第三十七話
「結局、あん時から、こうなる運命なんだろうな」
他の孤児たちの一人が放って当たった炎が疲弊しきった自分の顔を照らしていた、万全の体制であるレンジとの戦いは明らかに不利だった。
息を整えて立ち上がるのを確認したのか、身構えなおすレンジの顔を確認しようとする、しかし、どうしても目を細めてしまう。
レンジの付加能力は『浸透』、その名の通りレンジの姿はじっとりと背後で睨みつけている孤児達を映し出していた。
「すまねえな、消耗戦でも仕掛けねえと、アンタは倒せないと思ったからな…」
完全に身を隠す事は出来ないのか、話す仕草でレンジのいるであろう場所がブレて、自分に駆けて来る。
自分の身体は何とか防御する事が出来るが、反撃するタイミングが完全に遅れて、軽々と避けられる。
「はあああっ!!」
「見えてんだよ!!」
次の動作は大きく振りかぶり、その動作でレンジの視界を塞ぐように『残像』を作り出すが、その動作は疲労で小さくなっていたらしく、軽々と見破られレンジに蹴りをまともに受け膝をついた。
そして、いつものようにレンジは答えた。
「…なあ、退いてくれよ。
『どうして、お前があんな場所で倒れてたか、わからないほど馬鹿だと思うか?』
って、言ったらアイツも理解して退いてくれたぞ?」
黙ったまま、レンジを見つめると何を感じたのかレンジは言い直すように答えた。
「勘違いすんな、あんたらの事をいうつもりはねえ。
まあ、実際、アイツの正体がわかったのは、その時じゃなくて『病院』の時でな。
アカネを助ける時に四苦八苦してる時に、アイツがやって来てよ。
カエデの後ろで、姿をこう隠している時に法衣を取ったのをずっと見ていたのさ。最初は何を考えてるのかと思ったよ。
でも、助けに来たんだってのだけは、わかっちまってな。
あん時はホントに感謝したんだぜ」
「だったら、何故、アイツの誠意を無駄にするようなマネを?」
「そんな事も理解できねえ奴らに、アカネは殺されたからだろうが」
「違う、今は意識不明で、私が極秘裏に入院させている」
「だったら、『意識不明』って意味を答えてみろよ…」
答える事に戸惑ってしまったのを見て、レンジは大きく息を吸い込んで答えた。
「『暴走』と代わりねえだろうが、だから、助かる見込みも一割なんだろ?
まあいいや、この勝負はどうせアンタの勝ちは揺るがないんだ」
「どういう事だ?」
答える代わりに顔を上げて『それ』を示した。
「治安部援軍様のご到着だ」
「あ、貴方達、何て事を…許さない」
ヒオトは、今にも飛び掛かって来そうだったが、すかさずレンジは答えた。
「おいおい、動くなよ、ここには人質がいるんだからよ」