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第二十四話

 「いてぇな、離せよっ!!」


 カエデは自らの能力で手錠ごと溶かして、脱出を試みるように駆け出して、目の前にいた一人にどけと言わんばかりに手刀を振り下ろすがそれは身体を捻られて避けた。


 その代わりにカエデの腹部に激痛が走り、その人はそのまま身体を一回転させて背後に回り、彼女をハルバートを柄の部分で押さえつけた。


 「ふん、何でも溶かすとはいっても、材質によっては溶けるのに時間が掛かるモノも存在するようね。


 これ以上、暴れる様なら、本気で斬りつけるわよ?」


 「くっ!!」


 流石にヴァルキリーという精鋭全員を相手にするのは無理なのがわかったのか、カエデはそのまま舌打ちをして、自分達が使っている部屋を横切り、取調室へと向かって行った。


 「見事なモノですね…」


 「まあ、それくらいの事は出来て当然だろう。そんな事より、一つ聞いていいか…?」


 レフィーユが怪訝そうな顔をしたまま、一旦、辺りを見回しながらそんな事を聞いてきた。


 「…まだ『居る』のか?」


 …ちなみにここも取調室である。

 

 「ここまで来たら最後まで付き合おうと思ったのですが?」


 彼女にしてみればカエデを捕まえた後、さっさと帰ればよかったのだろう。そう言っているかのように、鋭い視線がぐさぐさと突き刺さっていたので、耐えられずこちらから話してみた。


 「でも、どうするのですか、『これ以上は無意味だ』と言っても、カエデさんはこのまま首を縦に振るとは思えませんが?」


 実際、そこは気になったところだ。


 ―カエデはアカネの薬代を稼ぐために、カドクラという市長選立候補者の企んだ偽者騒ぎに加担している。


 だが、ここにいるレフィーユは『アカネ』という登場人物に実際に会っていないように、そこで問題になるのは『知らない』という事だ。


 カエデは当然、言い返すだろう。


 『お前達に何がわかる』と…。


 当然、隣で先に取調べをしているセルフィでも、その『アカネ』の事を聞きだす事もするだろうが、それこそ、実際にあっていないため…。


 『どこまで悪いのか』を知らない。


 そして、カエデはそれを盾にまた言い返して…。


 『私達には、お金を稼ぐ手段がないから、こういう事に加担しているんだ』 


 おそらくそこで、これ以上カエデは黙り込むのが目に見えていた。


 「確かにカエデは捕まる事にも慣れているのなら、拘留期間の事も理解しているだろう。


 当然、こちらは期間の延長届けを警察に申請しても、今回の事件と関与している可能性が低いとされて釈放…と言ったトコロか?」


 すると彼女の隣に立っていたイワトが聞いてきた。


 「じゃが、アレが偽者なら、警察だって放っておかんでしょう?」


 「残念ながら警察は今回の事件を爆破事件として『漆黒の魔道士が騒ぎを起こしている』と断定している。


 それこそ『どうせ恐怖孤児が便乗した騒ぎに過ぎない』と取り付くヒマもないだろうさ」


 苛立つように後ろを向いて頭を掻いたイワトを見送りながら、彼女もこの事が問題だからか、自分に聞いてきた。


 「…それで、そんなお前には何か手はあるのか?」 


 「はい、そこでレフィーユさん、貴女にお願いがあるのですが…」


 そう言いながら、彼女をみると少し嬉しそうだったのだが…


 「セルフィさんを呼んできてもらえないでしょうか?」


 急に顔が曇った。


 「…私じゃなくて、どうしてセルフィなんだ?」


 流石に視線が怖かったが、話が進まないので言い返す。


 「深い意味はありませんよ。今回ばかりはセルフィさんに頼んでいた事があったのですよ。貴女だって『心あたり』はあるでしょう?」


 「心あたり、ああ、あれか…。あれは一体、何なのだ?」


 「それを聞くために、セルフィさんに呼んでほしいのですよ」


 「なるほど、わかった。じゃあ私は、セルフィと交代したついでで説得を成功させておく事にしよう」


 「それが出来たら100万円だと思いますが?」


 するとドアを開けた彼女は答えた。


 「ふっ、安いな。


 だが無理だと言われると余計に立ち向かいたくなる性分でな。時間が来るまで、体力くらいは削っておいてやるさ」


 微笑みながらそんな事を言いながら『がちゃり』というドアの閉まる音を聞いていると、自然にこんな呟きがもれた。


 「100万円…安いですかね?」



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