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第十六話

 「あっ、セルフィさん、隊長は見つかりました?」


 「駄目、見つからなかった。ヒオトさん、そっちは?」


 「すいません、私の方もいませんでした」


 まるで『歓迎会』の続きをやっているかのように、次の日、彼女の姉は姿を消した。


 そのため学園内は朝から大騒ぎとなっていた。


 セルフィは当初、寮内にある姉の自室にいるだろうと、探してはいたのだがそこに姉の姿はなかった。


 「じゃあ、後は探してないトコロってえ…」


 そこにおっとりとした雰囲気のミュリと三人が鉢合わて見上げた先、ドアに掛かったネームプレートを呟いた時、声が揃った。


 『シュウジ・アラバ』


 「まさかねえ」


 「い、いくら隊長でもこんな大胆な事を…」


 しかし、彼女達は『隊長』の行動力を知っていたのでこれ以上は何も言わず、二人は気を使って、自然に妹に目がいってしまうが妹はただ首を振って、目を細めてゆっくりと答えた。 


 「…昔、姉さんが眠れなかったって知ってます?」


 「ええ、何でも『熟睡出来ない』って言って、困っていたのは知ってますけど?」


 「それ実家いえでも、『どうにかならないか?』と言って悩みのタネで、姉さんなりに色々とやっててね。

 原因が解って、どうすれば自分が熟睡出来る、出来ないを解明するのに至ったのよ」


 「それならよかったじゃないですか?」


 しかしセルフィは何も答えず、一旦、この部屋に掛かってあるネームプレートを見て、自分を指差して言った。


 「その原因って、コレなのよね」


 「セルフィさん?」


 首を振ってセルフィが『あるモノ』を指していた事に、ミュリの方が先に気付いて答えた。


 「服?」


 「正確には『見につけているモノ』よ」


 「それって…つまり…隊長は熟睡しようとすると…」



 『全裸で寝る』



 そんな沈黙と同時に三人は、またネームプレートを眺めていると、ヒオトは口を開いた。


 「やりましょう…」


 「ヒ、ヒオトさん、ちょっと落ち着いて…」


 「コレが落ちついていられますか、私は…私ですら、隊長と一緒に夜を明かした事すらないのに、どうしてあの男だけ、羨ましいのにも程がありますよっ!!」


 何か一瞬、危ない事をカミングアウトしたような気がしたが、ヒオトは自分の東方術である『エストック』を右手に作り出していたので、セルフィは慌てて静止するが構わず答えた。


 「いいえ、セルフィさん、いつか誰かがらないといけない事なんですよ」


 そう言うまでに殺気と共に彼女は、今にもドアを切り裂こうとしていたので、ミュリはなだめるようにおっとりと答えた。


 「まあまあヒオトちゃん、こんなトコロで騒ぎを起こしちゃ、駄目よ。

 こういう時、隊長ならこういうと思うんだけどぉ…」


 ドガッ!!


 言い終わる前に、ミュリは『ハンマー』でカギのドアを打ち抜き、一気に奥にある窓ガラスを突き破らせて笑顔で答えた。


 「何でしたっけ?」


 忘れていた。彼女は、いや、二人は姉さんのFC会員だった。


 「『敵に容赦するな』ですよ。


 あれ、ドアが壊れてますね」


 「あらぁ、ドアが壊れてますわよ。建て付け悪いのでしょうかねぇ、始末してから一緒に言いに行きましょう…」


 『うふふふ』と笑いながら、FC会員暗殺部隊の二人が武器を手にして部屋に入って行く…。


 だが…。


 「あれぇ」


 「誰もいませんね…」


 戦乙女ヴァルキリー二人して探しているので、ホントにいないのだろう。


 この部屋には彼のバックがベットの下に置いてあるだけで、姉の姿も、あの男の姿もなかった。


 二人ともいない…。


 その事がセルフィはますます『歓迎会』の続きを連想させてしまうが、机の上に一台のボイスレコーダーと『セルフィさんへ』といつぞやの見慣れた文字で書かれた置き手紙があった。


 「『聞け』という事でしょうか?」


 ヒオトに返答する代わりにスイッチを押すと、機械的なデジタル音と共にあの男の音声が聞こえて来た。


 『ええと、何故か身の危険を感じたので、たちまち、こんな伝言を残すという形をとらせてもらいました…』


 すると彼が録音しているトコロから自分の学園内での放送が流れたので、一旦、彼は黙る。


 「あっ、これ昨日の午後九時を知らせる放送ですね」


 「という事はぁ、私達が来るのは予想されていたのかなぁ?」


 「ちっ、ますます忌々しいですね」

 

 放送が終わったのを見計らった彼が伝言を再開した。


 「二人とも、静かに…」


 『コレが明日、聞かれるかどうかわかりません、もしかして、貴女の姉の方が先に聞いているかもしれませんが…』


 ガタンッ!!


 突然、ミュリによって吹き飛ばされたドアが、横に綺麗な真っ二つに斬れて倒れる。


 ヒオトがやったのではない…おそらく、自分の姉だろう。


 「やはり、隊長もここに来ていたのですね。まったく、忌々しい…」


 「だったら、どうしてコレを残すのよ?」


 ヒオトは『そ、それは』と答えを詰まらせると、このレコーダーの主も『ある音』に息を飲んだ。


 『コンコンッ』


 それはノックから始まり、レコーダーは自分がよく聞いている『あの声』を拾った。


 『アラバ…いるか?』


 『ジー』という音だけが不気味に聞こえたので、自分達は何かに気付いた。


 「ど、どうして、隊長から逃げてるのですか?」


 この男は気配を感じ取っているのだろうか、しばらく黙ったまま、今度は小声で話し始めた。


 『…思ったより、時間が無さそうなので最後に用件だけを手短に伝えておきますね』


 あまりにも緊張した言い方をするので、聞いている周囲も緊張してしまう…。


 だが、時は来たようだった…。


 『お姉さま、こんな男の部屋の前で、お耳をくっ付けて何をしていらっしゃるの?』


 ユカリと言っていただろうか、もう一人のFC会員が緊張を打ち破った。


 ドアの前にいた人物は『しまった』と思ったのだろう。


 『離れていろ』


 そう言ったまま、身構えているのが自分にも解った。


 そして、部屋にいた人物は緊張を利用して脱出手段を講じていたのだろう。


 『ガララ』と窓を一気にあける音が聞こえてきた後に答えた。


 『ワケあって、明日も休みます』


 ……。


 「お二人はどんな関係なのですかね?」


 「わかんないわよぉ」


 「でも、ここ何にも四階ですよ?」


 「ふん、とりあえず無断欠席ね」

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