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第十四話

 「おはようございます」


 次の朝、アカネの部屋に行くとアカネは窓の景色を見て振り向きながら挨拶をしながら聞いた。


 「朝起こしてあげようかと思って、どこ行ってたの?」


 「屋上です。貴女には悪いとは思いましたが、少し問題がありまして、そこで眠らせてもらいました…」


 「問題って?」


 「この法衣ですよ。


 普段はこうやって、闇で顔を覆ってますが、眠った時に、この闇が覆ったままになっているのかわからなかったのですよ。


 だから用心を兼ねて、この毛布とビニールシートを借りまして、今晩は屋上で眠らせてもらいました」


 「それでどうだったの?


 「見事、素顔が…へくちっ!?」


 そう言い掛けて、クシャミをすると闇を纏っていたので声が濁っていたのがアカネにとって可笑しかったのかアカネは笑っていた。


 「クシャミまで、そんな声なんだ」


 「それだけ過酷だったと思ってくださいよ。


 冬ではありませんが、ビルの屋上は何の風除けもなくて寒かったのですよ」


 「ふふ、じゃあ、このクシャミは、私の言う事を聞かなかった罰です」 


 「…それはヒドい。


 私は正体を見られるのを警戒して、屋上で眠る事にしたのですよ?」


 「あ、言い訳だ」


 「ですが、現に貴女は厚意を利かせて、朝起こしに来たじゃないですか…って、アカネさん!?」


 アカネが急に胸の辺りを押さえて蹲っていたので、彼女が病弱だと言う事を忘れていた。


 心配になって誰かを呼ぼうとしたが、アカネはそれを止めて言った。


 「心配しないで、薬の時間を忘れていただけだから…あっ?」


 持参していた薬を取り出そうとしたが、手が滑ったのか薬が数錠、床に落ちたのでそれを拾いながら聞いてみた。


 「身体が悪いのですか?」


 「…うん、少しね。


 カエデって友達がいるんだけど、その子が『ただの栄養失調からくる風邪だから長引く』って…。


 この薬だって、カエデちゃんが頑張って働いた、お金で賄ってるってレンジさんが言ってた。


 でも、残念だったな」


 「何がですか?」


 「私が屋上にいるってわかってたら、素顔が見れてたかも知れないでしょう?」


 「それは困りますね」


 「いいじゃない、私は誰にも言わない人から…」


 「駄目ですよ」


 「女の人がこんなに頼み込んでお願いしてるのに?」


 「貴女は、この物語を終わりにしたいのですか?」


 「けち…。


 じゃあ、コレを見て…」


 そう言って、一枚の絵を少し重そうに引っ張りだして、自分に見せると少し驚いた。


 「これは私とレフィーユさんの絵ですか?」


 「うん、タイトルは『騎士と魔法使い』、私の力作…」


 「……」


 「どうして黙っているの?」


 「絵が上手いので、少し驚いていたのですよ」


 「上手いだけ?」


 「いえ、この絵はまるであの人と協力しているように見えるので…」


 「うん、それがこの絵の意味、私の願いかな…」


 「願い…ですか?」


 「世間じゃあ、貴方とあの人が敵対しているって、言ってるでしょ。


 けど、私は貴方達って、両極端だと私は思うの。


 どんな事件でも解決してみせる人に、全ての犯罪に関わっているといわれている貴方、その両極端の力が協力し合えばそれは大きな力になると思う。


 …だから、そんな願いを込めて描いて見たんだけど、気に入らなかったらごめんなさい」


 また黙ってしまう自分は、首を振る事しか出来なくて窓を眺める事にしようとすると、外の方で大きな声がしたので、アカネも気になったらしく、近くにやってきて、下を見下ろす。


 すると、そこには数名の白薔薇の治安部をレンジたちが取り囲んでいた。


 「数が多くて見るのが難しいかも知れないけど、あの円の中心にいる女の子がカエデちゃん、そしてリーダーみたいなのがレンジさん。


 今度、紹介してもいいかな?」


 「それは困ります。


 ですが、あれはここの地域の治安部ですか?」


 「うん、そうだけど何か仲が良い雰囲気じゃなさそう。


 …あれ、魔導士さん?」


 振り向くともうそこには誰もいなかった。


 ――。


 「隊長…」


 少し暗く夜道、私とヒオトは寮へと向かうために校門を出て帰路へと歩いていた。


 この寮に向かう道を懐かしく感じながら、今日のことを思い浮かべていた。


 『私は一切、今回の事には関わらない』


 そう言った、この日、予想は出来ていた事だが両校の治安部…だけではなく、生徒全員が戸惑っていた。


 誰でも最初は冗談だと思ったかも知れない。


 「隊長自ら『地域清掃』だなんて…」


 だから、私は本気だという意思を示すために治安部なら誰でもやると言われる。


 その作業に参加する事にしたのだが…。


 「どうして…」


 ヒオトが呆れながら私を見つめたのは、無理もないだろう。


 名前は『フィフ・アルマレィ』と、自分の名前を入れ替えて文字った程度だが、今の私の姿は自分でも見事と言えるくらいの『男装』をしているからだろう。


 「お前達は、こんな作業をやらせてくれなかったからな。


 まあ、『関わらない』と言った意思表示だと、みんなに思ってもらうにはいい機会だろう?」


 「で、ですけど、女性はこういった現場作業での仕事は『交通整理』なんですよ?」


 「それが原因だからだ。


 私でもその事は知っている。


 そして『高級車が来たときは、優先して作業を中止してでも通さなければならない』という暗黙のルールみたいなモノは理解しているつもりだ。


 だがな、もし現実に…。


 私が交通整理していて、高級車が来た時、私はその暗黙のルールを守れると思うか?」


 「…すいません、『貴様は何様のつもりだっ!!』と張り合う隊長の姿が容易に想像出来ました」


 何か失礼な事を言われたような気がしたのでヒオトを見つめていたが、彼女は怯む事無く私に聞いて来た。


 「セルフィさんから、聞きましたけど、隊長は彼の言う事を信じているというのは本当ですか?」


 これも彼女の性格というのだろう。


 「私は納得出来ません、納得の行く説明をしてください」


 はっきりと答えたので、夜空を見上げながら説明する事にした。


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