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第十一話

 翌日、三人で市内を調査の為に歩いていた。


 「いや〜、アラバ、いい天気じゃのう」


 一人はイワト…。


 「調査日和となってほしいですねえ〜」


 こんな何気ない明るい話題も、もう一人の存在によって少し暗くなる。


 「あの…」


 「ふん、何よ?」


 その一人はセルフィだった。


 「嫌でしたら、ついて来なくていいのですよ?」


 「私だって、好きでアンタについて来たくないわよ。姉さんに言われたからよ」


 セルフィがいうには、どうも彼女の姉さんに『ためになるから、アイツの調査について行ってみろ』と言われたらしい。


 「白薔薇の治安活動の方はどうするのですか?」


 「アンタが心配する事じゃないわ。

 アンタは私にその調査する様を見せればいいのよ」


 『ふん』と相変わらず、鼻を鳴らしているのか悪態を付いているのかわからない態度で一緒に歩いていると、イワトが思い出したように言った。


 「じゃが、お前とこうやって調査するの久しぶりじゃのう?」


 「そう言われてみればそうですね

 それだけ、レフィーユさんと一緒に調査する事が多かったからでしょうね」


 「じゃあ、今までアンタと二人で調査していたの?」


 「コイツの勘は良く当たるから頼りにしとるんですよ。

 おかげであの人が来る前じゃが、検挙率2位もとった事があるんですわ」


 一旦、コッチを見ていたが、すぐにセルフィはイワトの方を向いて聞いた。


 「だけどそれは『治安部の人間以外、事件の現場や、調査に関わってはいけない』って、決まりを破りながら調査しているって事になりますよね?」


 『ふん』と何を勝ち誇っているのかわからなかったが、イワトは笑いながら答えた。


 「がはは、そんな事を違反なんてまだ甘いのう。

 コイツのその程度の違反なら、まだ可愛い方ですよ?」


 イワトさん、確かに私はギリギリ反則の捜査方法をした事はあります。


 だけど、セルフィさんの前でそれを言うと、煮込んだ油に水を入れるような惨事になるのですよ。


 「ふん、聞いてみたいわね」


 ほら、ニヤニヤしだしたよ。


 そんなセルフィの『笑顔』から逃げるように首だけを曲げていると、セルフィは流石に本業を忘れていなかったらしく聞いてきた。


 「それで、どこに行くの?」


 「そうですね。セルフィさん、よく強化剤が取引されるトコロってどこですか?」


 「ちょ、ちょっと貴方が調査するのでしょう、どうして私に聞くのよ?」


 「あいにく、ここは私の地元ではないのでしてね。セルフィさんに、案内してもらいたいのですよ。

 利用できるモノは利用しておいた方が良い事に違いないでしょう?」


 「ふん、そんなの沢山あるから、アバウトに聞いてほしくないわね」


 「でしたら比較的治安の低そうな場所で、若い男女が集まれるトコロというのに心当たり…セルフィさん、何を考えているのですか?」


 『何でもない』と言うセルフィの顔は、自分の考えに納得出来てなかったようだが、とりあえず案内させてもらった。


 「ゲームセンターですか…」


 「何よ?」


 実際、若者が店外で座り込んでいるのだから、確かに自分の言った条件にあった場所といえるだろう。


 だが、セルフィの顔は『納得いかない』と腕を組んでこちらをみて言った。


 「ねえ、確かに私は『案内』したわよね?」


 「はい、そうですが?」


 「ならどうしてこんなトコロに来たのよ?」


 自分達のいる場所は向かいのファーストフード店の二階だった。


 「ここからなら、監視出来るからですよ」


 「ふん、そうじゃないわよ。

 どうして入って行かないのかと聞いているの」


 「それはそこで何かが起きるような気がしたからですよ」


 「理由になってないじゃないっ!!

 それがアンタの『勘』だっていったら、ホントに怒るわよ」


 『バン』とテーブルを叩いてポニーも揺れたので、白薔薇のヴァルキリーの制服見たさで集まった女子高生達が引いていくのを見送りながら二階から景色を見ながら答えた。


 「セルフィさん、あの人、見覚えあります?」


 『何よ』といらいらしながら自分の示した方向を見ると、セルフィは驚いた様子でこっちを見て、代わりにイワトが答えた。


 「確かアレは、トンジじゃったか?」


 「レンジですよ。あの人がゲームセンターの入り口をウロウロしていたので、少し気になりまして、観察してみようかなと思ったのですよ」


 「観察って、何をのん気な事を言ってるのよ。

 アイツがこんなトコロに顔を出すと言う事は『取引』来たという事じゃない!!」


 遠目からレンジを見ながらセルフィはそう答えるが、構わず携帯を弄った。


 「アンタ、こんな時に何やってるのよ?」


 するとレンジも携帯を手にしたので、セルフィはいよいよ動き出だろうと思いテーブルを立ち上がるのをみて答えた。


 「じゃあ、何しにやって来たのか、聞いてみますか?」


 「はぁ、何言ってるのよ!?」


 構わず携帯を耳に当てて、しばらく話し込んで『景色』に向かって手を振ったので、誰に話をしているのかセルフィはわかったのだろう。


 「…信じられない」


 「おいおい、妹さまがいらっしゃるなんて聞いてねえぞ…」


 にらみ合うまではいかないが、明らかな『敵意』を表す両者だったがこのままでは時間がもったいなかったので、質問をすることにした。


 「あのレンジさん、何をしようと思っていたのですか?」


 「ふん、アンタね。何、わかりきっている事を質問しているのよ。

 そんなの『取引』に決まっているじゃない」


 「ちげーよ、バカ」


 『バカ』と言われて、さらに『ムッ』としたのだろうか食いついてきたセルフィをイワトが制しているとレンジはこう答えた。


 「こっちだってな。偽者の事を調べてんだよ」


 「ふん、アンタ達の考えそうな事ね。

 どうせ正体を突き止めて、あんた達の仲間にしようという魂胆でしょう?」


 おそらくセルフィは何を言っても聞かないような気がしたので、レンジに聞くことにした。


 「レンジさんの方に偽者がいる可能性があるかもしれないから探っているのですよ」


 「お前…」


 「まるで今、騒ぎになると『不味い事』でもあるような言い方ですね?」


 そう言うとレンジが息を飲んで黙り込んだので、セルフィは驚いて自分に『どういう事かと』聞いてきたが、演説をする選挙の車に阻まれたのでレンジが口を開いた。


 「…近々、市長選挙が始まるのさ」


 「確かに『選挙』見たいな事をやってますけど、そうなんですか?」


 「アンタね、それくらい知っておきなさいよ」


 「おいおい、近頃の若者がな。

 『選挙』なんて言葉を使っても興味がないのは当然だろう?

 まあ、その選挙が行なわれると俺たちは演説の『良い餌』になるのさ。

 そんな時に『地区排除』を宣言されてみろ、俺たちはあっという間に…」


 「住む場所がなくなるって言いたいの?

 自らが招いた結果じゃない。そんなの自業自得よ」


 「『自業自得』だと、相変わらず失礼なヤツだな?」


 「ふん、あんた達、21名が政府がどれくらいの『援助金』を出していると思っているのよ。

 それでもアンタ達は更正の一つもしない、それこそ『失礼』じゃない」


 「21名か…」


 レンジの事はよく知らないが、セルフィのこの言動は、レンジにとって普通なら怒らせるには十分過ぎる要因だったと思った。


 「まあ、お前らに何を言ってもわからないよな」


 だが、レンジはただ諦めた表情で『へっ』と鼻を鳴らして黙ったので、その予想は大きく外れてくれたので、少し理解出来た事があった。

 だが、嫌な沈黙がこの階を包んだ中、ふとレンジは口を開いた。


 「…どうして漆黒の魔道士の偽者なんてやるんだろうな?」


 あまりにも唐突に聞いてきたので『はい?』と聞き直そう思ったが、セルフィは聞いていたらしく答えた。


 「そんなの彼の名前を利用すれば、犯罪行為が円滑に行なえるからに決まってるじゃない」


 だが、彼女のその返答は、『彼』がよく出没する地元の人間である自分には、『おかしい解答』だったので、呟くように言った。


 「『彼は、自分の名前を語った者を許さない』…ですか?」


 「そうだ。あいつに関する噂の中で、『ホント』の噂らしいな?」


 「あくまで『噂』でしょう。

 アンタ達、信じているの?」


 すると口を開いたのは『現場』を見た事のあるイワトだった。


 「そういえばヤツは、今まで偽者が出てきたら、文字通り『許さないヤツ』じゃったのう」


 そして、また、しばらく考え込んだが、とりあえず立ち上がり、三人に聞いた。


 「とりあえず、調べて見ますか?」


 「こんな全部『憶測』で成り立っているような事件をどうやって調べるというのよ?」


 「まず、気になる事を調べてみようと思いますよ」


 そう言って、4人が向かったのは、自分達が最初に出会った事件となった爆破現場だった…のだが、セルフィは呆れたように聞いてきた。


 「アンタね、この建物に来たのはわかるけど『治安部の人間以外、事件の現場や、調査に関わってはいけない』のよ。


 当然、現場に入ってはいけないって事を知っているの…ちょっと?」


 構わず警備員に歩み寄り、証明書を出して、こう名乗った。


 「白鳳学園、治安部のジングウジと申します。

 建物の調査にやってきました」


 続けてイワトが証明書を見せている間、セルフィは今度は唖然としていたが、さらにこう言った。


 「セルフィさん、規則なんですよ。

 いくら貴方が有名なヴァルキリーの一人でも、証明書の一つは見せた方が良いでしょう?」


 何も言わず、チェックをうけるセルフィは目で『ある人物』を指して、慌てていた。


 あと一人、レンジの事だ。


 「あの、証明書の方は?」


 「……」


 当然、黙り込むのはレンジだけだっただろうか、何かに気付いたようにこう聞いた。


 「あれ、もしかして忘れたのですか?」


 とりあえずレンジは頷いて、成り行きに身を任せようと考えたのだろう。


 「困りましたねえ、証明書無いと『調査』は出来ませんでしたよね?」


 「ああ、そうだよ。一応、規則だからね」


 「そうですか、困りましたね」


 「一旦、帰ってもらって、君たちで調べてもらうというのは?」


 「それでは困るのですよ。

 レフィーユさんに彼を連れて行けと頼まれてしまいましてね」


 そう言って、警備員の耳元で呟いた。


 「ほら、彼が噂の…」


 こういう時に、自分の特殊能力『姿の見えるステルス迷彩』と言うのが役に立つ。


 『おおっ』と驚いた様子で自分の名前となったレンジを上から下へと眺めて、さらに聞いてきた。


 「でも、衣服が少し汚れているね…」


 「ああ、今日、彼は排水溝の掃除をしてて、少し汚れたのですよ」


 「それにしては、身長の方は小さい方だと聞いたけどね」


 「それは、プライバシーの保護のためですよ。

 彼は目立つのは嫌いでして、それを知っているレフィーユさんがマスコミにそう伝えるようにしてくれたらしいですよ?」


 『よくもぬけぬけと…』


 そんな心の声が聞こえて来るような視線を背中に突き刺してくるセルフィだったが、それとは裏腹に警備員は感心するように聞いてきた。


 「やっぱり、彼は調査能力は高いのかね?」


 「はい、私は見た事はありませんが『凄い』らしいですよ?」


 『ほお』と感銘を受けて、頷く警備員ではあったが…。


 「しかしね、やっぱり規則は規則だからね。

 帰ってもらってから、頼むよ」


 「一旦、帰ってですか、だとしたら、余計に困るのですが…」


 「どうしてだね?」


、「この人以外、白鳳学園の生徒なのですが、白薔薇には『門限』があるらしくて、ここから帰らせてから、普通に一時間掛かるようですからね。


 つまり…間に合わないワケでして…」


 『ああ、困った』と顔を曇らせていると、警備員は『ふむ』と頷いてこう言った。


 「じゃあ、私は『見た事』にしておくよ。

 君たちは、くれぐれも内密にね」


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