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第三十三話

 ミュリの一撃が鎧と化した漆黒の法衣の上で、『ドンッ』という固いモノが胸に当たったような感じとともに、完全に足が止まる。


 セルフィによる『能力』も解け、ハルバートを構えなおして自由になり、彼女達は隊列を組みなおすが、よほどミュリの攻撃には信頼があるのだろう。


 その動きは前より、余裕がある。


 自分も観察していたわけではないが、ただ違うのは余裕がないだけ。


 身体中が揺れていた。


 筋肉も骨も臓器も脳も…


 ようやく動ける感じがしてきた頃には、しりもちを付いていた。


 「ふん、それでも法衣を纏ったままなんて大した魔力ね」 


 セルフィの台詞にも口答えする事も出来ず、ただ心臓の音と共鳴した視界で懸命に、うつ伏せると吐きそうになる。


 それを抑えてようやく闇を投げ放つ、目の前のビルの壁を掴んで自分の身体を壁に引き寄せた。


 まるでどこかの映画のカースタントを思わせるような体勢でアスファルトを滑走するが、着地に足がふらついてバランスがとれずにつまずいて窓ガラスに背中から激突した。


 寝呆たような感覚の身体に少し痛みが走る…。


 どうやら自分の闇で作った法衣は、もう守りに機能しないようだと思いながら、法衣がボロボロと抜け落ちるように消えていく中で体力の方も限界だったのだろう。


 割れた窓枠を背にしていた身体の重心が、いつの間にかの後ろへと掛かっていたのかと思うと、力が抜け、落ちるように自分の身体はそのまま中へと落ちた。


 「逃がしません!!」


 ヒオトの声から逃げようとするが、ある一室のドアを懸命に開けて入ったところで身体を動かす体力は…もうなくなっていた。


 ドアも閉まっていない…多分、彼女達は見つけるだろう。


 自分の顔を見る事は出来ないが、法衣が無くなり白鳳学園の制服が見えていた。


 一瞬、それで誤魔化す事が出来るのではないかと考えもしたが、


 「はぁ」


 ため息と同時にとうとう目を瞑ると、簡単に身体中の筋肉が緩んで動けなくなっていた。


 自分の知らない中で、観念したのだろうか?


 心臓だけが動くが、それすらも止めてしまいたいくらいに緊張した。


 「セルフィさん!?」


 自分の顔でも見ているのだろうか、ヒオトの驚く声が聞こえた。


 だが…。


 「おい、お前等、俺らの縄張りに勝手に上がり込んで、何してんだ?」


 レンジらしき声が聞こえたが、確認しようにも一度、瞑った目蓋は思うように開かなく、そんな中で誰かに肩を抱きかかえられたような気がした。


 「私達は漆黒の魔道士に罰を与えにやってきました、敵意はありません」


 「ふ~ん、で、どうしてヤツが罰を受けなければならないんだよ。アイツがあんた等に悪い事でもしたのか?」


 「貴方には関係ありません」


 毅然とした態度でヒオトはそう言い切るがレンジの声は、まだおどけていた。


 「関係ないわけないだろう…。


 俺達は、アカネをアイツの提案で、あんたらの治安部の手を借りる事にしたんだからよ」


 ようやく目が開いた時、ぼんやりとした視界が抱きかかえていた人物を目視した。


 「黙ってて…」


 真剣な表情でカエデが、開けっ放しにしてあったドアに注目したので、幸いな事にまだセルフィ達はここにやって来てないように、ここよりも身近なトコロで声がしたのが、見られてない事だけがわかった。


 「とにかく私達は、彼に用があるからそこをどいてくれない?」


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