第三十九話
ぼんやりと空を見上げる感じで目が覚めて身体を起こすと、見慣れぬ光景が広がっていた。
嗅ぎなれない周囲の香りに、そして、普段着ない寝巻き。
思わず夢でも見ていたのではないかと思い、試しに、いつもの日課で手の平を広げて集中する。
「くっ!!」
しかし、自分が思っている以上に疲れていたようだ。
「た、隊長、こんな時に無茶しないでください!!」
ようやくサーベルを作り上げる事が出来たのは、ヒオトを先頭に他のみんなが入って来ていた。
そこで何故、私がここにいるのかという事を事情をヒオトが説明してくれたおかげで、あの後、私は倒れた事を思い出した。
「ですが、あの数を相手にして、この程度で済むなんてさすがです」
「さすがなモノか…」
少し不快な感じでおもむろにテレビを見つけて、それをつけると今回のニュースが報道されていた。
『ただいま、現場に到着いたしましたが、ごらんください、駐車した車に炎が当たったのでしょうね、もう酷いですね…。
もうここから先は、もっと被害が大きいと立ち入り禁止とされています。
ですがこれだけでも、この地域で起こった暴動の甚大さ伺えます。
一体、彼らは何が目的で結託し、このような暴動を起こしたのでしょうか?』
「私は所詮、一地域の被害しか食い止める事しか出来なくて何を『さすが』というか…」
全国各地に広まったこの暴動は死者を出すほどの騒ぎだった。
最重要巡回区間、すなわち恐怖孤児たちのいる区間には警察が警備する事になり閉鎖という形のほぼ軟禁状態となっていたので、この少し皮肉の入った返答には、さすがに周囲が静まり返った。
「ちょ、ちょっと困りますっ!!」
そして、ナースの制止を止めるのを聞かず入ってきたのは…。
「いや~、大変でしたな~」
カドクラだったので、ヒオトは睨みつけながら答えた。
「…どういうつもりですか?」
「どういうつもりとは…。
あのレフィーユ・アルマフィが孤児達のせいでヒドイ目にあったと聞いたので、心配で慌ててやってきたのだよ?」
周囲の心境をどこ吹く風かカドクラ、太った身体と顔色の良すぎて脂ぎった顔でにんまりと笑いながら白々しく答えた。
「はは、何の事かね?」
「なっ、今回の事は、すべてあなたが!?」
「う〜ん、だからなんだというのかね。
君はまるで私が犯人だと言いたそうだが?」
「その通りじゃないのか?」
「おやおやレフィーユさんまで…、今回の犯行は漆黒の魔道士の仕業でしょう。
どうせ、ここ最近で起こっている事件の通り、彼が恐怖孤児に命令したら全国各地で広まって…」
「その漆黒の魔道士は偽者だったのだが?」
「だ、だが、病院で起こった騒動は、彼女の魔力が肥大化していたとき、漆黒の魔道士の形をして…」
「彼女は絵が得意だった。その際に私の絵なり、彼の絵を描いていたのだ」
睨みつけているとカドクラは、明らかに息を飲んで他の要因を探そうとしたので聞いて見た。
「じゃあ、今度は私にお前に聞こう、私が単独で行動していた時、お前は『偽者騒ぎ』だと言ったのは何故だ?」
「ば、馬鹿なことを、そんなに君達は私を犯人にしたいのかね?
だったら、私は恐怖孤児が入院している、あの病院だ。どこにあるのかすら知らなかったのだよ。
私がどうやって知ったというのかね?」
『ほっておくんだ』としか言えなかった私の含め、その意味を理解してなかった自分達の落ち度からか、一気に周囲が静まり返るのをみてカドクラは、まるで鬼の首でも取ったかのように続けた。
「はは、まあ、探偵ごっこするのは若気の至りだね。やっぱり若いのはいいねえ」
意気消沈そんな中で、自分の病室が静かに開いた。
「おや、思ったより元気そうですね?」