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第四十五話


 「どうやらてめえの身体は色があるとダメージがあるようだな!?」


 まるで背中からおぶさるようにナイフを突き刺したレンジを引き離そうと、今度はカドクラが足掻くがレンジもここぞとばかりにもう一度、ナイフを突き刺し続けた。


 「――――っ!!」


 しかし、ある程度カドクラの身体は萎んだとはいえ、その叫びは大きかったので、レンジはそれに怯んだスキに振り下ろされてしまったが、明らかに今まででダメージを与えたと思えたのだろうか、意気込んで顔をあげたが。


 「ぐあっ!!」


 その顔はすぐに歪んで転がり飛んだ。


 距離はとっていたが、身体も萎んだ事で水による圧縮弾を打つ事が出来なくなったカドクラは自分の身体を圧縮して放出する反動で身体を伸ばしレンジのみぞおちに体当たりをしたのだった。


 「貴様、図に乗りおって!!」


 怒りを隠す事無く、足元に倒れたレンジを踏みつけ…。


 「ごほっ!!」


 「どうだ、もう逆らわない、何でも言う事を聞くと言いたまえ」


 もう咳き込む事しか出来なくなったのを確認しながら、カドクラは嫌な笑みを浮かべながら聞いてきたが、当然、答える事が出来ないレンジはただ答えるかわりに。


 「っ!?」


 笑いながら、カドクラの顔に血の混じった唾を吐きかけた。すると身を震わせながら。


 「カエデにしても、貴様にしても、何だその目は!?


 良いだろう貴様も殺してやる!!」


 「そうですとも、お前みたいなクズが死のうともどうせ、世間はあまり関与しようともしませんから誰も心配しませんからね。


 んっ?」


 そう言って、再度、噴水に入って行ったが、いつの間にか噴水は止まっており、カドクラの身体も少しばかり大きくなる程度だった。


 「カドクラ様、市長になったら、まずは噴水を修理しければなりませんね?」


 「おお、そうだな、私もそう思っていたトコロだよ」


 「ええ、私達は同じ水の西方術者ですからね」


 笑い合うなか、レンジは歯を食いしばって立ち上がっていた。


 「まだ、立てるのか。無理しない方がいいと思うがね?」


 「殺してやりますから大人しくしてなさい」


 そして、一人、口を開く者がいた。



 「そうですよ、相手してはいけません…」



 身体中に闇を纏わせながら、その『法衣』を身に纏うその男は立ち上がった。


 「貴方は、こんなクズを相手にしてはいけない…」


 「ふむ、誰が私の相手をするというのかね?」


 「まさか、さっきボロボロにされたというのにキミがかい?」


 マスクをしているとは言え、笑っているのがわかったのかそれは笑いながら答えた。


 「適うわけないだろう?」


 「そうですね。


 …ですが彼を『クズ』と言いましたからね。


 これ以上、クズのような人がクズというのはいただけませんのでね」


 「私がクズ、彼らの事ではないのかね?」


 「知ってますか、彼らは自らの意思で薬物を投与するのですよ?」


 「快楽でやったのだろう?」


 「この前、私は屋上で眠ろうとしましたが寒くて眠れませんでしてね。


 人間、寒さに弱い事を痛感したのですよ。それこそ、もう冬なんか越すのは至難だなと思うくらいにね。


 ですが、お金のない彼らは魔力を強める強化剤を使って、その冬を越すそうです。


 貴方にその度胸はありますか?」


 「わ、私はそれを経験した事がないからね…」


 「貴方は、私が腹を空かせたら、食料を分けてくれるますか?」


 「誰かキミのようなヤツに食料を分けると言うのかね?」


 「ですが、そんな優しい人達なんですよ。


 そんな優しい人たちを虫けら、強い人間をクズと言わないでしょう。


 ここはクズ同士にクズといわれていいのは、貴方達と私だけです。


 私は、カエデさんを助ける事が出来ませんでした。


 だから…」


 「私を倒すというのかね?


 言っておくが、君の攻撃が一番、ダメージがなかったのだよ?」


 「ええ、もう容赦はしません」


 そう言って両手を大きく広げて構えているのが、よほどおかしいのか、それは笑いながら答えた。


 「ははは、カドクラ様、やっぱり私の攻撃でおかしくなったのでしょう?」


 「そうだねえ、ほら、レンジ君、キミからも何か言ってあげなさい」


 さすがにレンジは心配そうにこっちをみたが、何かを言う前に答えた。


 「だから、見ててください。レンジさん」


 「ははは、何をいうかと思えば…。


 じゃあ、良いだろう、大人の私が現実を教えてやろうっ!!」


 カドクラは高く飛び舞い上がる、よほど戦闘などした事がないのだろう。先ほどのように、自分の身体を圧縮しだした。


 そこからの予測はもう着いていたので、自然と身体を低くする。


 「死ぃねええええ…」


 勝利しか考えず、それは先ほどより身体が大きくなっていたのか、スピードがあった。


 だが、漆黒の魔道士はまるで動こうとしなかった。


 反応出来なかったのか、レンジは目を細めて見ていた。


 「…ええぇぇぇ!!」


 ニヤ付いた嫌な顔が同じ目線になり、突貫して来るが、一向に手を広げたまま力を込めているのか、彼はさらに身を屈めていた。


 しゃがんで避けるつもりなら、その動作は距離的に、カドクラは反応出来るだろう。その証拠に勝利を確信したカドクラの隣には、もう一人の顔がその『反応』に反応しようと出て来ていた。


 だが、そのまま彼は背中に力を込めていた。大きく息を吸い込み、その怪物との距離を確認する。


 とんでもない速度で迫ってはいるとわかってはいたが、とても長い時間の様に感じられたので、更に思いを込めて、力を込めると、その法衣の上から何かが出てきた。


 「ん?」


 カドクラはそれが見えたのか。しかし、敵である魔道士が予想通りに屈んだので隣が引っ張ってそれを阻むが…。


 次の瞬間、『それ』を両手に握った魔道士が背中の法衣を切り裂きながら振り下ろしてきたので、カドクラがその名を叫んだ。


 「レフィーユ!!!」


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