとの同盟に応じた。


 帝位を目指すのではなく、帝国の秩序と民、混沌を恐れる周辺国のために。これから皆で力を合わせていこう。

 アシュレイの戸惑いをよそに、仲間たちは気持ちを一つにして、物語は新たなるターニングポイントを迎えていた。


 たった一人で闇から闇へと戦い続けたアシュレイの下に、仲間が集い始めている。


――――――――――――――――――

 大いなる遺産 初代皇帝の忘れ物

――――――――――――――――――


13-1 霧の巨人ベルゲルミル - 祝い酒と会議の始まり -


 余計なことばかり準備がいいというか、やはりあの女は侮れない。

 話がまとまること前提で段取りを進めていたようで、一同の興奮が最高潮となった矢先に、都合よくもそこに酒ダルが現れていた。


 そこから先は祝い酒だ。ヘズ商会が船で運んできたエールやワインが開けられて、騒がしい酒宴が始まった。

 すぐに俺は獣人たちに取り囲まれた。むやみやたらに持ち上げられた。感謝された。無条件で漢と認められた。


「妹が帰ってきたのはアシュレイ様のおかげだ!」

「僕もあの時、貴方たちに助けてもらえなかったら……。悪党にいじめ殺されていました……」

「シグルーンが認める男なら間違いね! 俺たちゃはどこまでもついてく、アシュレイ皇子!」


 実際にそれぞれから話を聞いてみれば、色々と腑にも落ちた。

 その500名の援軍たちは、あの奴隷商会にさらわれた獣人たちと、何かしらの縁を持っていた。


 また同時に、どいつもこいつもシグルーンの武勇に惚れ込んでいるようだった。

 そんなわけだ。俺は懐かしい顔触れと落ち着いて話すいとまも与えられず、騒がしい午前を過ごすことになった。



 ◇

 ◆

 ◇

 ◆

 ◇



 バカ騒ぎは昼までだ。獣人たちに酒をたらふく飲まされたので、エリンの自室で寝ようかとも思い始めていたが、それは到底無理だった。

 こちらの予定を無視して、酒宴の次は酒臭い会議が始まっていたのだ。


 こうなった以上は、決めておかなければならないことが山ほどある。だがそれに俺を巻き込むのは勘弁願いたかった。

 『後で結果だけ教えてくれ』と、そう言いかけてやはり止めた。


 酒で皆の頭がふわふわしたこの状態で、おかしな判断を下されては後々の面倒が増える。


「はい。では以上をまとめますと、現状の戦力は――まずゲオルグ様に心酔する帝国軍兵が全軍の25%ほど。つまり10万人前後ですね」

「……だが軍は軍だ。いかに将軍といえど、俺が独断で動かせるものではない。反乱でも起こさない限り、皇帝の命令にも逆らえん」


 要するに将軍ゲオルグの力とカリスマは絶大だが、現状は手足として使うわけにはいかない、ということだろう。

 このプィスとゲオルグに任せれば、なんだろうと上手くやってくれそうだった。


「はい。もしも乱世となれば、この帝都一帯を守る軍勢は圧倒的です。ゲオルグ様は、その気になればクーデターを起こし、帝位を簒奪できてしまいます。そしてだからこそ、全ての皇族がゲオルグ様を味方にしようと躍起になっています」

「だが、武力で奪った権力は武力で奪い返される。それでは内戦を自ら引き起こすようなものだ。下策も下策だ」


 会議室となった食堂には、キャラルやアトミナ姉上、ドゥリン、カチュアにシグルーンまでいた。

 しかし兄上とプィスの話に口をはさむほど、皆政治に明るくない。もちろん俺もだ。


「そして、エリンに駐留する獣人の軍勢が500名。ですが獣人は桁外れに優秀な戦士で、1名あたり20人分の仕事をすると言われています。過去の戦いでも、獣人が戦列に加わることで、戦局が一変することになったと、文献に無数の記述が残っています」

「そこは期待してほしいキャン、みんな精鋭中の精鋭キャン。それにアシュレイ様に、命を捧げるつもりでみんなきたキャン!」


 これはどうでもいいことだが、姉上もドゥリンもヤシュがかなり気に入ったようだ。

 二人にとっては、ヤシュは元気で愛らしいワンコに見えるようだった。


「さらにプィスがかき集めたエリン駐留兵が200名か。半数ずつ帝都に招いて鍛え上げておこう」

「おおっ、ならば拙者もそれに付き合おう! 新兵どもを、死をも恐れぬ立派なっ、命知らずに育て上げてくれよう! ヒックッ……むむ、追い酒が切れたな……」


 この声のでかい酔っぱらいは、会議の場に呼ばなくてもよかったのではないだろうか。

 明日になったら、何も覚えていませんでしたと、言い出さなければいいのだが……。


分割の都合で、少し短くなりました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] いつもながら楽しく読ませていただいてます。 掛け合い、独白、それに突っ込む邪龍などなど時々ニヤニヤしながら読んでます。 [気になる点] あらすじは、短くても一話としてまとめた方が読みやすい…
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