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第四十四話


 汚龍(でいりゅう)の叫んだ声の唾が地面に張りつくとそのまま地面にしみ込むかと思ったが、そこから足が生えて、昆虫のように向かってきた。


 「魔道士君、この群れの攻勢をしのげるかね?」


 「ええ、凌げませんよ。さすがカドクラ様、あっ…」


 踏みつけて残りを闇を撒き散らせると、あっけなく四散したので笑いながら答えた。


 「自分で虫けらと馬鹿にしておいて、虫を使うのはどうかと思いますが?」


 「くっ、黙れ、強いものが虫けらを使って何が悪い!!


 金で言う事を聞く人間、いや、恐怖孤児がそこにいたのだ、それを利用しない手はないだろう!?」


 「だから、カエデさんを利用したのですか?」


 「そうとも、アレにはアカネという弱味があった。


 『ただの栄養失調なら必要な栄養剤を渡すから、君はレフィーユ・アルマフィを引き込むために偽者の振りをして事件を起こせ』といったら、素直に従ってくれたよ」


 「それにしても、カドクラ様、その薬が口封じのための『強化剤』だと知らずに素直に従ったのですから、馬鹿な娘でしたね?」


 「まあまあ、馬鹿は言い過ぎだよ。あれでも騙されたという事に気づいて、我々に裏切ったのだから」


 「ふざけるな!!


 それはカエデだって、お前らなんか信用したかなかっただろうよ!!


 だがな、それでもアカネが助かるならって、懸命だったのがわかんないのか!?


 裏切ったのは…お前らの方だ!!」


 あっという間に、レンジがカドクラの懐に飛び込んで尻尾を数回斬りつけるが、しかし…。


 「効かんよ」


 カドクラは構わず尻尾を振り回し、そのままレンジを自分の透明な体内に取り込んでいった。


 「レンジさん!!」


 「どこに行こうというのだね?」


 助け出そうと必死に足掻くレンジに向かって走るが、その体制から肩に激痛と共にきりもむように身体が一回転した。


 「どうしたのかね、魔道士君、レンジ君を助けるのではなかったのかね?」


 汚く笑みを浮かべながら、レンジを体内から吐き出すとレンジは溺れていたのか。咳と一緒に身動きが取れなくなっていた。


 「おお、私の水を圧縮しての攻撃に、さすがの魔道士も手が出ないようだ。


 カドクラ様、戦闘もお上手ですな?」


 「そうかね、だったらいっその事、市長なんかに立候補せず、戦闘でレフィーユ君に取り込もうとするかね?」


 「それもいいですね、ですがカドクラサマ、お体に傷が」


 「ああ、こんなのモノ…」


 さっきのレンジの攻撃で出来た切り傷に、肩にある秘書が心配している中、カドクラはまた噴水の方へと、その透明な巨体が飛び込んだ。


 「おお、さすがカドクラ様…」


 ここからでは見えないが会話からして、おそらく傷が塞がって行っているのだろう。


 こちらもさっき攻撃された肩をみるとどうやら法衣が持っていかれていたようで、普段着ているシャツが見えていた。


 おかげで素直に不利だなと思った。


 相手は完全回復するのに対してこっちはそうではないのもある、しかし、その上、攻撃力も備えているのだ。


 しかし、それは余計な事だった。


 気がつくと今度は虫が飛び掛かって、さっきのレンジのように溺れさせようとしてきた。


 「「これで、終わりだ!!」」


 息を止めて、さらに目を開けるとそんなハモりが聞こえてくるので、見るとまた尻尾が『ずぶり』とした感触とともに自分を取り込んだ。


 「どうだね、王たる私の体内は?」


 市長から王様にでも気分は高揚しているのだろうか、そんな音が水中に響いていた。


 脱出しようと外へ闇を放とうとする、しかし、不意に景色が流れた。


 「ほほう、最近のクズはよく足掻くものだね」


 「いえいえいえ、まったくですよ」


 自分の身体の水分を撒き散るのも構わず、尻尾を大きく振り回していた。


 『ゴボリ』と体内から空気が抜け出るのを感じながら構わず、地面に向けて闇を放ち、胴体着陸をすた目の前に放水されるのが見えた。


 慌てて守りを固めようとするが、想像以上の量の速射砲の餌食になり茂みに倒れこんだ。


 「キミ、なかなかやるではないか?」


 「いえいえ、全てはカドクラ様の力添えあっての事、私の出世のためでございますよ」


 「おっ、何か変な事を言わなかったか?」


 「気のせいでございますよ」


 そして、笑いあうカドクラの姿は萎み、透明な水の身体も、カドクラの着ていた服が色が着いていた。


 それを見ていたのか、背後の景色がゆがんだ。


 「くたばれ、この化け物!!」


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